最近、さまざまなPAスピーカーブランドがこぞって新商品を投入している「ポータブルコラムスピーカー」というカテゴリーを知っていますか?
通常、PAシステムというと、ミキサー、プロセッサー、パワーアンプ、スピーカー、サブウーファーなどで構成されますが、これらがすべてまとまったPAスピーカーと思っていただければイメージしやすいかと思います。
特長として、
- 中高音域を担当するアレイスピーカーは、水平方向のカバーエリアが一般的なPAスピーカーよりも広く、また目線より高い位置に配置されているため、幅広いエリアに均一に音を届けることができる。
- 低音域専用にサブウーファーが地面に接地しているため、スタンドに立てたPAスピーカーよりも迫力があり、体感できる低音をならすことができる。
- ミキサー機能により、必要チャンネル数が多くない小規模イベントであれば、1台で完結できてしまう。
- モデルによっては、専用コントロールアプリが用意されており、スマートフォンから各種コントロールを調整することができる。これにより、実際に会場を歩き回りながら、聴く人の立場になって音作りをすることができる。
今回は、一番よく見かける機会があるPAスピーカーは?と言われて真っ先に思い浮かぶ「SX300E」のElectro-Voiceから販売されているコラムスピーカーEVOLVEシリーズから、サイズが大きく、ミキサーを搭載したモデル「EVOLVE 50M」を実際に触ってみたレビューを紹介したいと思います。
一番左から、Electro-Voice/EVOLVE 50M、JBL/EON ONE MK2、JBL/PRX ONE、CLASSIC PRO/PA UNO、CLASSIC PRO/PA ONEになります。
一目見て気づいたのは、EVOLVE 50Mのアレイスピーカーはスピーカー下部が斜めに角度がついている点です。これが本当にバランスの良いサウンドというか、違う表現だと、高域、中域、低域それぞれの境目に違和感を感じることなく、自然につながっているサウンドという感じです。今回、EQフラットの状態でサウンドを録音してヘッドホンで聴いて気づいたんですが、EVOLVE 50Mは一番高音域の音が大きく出ていました。シンバルとか上の音がはっきり、くっきりと聞こえる感じですね。



見てわかるようにとても安心感のある堅牢な作りです。今回の中では一番大きなアレイスピーカー部でした。
~メーカーサイト商品ページより~
フルレンジのコラムアレイには8基の3.5”ネオジウムドライバーと独自のウェーブガイドを搭載しており、水平角度120°の広い指向性を実現いたしました。また、アレイで形成された下方向への40°の指向性により前列の座席へのオーディエンスエリアまでサウンドを届けることができます。


EVOLVE 50Mは、コラムスピーカー界では大口径となる12インチ・ウーファーユニットを採用したサブウーファーを採用しています。Electro-Voiceならではの、重厚で濃密なローエンドを聴くことができました。この低音ならDJイベントも盛り上がること間違いなしですね。2-3mくらい離れて視聴した感想として、確かに超低音は下にいるんですが、バスドラのキックのアタック部分は聞こえる音像の中間からちょい下くらいから聞こえてくる感じでした。何が言いたいかというと、要するにEVOLVE 50Mから、まとまった一つの音がドーンと体に響いてくる感じです((笑))


ミキサーは、大体の音楽イベントに対応できる8チャンネル仕様。エレキギターを直接接続できるHi-Z入力や、スマホの音楽を流すBluetooth音楽再生にも対応しています。操作についても特に難しいこともなく、説明書を読まずにしばらく触ってみただけで基本的なコントロールは理解することができました。こういう「誰でも簡単に音を出すことができる」点はやっぱり大事ですね。さらにリバーブなどのボーカルエフェクターが内蔵されている点もとてもありがたいです。
あと特長的な部分は柔軟なPAシステム構築に助かる入出力です。パワードスピーカーには大抵、ミックス出力、スルー出力など、元のスピーカーと同じ音を鳴らすための出力端子が搭載されているものですが、EVOLVE 50Mには、AUX OUTもあります。メインミックスとは異なるバランスで出力することができるので、よくあるボーカル前のフロアモニター用に「ちょっとマイクは多めに返す」なんてこともできてしまいます。また、EVOLVE 50Mの場合、CAT5以上のEthernetケーブルで接続することで、ステレオ再生にも対応できます。FOOT SWITCH端子もあまり他では見ないですが、こちらも現場では重宝されるエフェクトのON/OFFを足元で操作することができます。ボーカルがMCをする時はリバーブをOFFしたい時などですね。
ミキサーの詳細に関しては、下記マニュアルのP.15を見ていただくとわかるのですが、かなり細かく、痒い所に手が届いています。
- サブウーファーの音量は個別調整可能
- 3バンドPEQ
- 7バンドGEQ
- コンプレッサー
- FX1、FX2合わせて30種類のエフェクト などなど
https://products.electrovoice.com/binary/BDL_UM_EVOLVE_50M_F01U393750_03_JA.pdf
~メーカーサイト商品ページより~
多数の入力(マイク及びライン入力に対応したXLR/TRSコンボジャック x4ch、ステレオライン入力XLR/TRSコンボジャック x1、RCAステレオ入力 x1、3.5mm x1、ハイインピーダンス入力 x1)を備えています。プロフェッショナルクオリティーのマイクプリアンプと高性能なミックス機能を備えています。高解像度、低遅延のBluetoothストリーミング機能により、BGMや音楽再生に最適な機能を発揮します。独立したAUXセンドとフットスイッチ入力も含まれており、様々なエフェクト(2つのFXチャンネルにおいてリバーブ、エコーなどの空間系とコーラス、フランジャーなど歪み系エフェクトなど30のプリセットを搭載)により、様々な演奏を演出することができます。
~メーカーサイト商品ページより~
新機能であるQuickSmart Linkを使用すると、2台のEVOLVE 50Mを簡単に総合リンクできます。より大きな編成のバンドや多くの入力を必要とするアプリケーションにおいても能力を発揮いたします。Ethernetケーブルを介してシステムをリンクするだけで、非圧縮のデジタルオーディオ及びコントロール接続し、QuickSmart Mobile app(Apple AppStore及びGooglePlayで無償配信)を介して両方のEVOLVE50Mを単一のミキサーとして完全なミックスコントロールが可能です。また、現行品であるEVOLVE 50とも音質的に互換性があるため、EVOLVE 50MからXLRケーブルを介してEVOLVE 50とステレオペアで使用できます。
ワイヤレスコントロールアプリ「EV QuickSmart Mobile」は起動すると、自動的にEVスピーカーを探してくれるので、簡単に接続を完了させることができました。




左側がメイン画面、右側が各チャンネルごとの画面です。よく各パラメーターを円形の線をなぞって調整するパターンがありますが上げたり下げたりが難しかったりするので、個人的に各チャンネル画面の各パラメーターを右にある長い縦フェーダーを上下になぞることで調整できるのがありがたかったです。
今回、Electro-Voice/EVOLVE 50Mを実際に触って、耳でいろいろなモデルとサウンドを比較してみましたが、結論として「さすがElectro-Voice!!」という一言に尽きます。操作も複雑ではなく、使いやすかったのでユーザーフレンドリーというのもうなずけます。サウンドは言わずもがなですね。ポータブルPAとイメージした時に、一般的に多くの人が想像するであろう「良い音」というのがそのまま当てはまると思いました。バランスの良さ、音量、音の厚み、どれをとっても一級品だと思います。
業界大注目のポータブルコラムスピーカー。音楽イベントを良い音で盛り上げたいと思ったらElectro-Voice/EVOLVE 50Mは間違いなくお薦めの1台です。
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