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Rock’n Me 25 洋楽を語ろう番外編:愛器が戻ってきたとき

2023-04-25

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器, 音楽全般

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
少々ご無沙汰しました。第25回となったこのコラム、今回は趣向を変えます。楽器を弾く人ならば、愛器を泣く泣く手放し、後になって「あの愛器が手元に戻ってくれば(泣)」などと悔やんだことは……ありますよね。そんなエピソードを3つ紹介します。

エピソード1ランディ・バックマン

1つ目はカナダのギタリスト、ランディ・バックマン(元ゲス・フー、バックマン・ターナー・オーバードライブ)の手元を離れたグレッチ・ギターの逸話です。

1970年代後半、滞在先のホテルで盗難の被害に遭って以降、ランディはそのギター(1957年製グレッチPX6120チェット・アトキンス・モデル)のことを忘れられませんでした。そのギターを探し求める中でグレッチの世界的コレクターとなり、40年以上探し続けたところ、なんと日本でギタリストTAKESHIが所有していることが判明しました。交渉の結果、同モデルと交換することを条件に、2022年7月、カナダ大使館で交換会が行われ、愛器が45年ぶりにランディの手元に戻ったのでした。この模様は国内外のメディアでも大々的に取り上げられ、日本でも全国紙などで紹介されていました。

ランディ・バックマン公式サイトより

■「俺のガールフレンドがそこにいる!」 45年ぶりに盗まれたギターと対面(毎日新聞)

奇跡のグレッチ6120がつないだTAKESHIとランディ・バックマンの縁(ギターマガジン)

ランディ・バックマンは、長いキャリアの中で多くの代表作がありますが、もっとも有名な曲はゲス・フー時代の”American Woman”かもしれません。ランディが弾くファズの効きまくったギターのカウンター・メロディが印象的な曲です。もっとも、それ以上に有名なのがレニー・クラヴィッツによる同曲のカバー・バージョンですが。

■ ゲス・フー “American Woman” (1970年)

■ レニー・クラヴィッツ “American Woman” (1999年)

エピソード2ジョー・ペリー

2つ目の例は、エアロスミスのギタリスト、ジョー・ペリーが手放した1959年製ギブソン・レスポールのエピソードです。

1970年代のエアロスミス全盛期が過ぎ、ジョーはエアロスミスを脱退したものの金銭的に困窮し、愛器を手放してしまいました。そのレスポールはエリック・ジョンソンの手元に渡り、親切なエリックはジョーに「8,000ドルで譲りますよ」と格安の条件を提案。しかし、それでも当時のジョーは金銭的余裕がなく、見送らざるを得ませんでした。
その後、1984年にジョーはエアロスミスに再加入。1987年のアルバム『Permanent Vacation』で見事なカムバックを果たすことに。金銭的余裕が出てきたために当時のレスポールの行方を探したところ、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュが持っていることを突き止めました。しかしスラッシュは、憧れていたエアロスミスのアルバム『Live! Bootleg』(1978年)に写っていたギターをようやく手に入れたことから思い入れは強く、ジョーからスラッシュに直談判したものの交渉は難航。最終的にスラッシュが譲歩する形で、ジョーの50歳のバースデーパーティーのときに再び手元に戻りました。

BARKS ニュース

Aerosmith-Live Bootleg (Wikipediaより引用)

エピソード3ジョシュア

3つ目は……すみません。ジョシュア、つまり私の話です。

つい先日、昔持っていたベースが約30年ぶりに手元に返ってきました!戻ってきたのはSeenの5弦ベースです。
当初入手したのは1990年代初頭。私はもともとギター弾きでしたが、当時のバンドでベースを担当することになり、お茶の水にある楽器店にてSeenの5弦ベースを中古で購入しました。Seenといえば老舗のリペアショップ、松下工房のオリジナルブランド。基本的にはカスタムメイドだったかと記憶しています。前オーナーの嗜好に合わせて注文されたのでしょう、超重量級のアッシュ・ボディにブラック・パーツ、ピックアップはハーモニックデザイン社、そしてバルトリーニ社TCTプリアンプ。私は8ビート主体でゴリゴリのピック弾きをしていたのに、なぜフュージョンに合うようなベースに惹かれたのか?4弦ベースすらまともに弾けないのに、なぜ5弦なのか?若さとは恐ろしいものです。
そんな経緯のため、大枚をはたいたのにバンドであまり手に取ることはなく、ヴォーカリストから借りたフェルナンデスの安いベースをメインで使っていました。バンドの解散とともに手放したのが約30年前でしたが、どこに下取りに出したのかも覚えていません。
そして昨年9月。何気なくメルカリを見ていたところ、どことなく見覚えのあるベースが出品されていました。

「もしかして、同じ仕様のSeenベース?」と思い、画像をスクロールしていくと……確信しました。これはあのベースだということが!ボディバックに「かわうそ君」のステッカーが貼ってあったのです!若気の至りでこのステッカーを貼ったのは、確かにこの私でした。ヘッドストックやピックアップ・フェンスの傷も見覚えがあり、30年前に所有していた頃の感触が一気によみがえりました。

皆さんの関心は「ベースの音って30年経つと良くなるの?」でしょう。答えからお話しすると……笑っちゃうくらいに変わらなかったです。「ビンテージ感が増す」「ボディの鳴りが良くなる」「ピックアップのエイジングが進む」などの神秘的な答えを期待していた方には残念な結果となりました。大きな変化としてフレットはかなり擦り減っていました。しかし、抱え心地も、テンションも、弦間の音量バランスも、デッドスポットも、鳴り感も、全く当時のままでした。この答えを知りたいがためにこのベースを再び入手しましたが、答えが分かってしまった今は、ベースを再び手放すかどうか、かなり迷っています。このまま今の仕様をキープするか、改造しまくって自分色に染めるか、それとももう一度手放して10年後の再会に賭けるか…。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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