ラテンなJポップの女性アーティストの女王達 第3巻
ボサノバやサンバ名盤、名曲を作曲家や演奏家などから検証する特集、第3巻は位相をかえ、80年代のラテン系元気印ミュージシャンです。
その名は中原めいこさん。「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴ」のあの人です。
元気印歌謡曲!?とんでもない!Jポップ史上燦然と輝く名曲多数!
中原めいこさんは1959年、千葉生まれのシンガーソングライター。中原めいこさんと聞くと「キウイ、パパイヤ、マンゴの人」と沢山の方がリアクションします。
「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」がヒットしたのが1984年。今から38年も前のことです。Jポップという言葉が存在していない時代です。
当時、中原さんはテレビに引っ張りだこの歌手でした。どちらかと言えばアイドル系路線だったのかもしれません。ヒラヒラとしたカラフルな衣装を身に纏い、踊りながらあの曲「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」を歌っていました。当時を知る人でこの曲に記憶のない人はいない筈です。それだけインパクトを持った曲でした。
プロモーション的演出から、ある種の下世話感が付きまとう中原さんですが、実は曲も詞も書く、ハイスペックなアーティストであることはあまり知られていません。楽曲作りのセンスの良さは折り紙付きだと私は考えています。
第二のユーミン!?
その証拠にどのアルバムを聴いても楽曲の良さが印象に残ります。メロディがとにかくキャッチーなのです。そのメロディにラテン風味が加わることで中原めいこ印の音楽が完成します。
当時、レコード会社は中原めいこさんを「第二のユーミン」として売り出していたことを考えれば、彼女の音楽力は関係者の間では折り紙付きであったのでしょう。
当初、私も彼女をキワモノフィルターで見ていました。お恥ずかしい限りです。
90年にリリースされたアルバム「303EAST 60TH STREET」を聴いた時、その素晴らしさに圧倒されました。
私のジャズ好きな先輩にこのCDを貸したところ、その先輩もご自身で「303EAST 60TH STREET」を購入していました。「内容が想像を超えて良かった!」というのが先輩のコメントでした。
中原めいこさんのレコーディングミュージシャンは皆、ファーストコール!!
素晴らしい楽曲をサポートするミュージシャンは国内のファーストコールが揃っています。アレンジャーであり、キーボーディストの新川博さん。元プリズムのキーボーディストでサックス吹きの中村哲さん。寺尾聡バンドや福山雅治バンドの売れっ子ギタリスト、今剛さん。国内トップパーカッショニストの齋藤ノブさんなど、素晴らしいメンバーばかりです。
■ 推薦アルバム:中原めいこ『ロートス』(1984年)

中原めいこさんの4thアルバム。大ヒットした「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」だけではなく、「ロートスの果実」「エモーション」など元気印な曲に加え、「スコーピオン」「I miss my valentaine」など内省的メロディを持つ楽曲など、佳曲揃いのアルバムです。今聴けば若干の古さは否めませんが、勢いのあるラテン印の楽曲は十分に耳に耐えうるものだと思います 。
推薦曲:「ロートスの果実」
冒頭のスキャット部分でキマリと言っていい程のキャッチーさ!それを装飾するスティールパンサウンドが一気にラテン風味を引き上げる。それを受けるのがトゥーツ・シールマンスばりのハーモニカ。勢いとスピード感溢れるイントロにヤラレてしまう。この辺りは新川博さんのアレンジの妙。とにかくカッコイイ!
どこか下世話な匂い(悪い意味ではない!)がするものの、これこそが中原めいこの持ち味だと思う。
推薦曲:「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」
化粧品会社のCMソング。作曲は中原めいこさんで作詞は森雪之丞さんとの合作。キャッチーなブラスアレンジはスペクトラムのリーダー、新田一郎さん。
Aメロ部、Bメロ部は共に綺麗なメロディ。中原めいこさんは派手な部分が取沙汰されるが、基本的には類まれなメロディメイカーだと思う。
新田一郎氏の印象的なブラスフレーズが中原めいこさんのラテンテイストを支えている。
■ 推薦アルバム:中原めいこ『303EAST 60TH STREET』(1990年)

1988年に活動を休止し、ニューヨークに活動の拠点を移す。2年の歳月を費やし、完成したアルバム。アルバムタイトルは中原さん自身が住んでいたニューヨークの住所から取ったと言われている。
このアルバムはキーボード&シンセサイザーにプリズム出身の名手、中村哲さん。トランペット、トロンボーン数原晋さん。パーカッション、フルートは浜口茂外也さん。ギターに今剛さんといった名手達が顔を揃えている。時代性もあり、コンピュータープログラミングは迫田到さんが担当している。
このアルバムは基本、打ち込みもので構成がされており、ドラマーやベーシスは存在していない。なのに、グルーブ感を感じるのは迫田氏の腕による部分と機械ものに被るギターなどが混在し、機械色を消している。
中原めいこさんの楽曲にはある種のリラックスムードが漂い、一皮むけた感じがある。
推薦曲:「ダイヤモンド見分けなさい」
今剛さんのギターカッティングが抜群。単音バッキングとコードカッティングのバランスが絶妙にアンサンブルされている。打ち込み曲でありながらギターアンサンブルが前面に配置されており、機械臭を感じないのは、このミキシングに由来しているのではないかと思う。
次曲、「ナッソーの月」と比較するとブラスアンサンブルと同列でストリングスも配されている。また、パーカッションも効果的に使われている。スネアの音が殆ど聴こえないという面白いアンサンブルだが違和感はない。
推薦曲:「ナッソーの月」
このアルバムのベストトラック。印象的なブラスアンサンブルにサルサを思わせるピアノのクラーベが被ると一気にラテンムードが炸裂する。
中原さんの歌唱はあまり気張らず、クールに歌っている。中原さんの歌唱に寄り添うように入る、ガットギターのオブリガートが打ち込みによる機械臭を見事に消し去っている。ブラスアンサンブルが支配する踊りだしたくなるような名曲。
推薦曲:「Daybreak in N.Y.」
ボサノバベースの空気感の演出が見事。この曲でも今剛さんのアコースティックギターのフレーズが素晴らしく、打ち込みによる機械臭を消している。
打ち込みによるボサノバは独特な空気感を持つ。サックスソロはキーボードプレイヤーの中村哲さん。アウトロ部分のアコースティックギターソロも秀逸。ギターの背景を担うブラスを模したシンセサイザーのバッキングも心地よい。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- 中原めいこ、中村哲、今剛、迫田到など
- アルバム:「ロートス」「303EAST 60TH STREET」
- 曲名:「ロートスの果実」「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」「ダイヤモンド見分けなさい」「ナッソーの月」「Daybreak in N.Y.」
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