自分の体力が衰える前に、どうしてもやっておきたいことがいくつかある。そのうちのひとつが、四国八十八ヶ所の遍路の中でも最難関とされる、第十一番札所の藤井寺から第十二番札所、焼山寺までの山道をかけ上り、そこから神山町を抜けて徳島方面に向かい、一宮町にある第十三番札所の大日寺まで一気に走り抜けることだ。遍路を走る??そのとおり。このルートは総距離は42kmを超え、その前半は長い山道だ。標高差の合計は2000m近くにもなる。しかも焼山寺に到達した後、神山町で一泊するのではなく、ノンストップで徳島方面に向かって走り続けるのだから、自分にとって最難関を極める。
果たして過酷な第十一番から第十三番までの遍路を1日で完走できるものなのか。「為せば成る、何事も」とはよくぞ言ったものだ。今の自分ならきっとできると思いつつ、チャレンジすることにした。とはいえ、既に一度、第十番札所の切幡寺から焼山寺まで登るプランでトライしたのが先月だ。その時は、最初の10kmで藤井寺に到達した際、足の筋肉に痛みを覚えて、そこからの登山を断念。よって怪我による脱落の不安はつのる。しかしながら、やるなら今しかないと思い、自分の誕生日までに何が何でも焼山寺登頂を完結する、と心に決めて臨むことにした。
10月9日、決戦の日がきた。徳島から始発の汽車にのり、鴨島まで向かう。そして藤井寺からのスタートだ。すでに第一番霊山寺から順番にスタートしていることから、今回の遍路の旅路は3日目にあたる。そして朝の7時、遍路へ入っていく。暗くなるまで大日寺に戻ってきたいため、夕方5時がゴールの目標とみた。10時間の走行距離か。。。
長いストーリーを簡単にまとめると、一言で言えば、「過酷」であった。焼山寺までの上り道は、登山に慣れていることもあり、楽しく3時間かけて登ることができた。問題はそこからだ。疲労がたまってきた後、大日寺までさらに、25kmを走らなければならない。ここが運命の分かれ道。もうだめだ、と言ってあきらめるか、初志貫徹、何が何でも進むと心に決めるか。疲労もなんのその、問答無用で、前進することにした。
ここまで来て、止まるわけにはいかない。藤井寺から焼山寺、大日寺までを一気に進むことができたら、その後の遍路も1日40km単位で進んでいくプランに自信がつく。だから止められない、やめることができない。そう自分に言い聞かせて走った。ところが焼山寺から大日寺までの道は、緩やかな下り道を想像していたのだが、実際は違った。小高い山のアップダウンの繰り返しだ。これがつらい。足が動かなくなるほど、疲労がたまる。それでも我慢して足を動かす。そのうち、足の根元が痛くなり、激痛が走る。その足の付け根を左手で揉みながら、まだ走り続ける。これが、あきらめない、ということなのだ。
そして結果は。。。大日寺に夕方5時前に到着。さらに根性で、第十四番札所の常楽寺、第十五番札所の国分寺、そして第十六番札所の観音寺まで走破!42km超えの超難関ルートを、10時間を切って完走できたのだ。正直、さすがに観音寺に到着した時は、疲労困憊を極め、社務所が5時に締まるぎりぎりに、お寺の方にお願いをしてタクシーを呼んでもらった。そして徳島駅まで戻ることとなった。
決してあきらめない。これが自分の人生哲学の骨子ともいえる信条だ。できるまでやる、必ずやる、絶対にできると信じて前に進む。そして目標を見失わずに進み続ける。四国の遍路について言えば、まだ、第一番から第十六番までしか到達してない。ここから八十八番まで、さらに長い道のりが待っている。そして次の難関が日和佐の第二十三番札所の薬王寺から、室戸岬にある第二十四番札所の最御崎寺までの76km。果たしてこの距離を、この歳で、1日で走っていくことができるのか。さらなる人生のチャレンジが待っている。
