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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その195 ~鍵盤狂機材購入指南とライブ機材リポート PART2~

2024-08-29

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

前回はバンドのライブ録音を端緒とし、私の所有しているYC61の追加リポートをお送りしました。ライブを録音したYC61の音は、ハモンドオルガンのシミュレート機材としてスタジオで聴いた印象を上回るものでした。結果的に、私にとってYC61は「当たり」だったと考えています。

YAMAHA ( ヤマハ ) / YC61 ステージキーボード

YAMAHA ( ヤマハ ) / YC61 ステージキーボード

■ 実際に鍵盤楽器を購入する際のプロセスは?

鍵盤楽器を購入する際に「実際の音はどうなんだ?」という話になります。
楽器メーカーのホームページには当該楽器のいいところを強調した原稿が躍っています。当然と言えば当然のことです。しかしユーザーは欠点も含め本当のところを知りたいものです。

私は機材を購入する際に楽器メーカーのHPも読み、スペックなども確認します。楽器店まで足を運び実機の音も確認します。しかしそれも実際にスタジオで出している音ではなく、通常よりも低いボリュームでの音なのです。小さな音でモニターするので、本当の音がどこまでのレベルなのかという判断はとても難しくなります。
かといって楽器をライブ会場まで持って行って音を確認するなんてことはできません。ましてやバンドの中でどう聴こえるかなんて、音楽形態や出力レベルのバランスなどにもよるので、実際の音の言質をとるのはほぼ不可能といえるでしょう。

私がYC61の購入を決めたのは、某楽器店の店員さんが、あるジャンルの音楽を演奏するのを聴き、その方の「音の通りが良かった」というコメントがきっかけの1つとなりました。実際のユーザーのコメントに説得力があると私は考えているからです。

一番いいのは自分の指向する音楽をやっているライブハウスに出かけ、自分が欲しい楽器を使っているミュージシャンの音と、それを使っての感想を聞くというのがベストかもしれません。

私は以前、ヤマハのDX7ⅡとローランドD-50(両方ともシンセサイザーの名機です)の購入を考えており、実際の出音に関して興味を持っていました。DX7は所有していたのでその音の良さは分かっていましたが、音源が2系統になることでディチューンをかけたときにどうなるかを知りたかったのです。また、D-50に関してはデジタルとアナログ系が混じった音がどういうものかが分かりませんでした。

ヤマハDX7ⅡD (YAMAHA HPより引用)

ローランドD-50, public domain (Wikipediaより引用)

そこで私はキーボーディストの野力奏一さんのセッションを聴きに六本木のライブハウスに通い、その音を確認することができました。野力さんはDX7ⅡFDとD-50を二段重ねにしてプレイしていました。野力さんの出していた音はとても素晴らしく、私が購入を決める大きな材料になりました。

エレピ系はDX7Ⅱ、リード系とパッド系はD-50……この組み合わせは、今ではAORやJポップなどのスタンダードとなっています。私自身の鍵盤でも長い間ベースのセッティングとなりました。

そして、この2台のシンセサイザーの組み合わせでなければ出なかった音が、YC61、1台で簡単に出るようになったというのは時代の進歩を感じるエピソードでもあります。

このように音を確認できる環境があればいいのですが、それはそれで結構大変な話です。同系音の楽器を比較したいとなればさらに困難を極めます。そんな時にこうしたリポートが参考になれば、何よりのお話です。

かつて私はNordのElectro 4DというYC61と同様のオルガンシミュレート機を持っていました。オルガンの音は気に入っており、さらにオルガンの音に限りスプリットもできました。しかしシンセ系の音とオルガンの音はスプリットができませんでした。それ以外にも、ピッチベンドホイールとモジュレーションホイールが付いていない、もう1つのローズ系の音が自分の好みではなかったという物足りなさがありました。

一方、YC61はハモンド系もローズ系も好みの音で、私の好きなFM音源もありました。シンセ系の音も充実しており、パッドもいい音。ピアノとシンセ音をスプリットしてピッチベンドもできます。鍵盤も弾き易いといったところからYC61への変更を決め、現在に至ります。

音楽機材は出音の良さがある意味で全てです。自分の好みの音が2つ、3つあれば大概、その楽器からはいい音が出ます。それは自分の耳を信用して判断すればいいのです。
一般的には金額が高い方がいい音が出ます。特にシンセサイザーなどの鍵盤楽器は少し無理してでも高価なものの購入をおすすめします。

■ AWM2音源の意外な存在感

機能についての補足となりますが、YC61にもう1つ印象的なエピソードがあります。それはYC61に搭載されたサンプリング音源であるAWM(アドバンス・ウエイブ・メモリー)2の音抜けが良かったことです。

元々、私はサンプリング音源があまり好きではないため、サンプリング音源メインのシンセサイザーは持ち合わせていません。

YC61にインストールされていたフェンダー・ローズピアノ系のサンプリング音をライブで使ってみましたが、非常にクリアに響いていたことも報告しておきます。
「音の存在感が薄く、ヌケの悪い音」という私のサンプリングサウンドへの認識は見事に払拭されました。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

YAMAHA / YC61 ステージキーボード

YAMAHA

YC61 ステージキーボード

¥222,700(税込)

ステージキーボード、61鍵

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