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今日も八十八ヶ所遍路を走る! 自分の足で四国一周1,200kmを巡る楽しみと苦しみ

2023-10-23

テーマ:サウンドハウス創業者のコラム「Rickの本寝言」

Rickの本寝言 サウンドハウス創業者が本音をついつい寝言でつぶやく!

空海の記事を書くからには、何がなんでも自分の足が動くうちに八十八ヶ所の遍路は全部制覇しなければ、と思い始めてから数年が経った。そして2023年、遂に出発の狼煙を上げることにした。その理由は簡単だ。強靭であったはずの自分の健脚に、いつしかほころびが出始め、長距離走に不安を覚えるようになったからだ。

これまでフルマラソンの大会は20回、すべて完走し、そのほとんどを自己ベスト更新という自画自賛の頑張りを見せてきた。全盛期は月400~500km走っていたし、練習で40kmを走ることもいとわなかった。そんなハードなトレーニングを自分に課していたこともあり、その後はじめた登山も最初からトレイルランの様相となった。山々を走り抜けることが楽しく感じられたのだ。そんな健脚を誇っていたはずが、さすがに筋肉も老朽化したのだろうか、ここ最近、故障が多くなってきたのだ。

だからこそ、今しかない!と、四国八十八ヶ所の遍路巡りを今年スタートさせた。仕事の都合上、連日遍路を巡ることはできないことから、1日単位で札所を順番に進むことにした。そして初日は7月23日。第一番霊山寺から第十番の切幡寺まで、およそ30kmを突っ走った。というより、これまで体験したことのないような苦しみだった。真夏日の極暑ということもあり、途中でガス欠、脱水症状を起こし、最後の5kmは生まれて初めて、走っている最中に両足の痙攣を体験した。そしてゴールとなる切幡寺に到着し、境内にのぼる333段という階段を目にした時は絶句。痙攣する足を引きずりながら、手すりに寄りかかり、手で体を引っぱりながら、階段を上っていったのだ。

それでも終わってみれば、楽しい思い出になるものだ。何事も経験。これでひとつのレッスンを学ぶことになる。気温30度を超える無風の夏日に、直射日光を浴び続けながらアスファルトの上を走るな!ということだ。体感温度はゆうに40度を超える。そして半端でない水を飲み続けるため、何本ペットボトルをリュックに入れたとしても、無くなってしまう。このような危険な賭けとなるチャレンジは、避けなければならない。

第2日目は9月23日の祝日となった。切幡寺から第十一番藤井寺を経由して、遍路の中でも最難関と言われる第十二番焼山寺まで山を登り、そこから第十三番大日寺へ向かう途中にある植村旅館で一泊する、というプランだ。ところがこの日、自分の健脚が過去の栄光であったことを、遂に思い知らされることになる。切幡寺から藤井寺までは10km少々の距離であり、平坦な道路を走ることから、これまでなら単なるウォームアップのような遍路に思えただろう。ところがその簡単にも思えた平地の途中で、足が故障をしてしまったのだ。走ると痛みがどんどんと増してくる。「これは無理だ。。。」と、焼山寺登山を断念。2日目は藤井寺にて無念のリタイアとなる。こうして2日目は、たった10kmしか進むことができなかった。

そのリベンジなのだろうか。3日目のチャレンジは10月9日、自分の誕生日の2日前に訪れる。腹をくくって心に決めた。命かけて藤井寺から焼山寺まで登りつめるだけでなく、そこから自分の足で徳島方面、第十二番札所の観音寺まで戻ってくることを決断した。それが自分自身に対する誕生日のプレゼントだ!その何が何でも、という気合が功を奏したのだろうか。42kmの超ロングランであり、登山も含む過酷な道のりではあったが、ふたを開けてみれば焼山寺までの登山は足の故障もなく、予定どおりの時間で辿り着くことができた。そこから観音寺までの長い道のりは、足の故障と痛みで苦難と我慢の連続ではあったが、無事に夕方までに観音寺に到着することができた。やればできるものだ。

そして今日、4日目の遍路チャレンジとなった。第十六番の観音寺から第十七番井戸寺を経由して第十八番恩山寺、そして第十九番立江寺まで行くという計画だ。そして力が残っていれば、その足で第二十番鶴林寺、第二十一番太龍寺まで向かえるかも、と夢を描いた。観音寺から立江寺までは24kmなので、そこで終わってしまうと多少ものたりない。昔の人は、1日で40km前後は平気で歩いていたという。だから自分も1日40kmは遍路を進みたいと願っている。よって太龍寺まで行ければ!と思っていたのだが、甘かった。

早朝5時起き。始発の汽車に乗って徳島から府中まで向かう。そして駅に着くと、まずは前回の終点となった第十六番の観音寺まで走っていく。早朝のランニングは軽快だ。そして観音寺から遍路の旅が再スタートを切る。まず、第十七番井戸寺までの2.8kmを、田んぼ道や住宅街を走る。これはなかなか気持ちがよい。見慣れない景色ではあるが、普段は目にすることのない徳島の風景を満喫できる。

井戸寺を後にすると、次の札所が第十八番恩山寺だ。その由緒は空海の母親に絡み、境内には母親が断髪式を行った記念碑も建てられている。その恩山寺までの距離が、何と18kmもある。これをうまくクリアできれば、太龍寺のゴールが見えてくる。しかも途中の道のりは国道55号であり、普段から車で徳島と小松島を行き来するのに通っている道だ。その道を自分の足で走るのだから、普段から見慣れていることもあり、ワクワクする。しかも恩山寺は小松島市内にあり、会社からも近い。元気モリモリだ!

が、やはり厳しい現実が待ち構えていた。10km少々走っていると、前回、藤井寺への道で味わった苦痛と同様に、足に痛みがはしりはじめた。「こりゃ、まいった!」、それが自分の正直な気持ちだった。この痛みが続いたら、走り続けることが困難になるのはあたり前なのだ。そこでいったんストップしてストレッチ体操を試みる。そして足を揉む。何とか持ちこたえてくれ、と心の中で願うも、既に20km近く走ってきていることもあり、痛みは消えなかった。

それでも何とか恩山寺に到着。そして15分の休息とストレッチを終えて、第十九番の立江寺に向かった。距離は5km弱。普段なら何とも思わない短い距離なのだが、既に足が悲鳴をあげており、痛みを我慢して走るしかなかった。立江寺に到着したのは午前10時10分。朝6時半からのスタートで、既に3時間40分、走ってきている。それでもいろいろと考えた末、せっかくここまで来たのだから、次の鶴林寺まで走ろう、と思ってしまった。これが何と15kmの長距離だ。この時点でハードルは高く感じられたし、足の痛みは取れなかったが、それでもやればできると心に決めて出発した。

立江寺のすぐそばには立江川が流れ、赤い橋がかかっている。その橋をわたり、西方にある鶴林寺に向かって足を動かしていたその時、ふと、危機感に襲われた。天からのストップがかかったのだろうか。一番の問題は、当日の午後4時から、徳島駅前のクレメントにて、後藤田県知事が主催するセミナーに参加することになっていたことだ。よって鶴林寺まで行くということは、遅くとも午後1時前には到着してないと、セミナーに参加できないのだ。おや、時間を見ると、既に10時40分。鶴林寺まで2時間の余裕はあるのだが、山道を登るということもあり、15kmを時間内に完走する自信は、まったくなかった。

人生、あきらめも肝心!今日はよくやった。24kmの距離を生まれてはじめて、徳島から小松島まで走ったのだから、それでよしとしよう。そう心に決めて、立江川からUターンしてJR立江駅まで走り、そこから汽車に乗って徳島に戻ることにした。ちょっとした計画倒れだが、賢明な決断だったように思う。あのまま山を登っていたら、途中で挫折して座りこんでいたに違いない。

次の5日目の遍路は、スタート地点が立江寺となった。小松島市から旅立つことになる。そして山を登り、鶴林寺から太龍寺に向かい、そこから平等寺へと40kmの山道が続く。そのハードルは高く、心の準備が必要だ。平等寺の後は、日和佐の薬王寺、そして次が室戸岬となる。果たして四国八十八ヶ所遍路の壁を乗り越えることができるのだろうか。自分の命がある間に1,200kmを完走できるだろうか。ちまちま不安をつぶやいていても意味がない。時が満ちれば、いざ、出陣。必ずできる、と思ってチャレンジをし、全身全霊をもってゴールに向かう。その強い気持ち、決断こそ、今、自分の残されている運命の灯と言える。

Rick - 中島尚彦 -

1957年東京生まれ。10代で米国にテニス留学。南カリフォルニア大学、ウォートン・ビジネススクールを経て、フラー神学大学院卒。GIT(Guitar Institute of Technology)第2期生のギタリスト。80年代にキリスト教会の牧師を務め、音楽ミニストリーに従事しながら、アメリカで不動産会社を起業。1989年、早稲田でライブハウス「ペトラクラブ」をオープン。1993年千葉県成田市でサウンドハウスを創業。2001年、月間地域新聞日本シティージャーナルを発刊。主幹ライターして「日本とユダヤのハーモニー」の連載をスタートし、2010年よりwww.historyjp.com を通じて新しい切り口から古代史の流れをわかりやすく解説。2023年、一般財団法人サウンドハウスこどものみらい財団を創設し、こどもたちの支援にも従事。趣味はアイスホッケー、ピアノ演奏、トレイルラン、登山など。四国八十八ヶ所遍路を22日で巡る。グループ企業の経営指導に携わるかたわら、古代史の研究に取り組み、日本のルーツ解明と精神的復興をライフワークとする。

 
 
 
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