
先日、ネットサーフィンをしていると【本当に音楽が好きな人は歌詞を重要視していない】と書いてある記事を読みました。
そして、その意見について賛同者も大勢コメントをしていました。
本当の音楽好き、というのが何をもってして定義されるのかわかりませんが、これについては作詞をする立場でもある著者が真っ向から反対意見を挙げたいと思います。
■ 歌詞否定派の意見
歌詞否定派の中にも理由は色々とあるようでした。
まずその意見に対しひとつずつ反対意見をあげていこうと思います。
○ 歌詞にこだわるなら詩を読んだり物語を読んだりすればいい
歌詞は演奏やメロディーに乗せて歌うために作られているものなので、譜割りやメロディーに合わせて韻を踏んだり、時にはわざとおかしな言い回しをしたりすることがあります。 これらは歌ではない詩でもあることですが、メロディーに合わせて歌うことでより耳に残りやすく心地よいものとなります。
詩は言葉だけで表現されたものなので歌詞とは異なるものです。
メロディーライン、歌詞はそれぞれ相乗効果で曲を素晴らしいものに変えることができます。 メロディーあってこその歌詞であり、両者は切っても切り離せない関係性にあるわけです。
○ インストでもいい曲があるからわざわざ歌はなくてもいい
インスト曲と歌がある曲について、どんな違いがあるかというと本質的にはなにも違わないと著者は考えています。
音楽とは演奏を通して何かを訴えたり表現したりするもので、リスナーはそれを自分たちなりに感じ取り感動を覚えるわけです。
もし作曲者がなんの思いもなく曲を作っていたら曲名なんていうものに意味はないので『○○のテーマ1』、『〇〇のテーマ2』と番号でも振っておけばいいのです。
楽器の演奏だけで表現されたものが好き、というだけならわかりますが歌詞も作曲者や演奏者の表現したいものを伝えてくれる要素のひとつです。
インスト曲がかっこいいから歌詞は必要のないもの、ただ言葉が乗っていればなんでもいいものと考えるのはちょっと極端な意見ではないでしょうか?
○ 歌詞は読んでも意味が分からないものが多い
これには歌詞が大切だと考える著者も賛同します。
たしかに一度聞いただけで歌詞の内容がわかる曲はあまりありませんし、かなりしっかりと読み込まないと理解できないものもたくさんあります。
ただし、全くちんぷんかんぷんなものというのもほとんどありません。 一部分でも聞き取れた歌詞からラブソングだなとか、社会批判だなとかおおよそのテーマはわかります。
でもそれでいいのではないでしょうか。 作詞者だって全てを理解してもらおうなんて全く思っていませんし間違った解釈をされてもかまわないと考えている人が大半です。 興味を持って深読みする人もいれば、作詞者が思っていた事とは別な解釈をする人もいる。 それでもリスナーの心を動かすことができるのは、その歌詞が適当に書かれたものではなく作詞家が思いを込めて書いたものだからです。
○ いい歌詞と言われているものも歌詞だけ見たら普通
これも本当にその通りですね。
でも、だからこそ歌詞が大事なのではないでしょうか? 歌詞とメロディーは相乗効果でよくなるものと最初に書きましたが、どちらか一方がダメだと全体がパッとしない印象になってしまいます。
例えばヒゲダンのヒット曲であるPretenderですが、「君の運命の人は僕じゃない」というサビの出だしがあります。
「君の」から始まるフレーズはやまほどありますし「運命の人」というのもラブソングでは非常にありきたりな表現です。
また、このフレーズにおけるコード進行もメロディーも特別なものではなくむしろ王道です。
それにも関わらず多くの人の心を動かしたのは歌詞とメロディーがマッチしたからではないでしょうか。
もちろん曲全体の良さや前後の繋がりも関係していますけどね。
■ プロの作曲家・作詞家から学ぶ
もし歌詞が本当にどうでもいいものだとしたらプロの作詞家というのも必要のないものになってしまいます。
しかし、あまり数は多くないものの歌詞の作詞を専業とするプロもいらっしゃいますし、現代詩などの詩集を出す作家に歌詞を書く人はあまり多くありません。
つまり、普段聞いている曲の歌詞というのは詩とは違うプロの作品なわけです。
それをどうでもいいと思って聞かないのはもったいないと思いませんか?
演奏がきっかけだったとしてもせっかく好きな曲を見つけたら歌詞も読んでみたり内容を考察したりすれば音楽の世界はもっと広がるはずです。
また、作曲家が曲を作る過程からも歌詞の重要性がわかります。
作曲には歌詞から作る詩先と曲から作る曲先がありますが、作曲家の中には詩先を好む人も珍しくありません。
詩からインスピレーションを受けたものの方がいい曲を作れると考えているからですね。
著者の知人にも歌詞は必ず手書きで欲しいという人がいます。
手書きの歌詞の方が伝わりやすいそうです。
歌詞ではなく曲が好きだという人もその曲が歌詞から大きな影響を受けているとしたら歌詞にも興味が出てくるのではないでしょうか?
■ まとめ
歌詞の重要さがおわかりいただけましたでしょうか?
もちろんこれは著者の考え方であり、歌詞なんてどうでもいいと思うなら歌はただのメロディーだと思って聞けばいいのです。
他人の音楽の楽しみ方にケチをつけるつもりは全くありません。
ただ、『歌詞を重要視する人はたいして音楽が好きではない』ということにはならないとだけ言いたかったのです。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら