1970年代に姿を表したオーディオ・カセットテープ。1979年にSONYのウォークマンが発表され、さらに高性能カセットデッキや大型ラジカセなどの普及により、広く市場に行き渡った。

向かって左より、ノーマルテープ、クロームテープ、メタルテープ。あくまでも目安だが、奥から手前にかけてグレードを上げて配置してある。
屋内外での生録、語学学習、カラオケ、アナログ・レコードの録音はもとより、FM番組の録音、いわゆる『エア・チェック』に欠かせないアイテムであった。
価格の手頃さ、取り扱いの手軽さ、種類の豊富さから市場には数多のカセットテープが各社より販売された。その種類は①ノーマルポジション②フェリクロームポジション③クロームポジション④メタルポジションに区別される。
カセットテープは街中の電気店、また長らく置いてあった100円ショップなどからも、現在では姿を消した。しかし、大手家電量販店やインターネット市場ではノーマルテープを中心に現在でも販売が続けられている。
各テープはそれぞれの性能から使い分けられることが多い。
- ① ノーマルテープ
- ノーマルテープはボーカルに適し、透き通った美しい音に秀でていると言われる。J-POPなどの音域にも適しているのではないだろうか。また、どのようなデッキにも対応する。価格も安価な物から高級な物まで種類が多く、入手しやすい。
コロンビア製ピンク色のカセットテープ。私が一番最初に手に入れた物。200円程で購入したノーマルテープ。
- ② フェリクロームテープ
- フェリクロームテープは1980年代に入るとあっという間に姿を消した。店頭で見かけた事は何回かあったが残念ながら、私は一本も購入した事がない。自前のラジカセに『FeCr』とテープセレクターボタンに名前が刻まれているだけで使用した事がない。使えるデッキも限られていた。
- ③クロームテープ
- クロームテープはハイポジションとも呼ばれ、100円ショップでよく見かけた。緻密な音よりもパワーあふれる音が身上で、『細かいこと抜きにロックしようぜ!』という力がみなぎるテープと言えよう。中低域のパワフルさに特長がある。値段もさほど高価ではなく、高校生のお小遣いで買える商品が沢山あった。
- ④メタルテープ
- メタルテープはエネルギッシュ。最適な録音レベルで記録したら、原音の艶や忠実度は他のテープより再現度が高い。ダイナミックレンジの広いクラシック音楽等に最適だろう。弦楽器の繊細さ、管楽器のふくよかさ、打楽器の鳴りなどの臨場感を録音するのに最も適しているはずだ。
ただし、値段が高価でテープの磁気信号を読み取るヘッド部に、他のテープより負担がかかるため、贅沢なテープと言える。ここぞという時のお気に入り音源を録音する場合に有り難みを感じるカセットテープだ。

ダイキャスト製フレームTDK製46分テープ。電気店で購入した中で一番高価だったメタルテープ。ずっしりと重く、再録防止のつめは何度でもリセットできる。重さは普通のプラスチック製フレームの約2倍の77g。
テープの録音時間は、主にお稽古用の繰り返しに最適な10分をはじめ、30分、40分、46分、54分、60分、70分、74分、80分、90分、120分とあった。(メーカーによってはさらに細かいバリエーションがあった)
LPレコードの録音には46分テープが多く使用され、CDの録音には74分テープが広く用いられた。
気を付けたいのは、どのテープの録音時間も同じサイズのケースに入っているために、90分以上のテープの厚さは薄い事を知っておきたい。
特に120分テープは非常に薄く、早送り、巻き戻しを繰り返すとテープが痛む可能性が多々ある。逆に言うと46分以下のカセットテープは比較的自動選曲の頭出しに適していると言える。
個人的にカセットテープは世間で言われるほどヤワではないと思っている。直射日光に当てるなど高温多湿な場所での保管は論外だが、一般家庭での保管には問題ないと考えて良いだろう。私は1,000本以上のカセットテープを所有しているが、今までテープが伸びたり、本体ケースが変形した事は一本もない。(室温35℃以下として)
極めつきの伝説がある。
7年前の春、カセットテープ2本を洗濯機に誤って入れてしまった。当然テープは水浸しだ。再生できる訳がない。あきらめて廃棄しようとしたが、大切な思い出のエア・チェックのテープだった。
夏が過ぎ、秋・・・。テープは乾いた。恐る恐る再生したら甦ったのだ。絶体に真似したり実験したりはしないでいただきたいが、この2本のカセットテープに限り、再生は何度かできた。
タイトル名や曲名を書く用紙には別売のインデックス・カードが販売されていた。それらは様々なデザインがありアーティストのイメージに合わせて楽しんだ。また音楽雑誌の掲載写真のなかにはカセットサイズのアーティスト写真やレコードジャケット写真があって、自前のカセットケースをグレードアッブさせる楽しみもあった。
近年レコードと共にカセットテープユーザーがじわじわと増えている事はメディアでも報道されている。若い人にはそのデザインや扱い方、サウンドが新鮮なのかもしれない。

ごく僅かの紹介であるが。デザインは各社様々。個性的だった。
上記のようにカセットテープは普通に使えて、音質もそれなりに良い。そのうえ再生機の価格が比較的安価である。ここは見逃せない。3~4万円も払えば、かなりのレベルのラジカセが買え、SDカードやUSBと一緒に使える機種もある。さらに家電量販店に行けば1万円以下でCDラジカセが販売されている。まだまだこの市場は存在する。

大型ラジカセの最高峰National製STATION。何度出張修理に来てもらった事か。ある時は再生ヘッドの磨耗、またある時はプリント基盤の半田つけ直し、さらにはテープ走行系一括取り替え・・・。43年過ぎた今でもレコードの再生に活躍中。そのスピーカーから出る澄んだ音色は、私のストラトキャスターの鈴鳴り好きにも影響を与えている。
以前はライブハウスなどで自らのバンドのカセットテープを販売していた事もあった。マスターテープから簡単かつ低コストで作れたからだ。また、レコード会社のプロモーション用にも広く用いられていた。
カセット特有の『サー』というノイズも『ドルビー』や『dbx』などのノイズ・リダクション・システムで軽減され、普通に使用する分には充分な性能を発揮できる。これらはカセットデッキに搭載される事が多く、ラジカセには高級機種に装備された。
最後にサウンドハウスで扱っている本格的なカセットデッキを2台紹介しよう。
TASCAM ( タスカム ) / 202MKVII ダブルカセットデッキ
ダビング機能はもちろん、カセットを簡単に編集できるのがポイント。オリジナルテープを作ったり、アーティストのアルバムをライブリスト順に組み替えたり、多岐にわたり楽しめる。万が一、デッキが1つ故障しても2つあるのでヘビーユーザーには心強い。ドルビーBクラス内蔵。メタルテープ再生可能。20回までのリピート再生、±12%ピッチコントロール(再生時)、USBデジタル出力機能搭載。
TASCAM ( タスカム ) / CD-A580 v2 CDプレーヤー/カセットレコーダー
10~90分までのテープを再生できる。±10%のピッチコントロールが可能であり、お気に入りのCD・USBメモリーをテープにダビングできるのがポイント。メタルテープ再生専用。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら