
< ギター用2.4GHzワイヤレスシステム XSW-D Pedalboard Set >
近年、ワイヤレスシステムはライブパフォーマンスにおいて欠かすことのできないツールとなり、高音質・高機能でありながら低価格のシステムが多く販売され、誰でもワイヤレスシステムを使えるようになりました。ボーカル用途はいわずもがな、動きの激しい楽器にも有効。特にケーブルの取り回しが大変なギタリストには憧れのある機材でしょう。
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) / XS LAV Mobile
今回のレビューでは、業務用ワイヤレスマイクのスタンダードであるSENNHEISERからリリースされたギター用ワイヤレスシステム「XSW-D Pedalboard Set」を紹介します。
エフェクター型受信機と軽量小型送信機
パッケージを開けると「XSW-D Pedalboard Set」の名前の通り、自分のペダルボードに組み込むために必要なものがすべてセットになっています。
受信機と送信機はもちろんですが、接続用のケーブルや充電用のケーブル、識別用のステッカーまでセットになっています。

< XSW-D Pedalboard Setのセット内容 >
受信機はまるでコンパクトエフェクター。
サイズ感や質感もそっくりで、コンパクトエフェクター同様に堅牢な造りです。安価な機器はスイッチを踏んだら壊れそうな機器も少なくありませんが、踏んで壊れる心配はなさそうです。裏面も鉄板で覆われ、頑強であることが伝わってきます。
また、ペダルボード固定用のネジ穴が設けられており、ネジ穴の位置は同梱の図面で詳しく表示されています。マジックテープ等で固定するほか、ネジでしっかりと固定することも可能です。

< 受信機の底面には固定用のネジ穴がある >

< 図面が同梱されている >
送信機は充電式であるため非常にコンパクトであり、かつ、軽量です。筆者のストラトにも違和感なく装着できました。ストラトにはストレート状態で接続できましたが、プラグ部が折れるようになっているため様々なギターに対応できます。

< ストラトにも装着可能 >
ベルトクリップと延長用ケーブルも付属。送信機本体が軽量なので直接接続でも落ちることはなさそうですが、不安な場合はギターストラップに装着すると良いでしょう。
延長用ケーブルはシンプルに延長するだけではなく、送信機がそのまま装着できないような形状のギターに接続し送信機を取り付けることにも対応します。さらにベルトクリップと延長用ケーブルを使用することで送信機を背中のギターストラップやベルトに装着することができます。延長用ケーブルはちょうどよい長さで取り回しもしやすいでしょう。

< 延長ケーブルとベルトクリップも同梱 >
誰でも使えるシンプル操作
「XSW-D Pedalboard Set」はWi-Fiと同様の2.4GHz帯の電波を使用するワイヤレスシステムであるため、免許申請などは一切不要。日本だけでなく世界各国、どこでも気軽に使うことができます。
セッティング非常に簡単で、ワイヤレス機器というよりもBluetooth機器を使う感覚に似ています。ワイヤレス機器では「使う周波数を選ぶ」という設定が重要であり難しいのですが、本機では「ペアリング」という概念を用いるため周波数や電波は意識せずに使えます。
なお、出荷時にペアリングされているため通常はペアリング作業も不要。開ければすぐに使えます。
同時に使用できるのは送受信機ワンセットですが、送信機を買い足すこともできます。別の送信機に切り替える場合はペアリングが必要で、スイッチを踏みながら起動するとペアリング待機に入り、ペアリング対象を切り替えることができます。待機状態で使用する送信機のボタンを押し、完了するとLEDが緑色点灯に。周波数を気にせず使えるので、詳しくない人でも容易にシステムを構築できるでしょう。

< 周波数を選ぶのではなく、Bluetooth機器のようにペアリングを行う >
ワイヤレスで信号を伝送することにフォーカスされているため余計な機能が一切ありません。受信機のボタンは足で踏むスイッチのみ。スイッチを踏むことでミュート状態になり、チューナーが動作するようになります。もう一度踏むと解除。操作はこれだけです。ミュート操作は受信機側だけでなく、送信機側でも行うことが可能。表示は連動しています。

< 受信機はミュート中はチューナーとして動作する >
伝送距離は余裕の75m、バッテリー駆動時間は最長で約5時間
ステージで使用するものですから、伝送距離は気になるポイントのひとつでしょう。
「XSW-D Pedalboard Set」はコンパクトな送信機とアンテナの無い受信機でありながら、安価なワイヤレスとは一線を画す約75m(250フィート)の伝送距離を誇ります。ステージ内はもちろんのこと、よほど広い会場でなければ客席に降りても使うことができる余裕の伝送距離です。
受信圏外に近づくとLEDが赤色点灯となり、圏外が近いことを知らせてくれます。
※伝送距離は電波状況により変動することがあります
送信機のバッテリーは850mAhの充電式リチウムイオンバッテリーが採用されており、USB-Cのコネクターから充電します。付属のケーブルで受信機と接続して充電できるほか、一般的なUSB電源アダプターより充電することも可能です。電池残量がなくなってくると送信機、受信機双方の表示が変わり、電池が少ないことを知らせてくれます。

< 送信機はUSB-C給電で充電する >
電池が心配であれば送信機をもう1台用意しておくと良いでしょう。
ワイヤレスを感じさせない高音質
ギタリストにとって最大の関心事であろう音質とタイムラグもチェックしてみました。
結論的にはワイヤレスシステムとして申し分無い音質であり、また、カッティング演奏をしても遅延を感じることはありませんでした。
ギター演奏においてはケーブルも音質を決める重要な要素ですから、レコーディングは有線になるでしょう。しかし、「XSW-D Pedalboard Set」はさすがSENNHEISER、申し分無い音質です。ステージやリハーサルで音質差を聞き分けるのは難しいでしょう。
なお、受信機にはXLRバランス出力も装備されていますので、PAや録音機器向けにアンプ行きとは別系統の音声を出力することができます。ライブレコーディングでもライン出力を別トラックとして録音しておけば、後で役に立つかもしれません。

< 受信機からはノイズの少ないバランス出力も可能 >
業務用音響で培われた音質と信頼性、そして使い勝手の良さを手頃な価格に収めたワイヤレスシステムは、ギタリストの定番アイテムのひとつとなっていくでしょう。
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