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蠱惑の楽器たち 123. トラッカーSunVox プロジェクト設定

2025-08-25

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

無料の現代的トラッカーSunVoxの解説となります。

SunVox 公式サイト

SunVoxはDAWと比較すると学習コストはかなり低いですが、癖があるため、戸惑うことも多くあります。今回はプロジェクト(楽曲)制作において、知っておく必要があるティック(Ticks)について解説します。

まず空プロジェクト(楽曲)の作成

まずSunVoxを起動して新規プロジェクトを作成する手順です。メニューからNew Projectを選択するのですが、メニューの場所が分からなかったりします。SunVoxは一般的なアプリと違って、独自インターフェースのため慣れが必要です。下画像の赤枠アイコンがメインメニューとなり、ここをクリックすることでメニューが出てきます。

New Projectを選択した後はEmptyを選びます。そうすると下のような空のプロジェクトが開きます。モジュールはOutputしかない状態です。この新しいプロジェクトに対して、固有の設定をしていきます。

TPL ティック(Ticks)

ティックとは時間軸の解像度を意味します。24ティックがBPMの基準である4分音符に紐付いています。ティックの初期設定を変更する必要性はないかもしれませんが、設定方法と用途は知っておいた方がよいので解説したいと思います。設定は下記のようにメインメニューのProject propertiesを選択し、設定ウィンドウを開きます。

初期設定ではTPL(Ticks Per Line)が6になっていると思います。これは1ライン当たりを6等分しているという意味です。24ティック = 4分音符なので、6ティック = 16分音符となります。つまりデフォルトでは1ラインが16分音符となっています。ティックの可変幅は1~31までありますが、よく理解してから設定する必要があり、むやみに6ティック以外にすることは危険です。基本的に6ティックで困ることはあまりないと思いますし、6ティックであればラインとテンポの関係は視覚的にもマッチングします。他アプリとやり取りする際にも、最も混乱しないティック数だと思います。ただ分かってくれば実験的な用途でも利用できる柔軟性がティックには隠れています。

ややこしいと思えるのは、BPMと解像度はティックに紐付き、パターンエディタのデータはラインに紐付いていることです。これを理解しておく必要があります。例えば120BPMで6ティックだったものを、3ティックに変更すると、同じ120BPMでも倍速で再生されます。

さらに3連系に対応できるようにデフォルトでは2でも3でも割れるように6ティックとなっています。ただし、エディタ上で見やすくするのは、ひと手間かかります。これについては次回以降で解説したいと思います。トラッカーが既存音楽にそれほど寄り添っていないことが、この辺のことから分かります。何よりもコンピューターを優先としているところがトラッカーなのです。ラインなども0から番号が振られていたり、パターンエディタは基本16進数だったりとプログラミング的なにおいがします。

またラインのTime grid、Time grid2という設定項目があり、デフォルトだとそれぞれ4分音符区切り、4/4拍子のときの1小節区切りになっています。上記画像で、ライン00、04、08、12に薄く色が付いていますが、それがグリッドです。これらは打ち込み時に見やすくするためのグリッドなので、音データに直接影響するものではありません。

  • Time grid:1ライン × 設定数間隔でグリッド表示
  • Time grid2:Time grid × 設定数間隔でグリッド表示(より目立つ色)

拍子の設定方法

パターンを新規作成するとデフォルトでは4/4拍子となっていますが、拍子を変えたい場合もあると思います。上記のティックとTime gridの仕組みを理解した上で設定する必要があります。例として以下の6/8拍子2小節のパターンを作ってみます。

まずはパターンのプロパティの設定で全体のサイズを決めます。タイムラインにあるパターンアイコンをダブルクリックしてプロパティを開きます。パターンメニューからもアクセスできますが、割愛します。

ここでNumber of Linesの値を設定します。8分音符6個で1小節なので、2小節で8分音符12個となり、1ラインが16分音符なので、2倍の24となります。そしてEnterを押して適用します。

次にグリッドを設定し見やすくします。設定方法は上記と同じメインメニューのProject propertiesを選択し、設定ウィンドウから行います。

ここでは、Time gridを2として8分音符刻みとしました。そしてTime grid2は小節刻みにしたいので6とします。これは8分音符6個分で区切るという意味になります。結果は以下のようになります。5線譜と同じようにC4(ド)を入れておきました。

この拍子設定、連符の設定、16分音符よりも細かい音符などの扱いは、トラッカーの苦手としているところだと思います。DAWなどでは、部分的に様々な変化に対応できますが、トラッカーでは限界があり、特に見た目部分は妥協する必要があります。その代わり、様々な小技が用意されています。いずれもプログラム的な数値制御なので、好き嫌いが分かれるところではありますが。

次回はSunVoxならではのユニークなモジュールについて解説します。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
blog https://achapi2718.blogspot.com/
HP https://achapi.cloudfree.jp

 
 
 
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