おぉ!この曲、どこかで聴いたことあるよ!それもそのはず。クラシックの曲をロック・アレンジで演奏したのが『展覧会の絵』。今でこそ目新しい手法ではなくなったが、1971年当時には衝撃的な挑戦だった。クラシック曲を大胆にアレンジすることは一部ではタブー視された時代だった。そのアルバムはエマーソン・レイク&パーマー(以下EL&P)による演奏だ。原曲はムソルグスキーによるピアノ組曲だったが、その後、ラヴェルがオーケストラ用にアレンジを行っている。EL&Pの演奏はラヴェルのバージョンを使用。さらにオリジナル曲を追加し、新たな解釈を行った。
前作「タルカス」が英国で1位になり、バンドの勢いが加速していた頃、EL&Pは「展覧会の絵」の実況録音を行った。アルバムを発売したばかりということもあり、当初は発売の予定がなかったが、海賊盤の出現により、メンバーの意向とは別に急遽『展覧会の絵』を発売せざるを得なかった。海賊盤対策として廉価盤が発売されるのだが、逆にそれ自体も売り上げに貢献し前作以上の爆発的ヒットとなった。

「展覧会の絵」は展覧会を散歩するように歩き、作品を鑑賞していく流れになっている。EL&Pはキーボーディストを中心としたロック・トリオだ。オルガンにナイフを突き立て、機材の下敷きになって演奏するなどアクロバチックなパフォーマンスも話題になった。「キエフの大門」の中間部での強烈なノイズは、オルガンと格闘しているシーンだと想像できる。

『展覧会の絵』はレコードからCDの時代を経て、初めて楽曲がつながった作品となった。収録時間の関係から、A面とB面に分けなければならなかったレコード時代からは考えられなかった快挙だ。1曲30分以上。その間にアコースティック・ギターの弾き語りもあれば、ブルース・セッション風な展開からロックなオリジナル曲とさまざまな展開を魅せてくれる。緊張感に満ち溢れた演奏は「これぞ、ロック!」というインパクトを与えてくれる。このアルバムを聴いた仲間のほとんどが、クラシックの『展覧会の絵』も手に入れて聴いていたという事実はアルバムの影響力がいかに大きかったか?を物語っている。