ニューヨークのファーストコールミュージシャンバンド、24丁目バンド!
今回の鍵盤狂漂流記はニューヨークのスタジオミュージシャンで結成されたバンド、24丁目バンドです。メンバーはハイラム・ブロック (ギター&ヴォーカル)、クリフォード・カーター(キーボード&ヴォーカル)、ウィル・リー (ベース&ヴォーカル)、スティーヴ・ジョーダン(ドラム&ヴォーカル)。
セッションミュージシャンとしてはファースト・コール(一番最初に電話がかかってくる売れっ子ミュージシャンの総称)達が結成したバンドです。
ハイラム・ブロックやウィル・リーは自身のソロ・アルバムを制作していますし、多くのアーティイストの名盤にも参加しています。クリフォード・カーターは24丁目バンドの他、エレメンツというフュージョンバンドにも参加。ジェームス・テイラーのアルバムやマイケル・フランクスのアルバム等にも参加する売れ子ミュージシャンです。1993年には自身のソロ・アルバム『Walkin' into the Sun』もリリースしています。私も持っていますが素敵なアルバムです。ドラマーのスティーブ・ジョーダンはローリング・ストーンズの『ダーティ・ワーク』に参加。ブルース・スプリングスティーン、ジョン・スコフィールド、ボブ・デュランなど著名ミュージシャンのレコーディングやツアーに参加するなど、その活躍は枚挙に暇がありません。
そんな売れっ子達が集まったのが24丁目バンドでした。
■ 推薦アルバム:『24thストリートバンド』(1979年)
たった3日間で仕上げられたアルバム。彼らは2枚目がファーストアルバムだとコメントしていますが、私のお薦めは、このファーストアルバムです。なんといってもそのスピード感、グルーブ感が素晴らしく、売れっ子ミュージシャン達の勢いを感じます。>
このアルバムジャケットはニューヨークの地下鉄の「トークン」がアートワークされています。「トークン」は地下鉄に乗る際、購入するコインで切符のようなものです。「トークン」の中央部にはNYCのYの文字がくり抜かれています。私が1980年にニューヨークのペン・ステイションで購入した「トークン」にもYの空洞がありました。しかし、その後訪れた際、トークンのY文字は塞がっていました…。それがコストダウンだったのかどうかは分りません。単なるコインに開けられた穴の話です。私はNYCの象徴であったトークンの変貌に少し寂しい想いがしたのを記憶しています。

推薦曲:『ショッピン・ラウンド・アゲイン』
ギタリスト、ハイラム・ブロックの曲であり、24丁目バンドを象徴する名曲。そのスピード感は他の楽曲を凌駕している。彼らは腕利きミュージシャンであることから、ほぼ1発録りだったことが想像される。ジャズというよりもロックがベースになっている。アルバムを通しても似たような楽曲があることは否めないが、演奏のグルーブ感には目を見張るものがあり、4人のコーラスワークがスピード感を増長させている。
キーボードのクリフォード・カーターはヤマハCP-80 エレクトリック・グランドピアノとオーバーハイム4ボイスシンセサイザー、ホーナーのクラビネットを使用している。
推薦曲:『ダウン・トゥ・ザ・ウォーターホール』
クリフォード・カーターの曲で本人が歌っている。カリプソ感漂う名曲でクリフのヴォーカルもそのムードを引き立てている。ハモンドB3がいい効果を出している。ブレイク後の4人によるコーラスワークも素晴らしい。
推薦曲:『Quack!!!』
当時はクロスオーバーと云われていたフュージョン感満載の曲。シンプルなリフに分かりやすくポップなサビ。NHKで放送されたライブではブレイク時に4人によるコーラスワークの凄さを実感できた。また、クリフ・カーターのシンセサイザーソロでは自分の弾いた音を同時に歌うという、シンセサイザーによるジョージ・ベンソン風ソロを披露していた。インスト曲の方が彼らの技術力の高さが分かる為、「Quack!!!」を3rdアルバムに入れて欲しかった!
■ 推薦アルバム:24丁目バンド『マンハッタンの夢』(1980年)
1ヶ月の時間をかけてレコーディングされたアルバム。これがファーストアルバムと彼らはコメントしている。曲は9曲中7曲がクリフォード・カーターの作で「NOT TOO MUCH TO GIVE」と「LOVERS AGAIN」の2曲がハイラム・ブロックのオリジナル作品。また1曲を除いては全てヴォーカル曲。1作目のフュージョンタッチが薄まり、アルバム全体が高度なポップソングアルバムになっている。
レコードジャケット(当時)は4人によるユーモア溢れるアートワーク!

推薦曲:『NOT TOO MUCH TO GIVE』
ギタリスト、ハイラム・ブロックの曲。ヴォーカルはハイラム・ブロックがとっている。サビのメロディが美しい。
■ 推薦アルバム:24丁目バンド『BO KU TA CHI』(1981年)
24丁目バンドの来日記念ライヴアルバム。私は当日券で郵便貯金ホールに出かけましたが、急用ができて彼らのライブを観ることはできませんでした。 売れっ子ミュージシャン達は好き放題やってもこれだけのハイクオリティーなライブになるという好例。悪ガキ達が楽しく演奏している姿が目に浮かびます。来日した彼らのインタビューで心に残っているフレーズでシメにします。
「我々は全員が歌える完全なボーカルバンドだ!」
このライブを聴けば、その言葉が嘘でないことが分かります。

推薦曲:『ニューヨーク・シティ・ストラット』
4人による冒頭のコーラスワークやAメロ部分などを聴けば彼らが「完全に歌えるボーカルバンド」であることを理解できる曲です。 バンドメンバーが全員歌え、高度な演奏技術を持ち、そのスキルがロックフィールドだけでなく、ジャズフィールドにも及ぶ…バンドの1つの理想形であると私は考えています。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト:24丁目バンド
- アルバム:「24thストリートバンド」「マンハッタンの夢」 「BO KU TA CHI」
- 曲名:「ショッピン・ラウンド・アゲイン」 「ダウン・トゥ・ザ・ウォーターホール」「Quack!!!」 「NOT TOO MUCH TO GIVE」「ニューヨークシティ・ストラット」
- 使用機材:アコースティック・ピアノ、ヤマハCP80エレクトリックグランド、 オーバーハイム4ボイスシンセサイザー、ミニモーグ、ホーナー・ クラビネット 等
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