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蠱惑の楽器たち 37.音楽と電気の歴史13 カセットテープレコーダー

2022-02-04

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

磁気録音機器において、もっとも多目的に使われたのがカセットテープです。そして録音再生するレコーダーも用途に応じて様々なタイプが存在しました。主に国産カセットテープレコーダーを追ってみます。

1962年 カセットテープレコーダー1号機 Philips EL-3300

最初のテープレコーダーは、当然ですが規格を作ったフィリップス社です。小型のカセットテープを生かしたお手本のようなプロダクトになっています。

1967年 国産初カセットテープレコーダー AIWA TP-707P

初期の国産レコーダーは、水平にカセットをセットするタイプが主流でフィリップス社のお手本に忠実な感じがしますが、70年代に入ると国産レコーダーが世界のカセットテープ市場を引っ張っていく印象があります。性能面だけでなく、アイデアなども国内メーカーから出たものが多いように感じます。

1967~68年 各社からラジカセ登場 松下電器 RQ-231

当然という感じですが、ラジオとカセットをくっつけるというアイデアが出てきます。略して「ラジカセ」です。この馴染みやすい名称は不滅のような気がします。

1968年 初のカセットデッキ TEAC A-20

初期のレコーダーはカセットテープのコンパクトさや手軽さを重視し、それほど音質を追及していませんでした。そんな中、A-20は音質を重視したデッキという位置づけです。本格的なオープンリールなどを手がけるTEACならではの意欲作です。デッキですのでアンプなどと組み合わせることを前提としてます。

1968年 カーステレオにカセットテープを導入 クラリオン

カセットテープ以前にも磁気テープを媒体とした8トラック式カートリッジ式等がありましたが、自分で録音するのではなく、ソフトを買って再生するため、それほど普及しませんでした。自由に好きな曲を録音できるカセットテープを採用したカーオーディオは一気に普及してきます。

1973年~ カセットデッキの縦型化

この時期からカセットを水平に入れるのではなく縦に挿入するデッキタイプが増えます。コンポとして組む場合メリットが多く、このスタイルが定着します。

1976年 Wカセット クラリオン MD-8080A

Wカセットデッキとは2個のテープをセットできるデッキで、テープからテープへのダビングが簡単です。80年代になると、ラジカセも普通にWカセット化されて行きます。

1978年 オートリバース登場 AKAI GXC-735D

カセットにはA面とB面があり、手でカセットを抜いて反転させる必要がありましたが、それを自動化したものをオートリバースと言います。デッキの動作としては、ヘッドを反転して回転方向を逆にするという構造か、両方向使える固定ヘッドにして回転方向だけ逆にするものが大半です。後にナカミチがカセットを反転させるという機構のRX-505という機種もありましたが、例外と考えてよいと思います。オートリバースは80年代になると常識になって行きます。

1979年 再生専用ポータブルカセットプレーヤー ソニー ウォークマン

再生専用にも関わらず大ヒットし、各社が参入するきっかけとなります。1979年は新しいタイプのレコーダーが目白押しです。

1979年 初のWラジカセ シャープ GF-808

Wカセットのラジカセです。ラジカセの大型化もこの機種から始まっています。実は子供の時に使っていました。カセットテープの使い方は、これで覚えました。

1979年 初のマルチトラックレコーダー TEAC 144 Portastudio

MTRの先駆けです。テープスピードも9.5センチ/秒と互換性を犠牲にしてでも音質重視となっています。TEACはプロやセミプロを意識して製品開発をしています。

1970年代後半~80年代前半 データレコーダの登場

コンピュータ用データの保存場所としてのカセットテープを利用します。15分ぐらいで32KBぐらいが保存できました。ゲームのソフトなどもカセットテープで売られていました。当時はフロッピーディスクも出始めていましたが、コンピューター周辺機器は数十万円と高価だったため、ホビーユーザーは1万円程度で買えたデータレコーダを使っていました。

1980年代

1980年代は70年代後半に出たバリエーションを、より高性能に、より安価にし、低年齢層まで市場を拡大してきます。音質を求めたり、手軽さを求めたり、あらゆるニーズに対応すべく多様化していきました。

1986年~ CDラジカセの登場

CDがレコードと同じように売られるようになり、CDプレーヤーも安価に作れるようになり、必然的にCD付きラジカセが増えます。重低音が求められゴツイ機種がたくさん出てきます。録音はMDが出るまでカセットテープが一般的でした。下は1990年製のソニー CFD-K10ですが、妙にゴテゴテしたCDラジカセが多い中、すっきりしたデザインが気に入って所有していたものです。

1990年代

1990年代に入ると、MDも登場し、徐々にカセットテープは古いメディアとして衰退していきます。ラジオとCDとMDが付いた機器でもラジカセと呼ばれる変な時期もありました。

2000年代~今日

現在は、選択肢はあまりないものの、ラジカセタイプ、ポータブルタイプ、デッキなどが比較的安価に一通り売られています。マニア向けではなく、実用品として残っているのが明らかです。そんな中、本格的なレコーダーを作り続けてきたTEACは、今もカセットデッキを生産してくれています。放送局やスタジオなどの音を扱う現場では、何かの拍子にカセットテープを再生する必要が出るかもしれません。そういうときのために、まともに使える機器が現役で売られているというのは心強いわけで、嬉しく思います。


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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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