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シンセサイザー鍵盤狂漂流記~音楽を彩った電気鍵盤たちと名盤の数々~その80 

2022-06-13

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

Jポップ世紀の大名盤を作った男、大瀧詠一

今回の鍵盤狂漂流記のテーマはJポップの巨匠、大瀧詠一です。大瀧詠一さんといえば1981年に発表された「ア・ロング・バケイション」で大ブレイクしました。
元々大滝詠一さんはハッピーエンド(細野晴臣、鈴木茂、松本隆、大瀧詠一)のメンバーの1人です。アメリカンポップスやリバプールサウンドなどを知り尽くしたマニアックなミュージシャンであり、作曲家、歌手です。
浪々とした甘いボーカルスタイルは唯一無二で完璧主義者としても知られています。

大瀧詠一のアルバムに参加したミュージシャン達

大瀧詠一さんのアルバムは「ア・ロング・バケイション」が世間では知られていますが、アルバムも多数発表しています。その他に某サイダーメーカーのCMなど多くのCM曲も制作しています。74年にはプライベートレーベル「ナイアガラ・レーベル」を設立。その後、ソロアルバム「ナイアガラ・ムーン」を発表。山下達郎や伊藤銀次と「ナイアガラ・トライアングルVol.1」、佐野元春、杉真理と「ナイアガラ・トライアングルVol.2」などを発表しています。

大瀧詠一のアルバムに共通した音…

大瀧詠一さんのアルバムには大きな特徴があります。それは自身のレーベル名にも用い た「ナイアガラ」、「ナイアガラ・サウンド」です。
「ア・ロング・バケイション」を一聴して分かる音は分厚く、深く心地よい残響(リバーブ)に覆われています。これが「ナイアガラ・サウンド」です。
「ナイアガラ・サウンド」とは「ウォール・オブ・サウンド」とも呼ばれ、フィル・スペクターが多用したサウンドといわれています。

ナイアガラサウンドの録音は…

端的に言えば、大きなスタジオにミュージシャンを一同に集めて、「セーノ」で音を出し、その残響も含めて各楽器を録音して出来上がる音、それが「ナイアガラ・サウンド」です。しかし、そう簡単には「ナイアガラ・サウンド」ができる訳ではありません。大勢のミュージシャンを集めて一斉に録音するということは誰か1人が間違えても録り直しということになります。
参加するミュージシャンはファースト・コールと呼ばれる一流のセッションミュージシャンです。しかも、「ア・ロング・バケイション」のテイク、「君は天然色」はアコースティックピアノ、エレクトリックピアノで5人。アコースティックギター5人!エレクトリックギター3人、パーカッション5人など多人数で行われます。かなりの緊張感漂う現場だったことは容易に想像できます。
大瀧さんが目指したサウンドは各楽器の演奏音が被って録音されます。その結果、音に独特の厚みが加わります。音の被りも計算してオケの音を作る訳ですから、各楽器へのマイクの立て方など、想像を超えるノウハウが必要になります。
「ナイアガラ・サウンド」には大瀧詠一さんやレコーディングエンジニアの吉田保さんの高度な録音技術が凝縮されているのです。
大瀧さんは一発目の音を聴いた時に自分の求めた音への喜びを語っています。

「ア・ロング・バケイション」のアルバムにアコースティック・ピアノ3台!

通常のレコーディングはドラム、ベースピアノ、ギター4人の場合、ドラム、ベースのリズム楽器を先に録音。そこにピアノやシンセサイザー、ギター演奏者がドラム、ベースの録音トラックを聴いて演奏し、オケが出来上がります。そのオケを聞きながら、ボーカリストがボーカルブースで歌入れをします。
 そういう意味で沢山の楽器が「セーノ」の一発録りはあまりない事なのです。
東京のスタジオは高い土地の上に建っているので1時間のスタジオ代はかなり高価になります。間違えれば、もう一度録り直しです。そのような効率が悪い事は誰もやりたがらないのです。しかし、「ナイアガラ・サウンド」はそれを実行することで独特の空気感が生まれ、その上に乗るボーカルが引き立つということになります。
大瀧詠一さんの頭の中には自身が志向する「ナイアガラ・サウンド」が鳴り響き、それを実行するために手段を問わない音職人だったのだと思います。

■ 推薦アルバム:大瀧詠一「ア・ロング・バケイション」(1981年)

Jポップの金字塔であり、世紀の大名盤。アレンジは井上鑑さんが担当している。井上さんのインタビューなどを読むと当時の事は殆ど覚えていないと答えている。当時売り出 し中のアレンジャーにとっては沢山ある内の1つということなのかもしれません。井上 さんは竹内まりやのヒット曲、「不思議なピーチパイ」やレコード大賞をとった寺尾聡の「ルビーの指輪」などを手掛けています。どこまでのアレンジをしているのかは分かりませんが、「Velvet Motel」の゛風景画~♪″という件で、「ふ・う・け・い画」と文字の1つ1つを異なるボーカリストに歌わせたり、「Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語」で〝散歩しない?~♪″の部分だけを太田裕美に歌わせたり、〝月に吠えるのさ~♪″部分の後、実際吠えている声を入れたりとなかなかユーモラスで洒落ている部分がある。

推薦曲:『君は天然色』

どれだけCMにこの楽曲が使われたのか分からないほどの人気曲。詩は松本隆さんが書いている。妹を失った後に渋谷の交差点で風景がモノクロームに見えた時を詩にしたと本人が番組のインタビューで答えていた。松本さんの詩の完成が遅れ、大瀧さんが半年間リリースを伸ばしたのは有名な話。このアルバムは多くの詩を松本隆さんが書いており、素晴らしい映像が聴き手にも提供される。

推薦曲:『雨のウエンズデイ』

この曲も松本隆さんの作詞。くぐもった雨の景色と恋の行方…松本さんの詩と楽曲が見事な世界を描き出している。中間部の鈴木茂さんのギターソロが素晴らしい!

推薦曲:『恋するカレン』

松本隆さんの作詞。とにかく楽曲が素晴らしい。大瀧さんにこの手の歌を歌わせたら右 に出るものはいないのではないかと思う。詩と楽曲が絶妙に合わさった世界はレノン=マッカートニーを凌駕すると個人的には思っている。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:大瀧詠一、鈴木茂
  • アルバム:「ア・ロング・バケイション」
  • 曲名:「君は天然色」、「雨のウエンズデイ」「恋するカレン」
  • 使用機材:アコースティック・ピアノなど

⇨ SOUND HOUSE ピアノ/シンセサイザー 一覧


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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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