
<XS Wireless 1シリーズのハンドヘルドXSW 1-825>
音楽イベントから講演、プレゼンテーション、冠婚葬祭、自治会のイベントまで、ワイヤレスマイクは様々な現場で必要とされます。価格を抑えた免許不要のエントリー向けワイヤレスは過去より多く発売されており、今回SENNHEISERから発売されたXS Wireless 1シリーズは低価格帯に位置づけられるエントリーモデルです。誰でも使える簡便性を持ち合わせているのか、そしてコストに対してそのパフォーマンスは如何ほどのものと言えるのか、レビューさせていただこうと思います。
尚、XS Wireless 1シリーズはハンドマイクの「XSW 1-825」、ハンドマイク2本セットの「XSW 1-825 DUAL」、スピーチに適したラベリアタイプの「XSW 1-ME2」、ヘッドセットタイプの「XSW 1-ME3」で構成されており、今回は「XSW 1-825」のレビューをさせていただきます。
必要なものが収められたワイヤレスマイクセット

<XSW 1-825の中身>
パッケージを開けるとワイヤレスマイク導入に必要な機器がセットになって収められています。
送信機が一体となったハンドマイク、送信機用の電池、受信機、受信機用の電源アダプターとアタッチメント、そしてマイクホルダーです。セットに入っていないものはマイクスタンドくらいで、買って届いたその日にイベントがあってもそのまま導入できるようになっています。
送信機の下部の突き出した部分がアンテナとなっており、これは上位機種と同じ構造をしています。シャークフィン・アンテナデザインと呼ばれる構造で、憧れを持つ人も多いのではないでしょうか。

<付属のマイクホルダーと変換ネジ>
マイクホルダーは重要なアイテムで、ワイヤレスマイクは胴体が太いことが多く、使われているマイクホルダーに装着できないことがあります。「XSW 1-825」は専用のホルダーが付属しますので心配はありません。
また、マイクホルダーには変換ネジが装着され、ほとんどのマイクスタンドに対応できます。(ホルダー側が5/8”SHURE規格、スタンド側3/8”AKG規格の変換ネジです)

<持ち運びにも使えるパッケージ>
パッケージには取っ手がついており、購入後は収納用・運搬用のケースとして使うことができます。専用のマイクケースや機材ケースを用意しなくても安全に持ち運ぶことができて便利です。
知識不要のかんたんセットアップ
音響のプロでない方にとってワイヤレスマイクを使いこなせるかどうかという不安は、購入をためらうポイントのひとつでしょう。「XSW 1-825」で印象に残ったのは簡単さ。無線や音響の知識がなくても簡単な操作で使い始めることができます。
ワイヤレスマイクは無線機ですので、電波を用いて音声信号を伝搬します。つまり無線機と同様に送信機と受信機で周波数を合わせなければなりません。

<SET/SCAN長押しでオートスキャン機能が起動>
「XSW 1-825」はオートスキャン機能を搭載しているため、周波数選びに際して知識が必要ありません。まずは受信機の[SET/SCAN]ボタンを長押しすると使える周波数を探すオートスキャン機能が起動。自動的に受信機をセットアップします。

<SYNC長押しでオートシンク機能が起動>
続いて受信機の[SYNC]ボタンも長押し、同時に送信機(マイク)底部の[SYNC]ボタンを長押し。するとオートシンク機能が起動し、自動的に送信機側の設定を行います。

<オートセットアップ機能で周波数が自動設定された>
無事に設定されると受信機と送信機のディスプレイに表示される数字が同じになります。この数字が周波数の設定で、1桁目がバンド、2桁目がチャンネル。[14]であれば1バンドの4チャンネルという周波数になります。
使う準備はこれで完了。簡単に周波数の設定を行うことができました。
余談ですが、「XSW 1-825」受信機にはアンテナが見当たりません。アンテナは受信機の筐体に内蔵されているのです。アンテナの設置場所も経験と知識が必要ですが、「XSW 1-825」は内蔵アンテナを実現したことでアンテナ設置の難易度を低減しています。
小規模PAには必要十分な機能と仕様
機能や仕様に関しては高額のワイヤレスシステムに及びませんが、小規模イベントでは必要十分といえる内容です。

<バランスとアンバランスの出力端子を装備>
受信機背面の出力端子はXLRバランス型出力とTSフォンジャックアンバランス型出力を装備。本格的な業務用コンソールから簡易PAシステムまで様々な機器に接続することができます。接続する機器を確認して必要なケーブルを一緒に購入すると良いでしょう。

<マイクの音量調整スイッチ>
また、送信機側、受信機側ともに音量調整機能を搭載。様々な音源や環境に対応することが可能です。

<電池残量と音量表示>
状況表示機能も秀逸で、音声の有無(2段階表示)、バッテリーの残量を受信機側で確認することが可能です。特に電池残量表示があることで電池切れが発生する前に対処できますから、イベント現場において重宝するでしょう。電池残量が少なくなった際にランプが点灯するようになっています。
エントリー価格帯でこれだけの機能があれば必要十分。高いコストパフォーマンスが期待できることは言うまでもありません。
SENNHEISERの名に恥じない音質
「XS Wireless 1」シリーズはB帯アナログワイヤレスと呼ばれる種類で、音声信号の伝搬方式はアナログ伝搬(広帯域FM変調)です。音質には伝送方式の影響が大きいように思われますが、マイクユニットによる影響が最も大きいのです。

<グリルを外すと精度高く組まれたマイクユニットが見える>
「XSW 1-825」ではSENNHEISER e 825という定評あるダイナミックマイクのユニットが採用されており、ダイナミックマイク独特のパンチのある音質です。周波数特性は50〜16,000Hz(-3dB)となっており、ボーカルやスピーチには使いやすい音質でしょう。
ワイヤレスの需要は様々なところにあります。現場によっては音響にかけられる予算も少なく、出番が1年に1回ということも少なくないでしょう。ワイヤレスマイクは導入にあたって1波(1本)で済むことはあまりなく、複数同時導入というケースがほとんど。必要なコストもかなりのものになってしまいます。XS Wireless 1シリーズは使用頻度の低い音響現場において、また、カフェや冠婚葬祭、プレゼンテーションなど、音楽イベント以外の用途において有効かつ定番の選択肢のひとつとなるでしょう。
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