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Rock’n Me 29 洋楽を語ろう: U2コンサート・レポート@ラスベガス(前編)

2023-11-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第29回では、アメリカ・ラスベガスにおけるU2のコンサートをレポートします。

ラスベガスでは、スフィア(正式名称:MSG Sphere)というコンサート会場が新しくできました。U2は、スフィアのこけら落としで2023年9月29日にコンサートを行い、以降はここで2月まで連続公演を続ける予定です。このたびご縁があって、11月4日の公演を観てきました。その様子を2回に分けてお届けしますが、前編では会場のすごさについて語ります。なぜ、コンサートそのものではなく会場についていちいち語るのでしょうか?それは、この会場が、今後のコンサートのあり方を根本から変えうるものだからです。

スフィア:外観

スフィア(sphere)は日本語に訳すと「球体」で、その名の通り、球状の形をしています。会場内は、スタンディング席(2,000人)と4階まである座席(17,600人)で、計19,600人を収容できます。ステージの周りをスタンディング席が囲み、客席はそれらを中心とした扇状の形となっています。1階席から4階席は球面に沿って備えられていて、急な傾斜が設けられています。文章だとよく分からないと思いますので、次の会場断面図をご覧になってください。

スフィア:会場の断面図

私が観たのは4階席でしたが、調べたところによるとビルの9階に相当する高さだそうです。実際、会場入口から4階席に行くまでの移動だけで、かなり長い時間を要しました。ただ、このような構造になっていることで、前列の観客で視界が遮られることがなく、ステージも近くに感じられました。

スフィアはコンサートの専門会場のため、ビジュアルもオーディオもとんでもないことになっています。内壁に埋め込まれているのは、なんと16万個のスピーカー!このスピーカー群が上下左右に埋め込まれているため、どの座席からも最良の音が楽しめるとのふれこみです。この特殊構造のため、大規模コンサートで見かける、巨大な帯状のスピーカーたち(ラインアレイスピーカー)は一切ありません。

スフィア:埋め込み型スピーカー群

さらに驚かされるのは、解像度が16KのLEDディスプレイです。総面積は実に1万5千平方メートルにも及びます。通常のコンサートだったらディスプレイは前方だけにあります。しかしスフィアでは左右、さらには天井にまで延びています。スフィアによると、現時点において、世界でもっとも解像度の高いディスプレイだそうです。このような、今までにないリアルな音と映像によって、観客は異次元の没入体験が可能となったのです。

スフィア:没入型16Kディスプレイ

さらに凄まじいのは建物の外観です。横幅160メートル、高さ112メートルの球体は全方位がLED照明で包まれています。1単位のLED照明に48個のLEDが敷き詰められ、それが1,200万単位あるのです。映像が流されると、巨大な球体が一気に照らされます。まるで、球体の化け物がラスベガスに君臨したようで、その外観だけで、すでにラスベガスの新たな観光名所となっています。以下のドローン空撮動画を見ると、そのスケールがより伝わると思います。

スフィア:ドローン空撮動画

スフィアの外観は、時間によって変わっていきます。私が行った際には、U2の連続公演の告知ディスプレイが繰り返し流れていました。その合間には、球体の形に倣って巨大な地球儀となったり、球体全体が波となったりする映像が相次いで登場しました。滞在したホテル部屋は「スフィア・ビュー」を指定しましたが、その甲斐あって、一日中観ても全く飽きることがありませんでした。

スフィア:外観

なお、こんな途轍もない会場を作ったのは、マディソン・スクエア・ガーデン社です。そう、数多くの名盤を作り出した、ニューヨークの有名な会場「マディソン・スクエア・ガーデン」を運営する会社です。スフィアのアイデアには驚かされましたが、その資金力にも驚かされました。スフィアの建設費は、なんと23億ドル(約3,400億円)という、途轍もない額です。あまりにも気が遠くなる規模で「電気代だけでもどうなるの?」という心配が出ます。実際に調べてみたところ、ピーク時の電力で、なんと2万1千戸の住宅で使う電気を使用するそうです。エコとは全く真逆の方向を向く会場、どうやって維持するのか不安になりましたが、並行して太陽発電所が建設されていて、将来的にはそこから大半の電気をまかなえる予定です。ああ、そのスケールにはただただ驚かされます。まるで、このスフィアのように…。

さて、後編では、いよいよコンサートの様子をお届けします!次回の更新まで少々お待ちください。


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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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