あの音を再現できるのか?極上バンドの宿命を覆す?!
永久保存盤ライブアルバム、アメリカンロック編。最終回はあまり取り上げられることのないバンドであり、日本で録音されたライブ盤です。 そのバンドは24丁目バンドです。
24丁目バンドはニューヨークをベースに活動していたセッション・ミュージシャン達が1979年に結成したバンド。 彼らのセッション活動はロックだけでなく、ジャズやクロスオーバー、フュージョンシーンなど、多岐にわたっています。メンバーはギターのハイラム・ブロック、ベースのウィル・リー、キーボードのクリフ・カーター、ドラムのスティーヴ・ジョーダンの4人。
ハイラム・ブロックはデヴィッド・サンボーンのバンドやギル・エヴァンス&マンデーナイト・オーケストラなどジャズ・フュージョン系のバンドに在籍していました。 ウィル・リーもホレス・シルヴァー・クインテット、ブレッカー・ブラザーズ・バンド、ジョー・クール、ボブ・ジェームス・バンドといったジャズ、フュージョン系のバンド、日本でも渡辺貞夫のバンドや矢野顕子のバンドなど、多くのセッションに参加しています。
クリフ・カーターはジェームス・テイラーのバンドやニューヨークのファースト・コールバンドで結成したToph-E & The Pussycats、パット・メセニー・グループのドラマーだったダニー・ゴットリーブのバンド、エレメンツなど、ポップスやフュージョン系のバンドやセッションに参加していました。 ドラマーのスティーヴ・ジョーダンに至っては、チャーリー・ワッツ亡き後のローリング・ストーンズの専属ドラマーとして知られています。
腕利きのメンバーだけにそれなりの需要が高かったことは、各メンバーのレコーディング履歴を見るだけで十分に理解できます。 しかしスティーヴ・ジョーダン以外、ロックミュージックとは位相が異なるフィールドでの活躍が多く、ある種の違和感を持つのは私だけではないはずです。 そんな4人がバンドを組んでどうなるかといえば、限りなくロックであり、ポップソングが中心。ジャズやフュージョンなどの「色」を前面に出すことはほぼありませんでした。
24丁目バンドをアメリカンロックバンドとカテゴライズするのはいささか抵抗はありますが、実際に出てきた音はロックであり、彼ら自身が「我々は演奏できて、全員が歌えるロックバンドだ」とコメントしているので、アメリカンロックと称して問題はないはずです(笑)。 しかし、(一般的な)ロックミュージシャンがロックを演奏しても、このライブ盤のような音楽的クオリティーは全く期待できません。 音楽の本場、ニューヨークで演奏をするファーストコール・ミュージシャン達だからこその凄みが音に凝縮されている…それがこのライブアルバムを聴く価値なのです。
私はギタリストのハイラム・ブロックとベーシストのウィル・リーは実際のライブで観ています。 ハイラム・ブロックはニューヨークのジャズクラブ、「スイート・ベイジル」。ギル・エヴァンス亡き後のギル・エヴァンス・オーケストラでした。 アメーバのごとく変化し続けるあの音の塊の中、ハイラム・ブロックは袖脇の柱に足をかけて、バンドアンサンブルなどどこ吹く風でギターを弾いている姿が忘れられません。当然、譜面は全く見ていません。ロックギターあり、ジャズありの音を色の剥がれたストラトキャスターで出していました。 ウィル・リーはジョー・クールというバンドで来日した際と、渡辺貞夫のセッション、そしてブレッカー・ブラザーズ・バンドで観ています。踊りながらもキメをビシビシ合わせる堅実なベースプレイ。どうしてあんなに簡単そうに楽しく弾けるのだろうという疑問を持ったくらいです。
そんな凄腕達が集まったバンドが悪いわけがありません。上手い奴らが平気な顔をして極上な演奏を聴かせるのが24丁目バンドなのです。
■ 推薦アルバム:24丁目バンド 『BO KU TA CHI』(1981年)

1981年リリース、24丁目バンドの日比谷公会堂、郵便貯金ホールでのライブアルバム。 4人のメンバーは皆、曲も作るが、このアルバムでは1曲がギタリスト、ハイラム・ブロックの曲。それ以外の殆どの楽曲をキーボーディストのクリフ・カーターが書いている。 クリフ・カーターのキーボード・ライブ機材はヤマハのエレクトリックグランドCP-80、オーバーハイム4ボイス・シンセサイザー、ミニモーグ・シンセサイザー、ハモンドB-3オルガンというシンプルなセットだ。
推薦曲:「Rikki And The Radio」
オーバーハイム4ボイスシンセとCPのイントロから始まる。クリフ・カーターのボーカルはいかにもポップソング向きだ。この曲を複数の鍵盤を弾きながら歌うのは、そう簡単ではないはず。驚くべきことは4人のコーラスワークが完璧だということ。どうしてアメリカのバンドはコーラスが上手いのかといつも感心する。完全に24丁目バンド流のコーラスになっている。別テイクではないのかと勘ぐってしまうほどのコーラステクニックだ。
推薦曲:「Share Your Dream」
スティーヴ・ジョーダンのタイトなドラムソロから、オーバーハイム4ボイスのコードワーク、ギターのカッティング、ベースのスラップが重なり、独特のグルーヴ感漂うイントロ。簡単そうに見えて結構細かいキメがある。その辺りをキッチリと合わせてくるのがこのバンドの凄いところだ。 中盤でのドラムソロにブレイクを挟みながら各楽器が絡むキメが、この楽曲の聴かせどころ。そのタイトさは只のロックバンドには真似できない。 一方、ギターソロは極めてシンプルなロック。4人のコーラスとウィル・リーお得意の、ベーススラップ風コードカッティングの絡みが秀逸だ。
推薦曲:「The New York City Strut」
楽曲の終盤、ボーカルが途中でフェイクしてリズミックな節回しを歌う。刹那、ギタリストのハイラム・ブロック、ドラムのスティーヴ・ジョーダンがそれを受けて演奏を変えてくる。コール&レスポンス、ジャズ系の音楽を心得るミュージシャンだと感心させられる。またそれが異様に決まっているし、カッコイイのだ。 とはいえ音はロック以外のなにものでもない。流石のロックミュージックがこのアルバムには溢れているし、グルーヴしまくる腕利き達の音に舌を巻くばかりだ。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ハイラム・ブロック、クリフ・カーター、ウィル・リー、スティーヴ・ジョーダン
- アルバム:『BO KU TA CHI』
- 推薦曲:「Rikki And The Radio」、「Share Your Dream」、「The New York City Strut」
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