
アマチュアが自分でレコーディングをするとなればパソコンにオーディオインターフェイスを繋ぎ、DAWソフトを入れて作業するというのが一般的になりました。
MTRをスタジオに持ち込むのが主流だったのはもう20年近くも前の話になってしまうわけですね。
ではMTRはパソコンの操作が苦手な人だけが使う前時代の機材に成り下がってしまったのでしょうか?
少なくとも著者は違うと思っています。少数派ではあるもののパソコンを使えるのにMTRを使っている人はいますし、MTRなりのメリットがあるわけです。
■ MTRを使うメリット
MTR時代に音楽をやっていない若い世代は今のMTRにどんなことができるか知らない人も多いでしょう。DAWにはないMTRの機能を紹介していきます。
○ パソコンに負担をかけない
トラック数をいくつも使い音を重ねまくり、プラグインエフェクトもかけまくりの状態だとパソコンにけっこうな負荷がかかっています。スペックの低いパソコンならミキシング途中にソフトが動かなくなってしまうこともあるでしょう。
MTRなら絶対に大丈夫ということはありませんが、パソコンと比べると動作の安定性ははるかに高いです。
また、パソコンそのものをあまり持ち出したくない人にも向いています。ノートパソコンは持ち運ぶことを前提に作られているものの精密機械であることに変わりはありません。
ハードディスクの故障原因で一番多いのは衝撃や振動によるものです。特にたくさんの機材があるスタジオに持っていくのは本当に気を付けなければなりません。MTRが壊れないということではありませんが、パソコンは壊れてしまうと音楽以外でも何かと困ってしまうものです。できればあまり負担はかけたくないですよね。
○ 本体がある
これこそがDAWソフトとの一番の違いです。
DAWは画面上で操作しますが、本体があるMTRは実際のフェーダーやボタンをいじることで細かな調整を行います。MTRを使ったことがない若い世代は実物のフェーダーやボタンを不要なものと思う人もいるでしょう。しかし、実物があるかないかで作業効率は全然違います。
DAWユーザーでも実物のフェーダー、ボタンが欲しくてフィジカルコントローラーというものをパソコンに接続している人もいます。
DAWソフト Studio One をリリースしているPresonusから販売されているFaderport16は、約10万という高額商品ですが、この金額を払ってでも欲しくなるほどコントローラーは便利なものなのです。
PRESONUS ( プレソナス ) / FaderPort 16 フィジカルコントローラー
Presonus FaderPort シリーズ(フェーダー数の少ない機種もあります)
○ ミキサー代わりにもなる
本来の用途からは逸れますが、入力数が多いMTRなら小規模ライブのミキサー代わりになります。内蔵エフェクトでボーカルにリバーブをかけることもできますし当然EQだっていじれます。
モニターセンドなどの制約はありますが、アコースティックライブやドラムが生音のみのライブなら8チャンネルの入力があれば十分使えますね。
○ おすすめのMTR
以前は多くのメーカーから販売されていましたが、現在ではZoomとTASCAMのほぼ2択となっています。あまり選択肢は多くないですが、その反面どの商品も今でも需要がある素晴らしいMTRばかりです。
ZOOM ( ズーム ) / R20 マルチトラックレコーダー
2021年11月に発売されたばかりの新商品です。
16トラック同時録音8トラック対応なのでドラム録音にも向いています。
タッチ操作対応の4.3インチ画面がついていて、リージョン単位での編集が可能なため、DAWソフトに近い編集もできます。
MTRユーザーの中には最終的には録音した音をDAWソフトで編集するという使い方をする人も多いのですが、R20ならこのまま本体だけで完結させてもクオリティの高い音源ができそうですね。
TASCAM ( タスカム ) / DP-32SD マルチトラックレコーダー
とにかくトラック数が多く欲しいという人は32トラック同時再生が可能なこの商品がおすすめです。トラック数が足りなくなってドラムを先にミックスダウンして、という作業をした人は多いと思いますが、32トラックあればたいがいのバンドのレコーディングは最後まで、トラックを空けるためのミックスダウンを行う必要はないでしょう。
32トラックで約4万円という安さですが、基本的な編集機能やエフェクトも搭載されています。
TASCAM ( タスカム ) / Model 24 レコーディングミキサー
他の24トラックMTRと比較すると値は張りますがそれもそのはず、MTRとしてだけ利用するのはあまりにもったいないほどの機能を備えています。
MTRというよりミキサー、オーディオインターフェイスとしての機能の方が充実しており、とくに内蔵プリアンプの性能の良さは評判が高いです。イベントなどで自前のミキサーを用意する人に特におすすめしたい商品です。
ZOOM ( ズーム ) / R16 マルチトラックレコーダー
2009年発売の商品なのでもはや10年前です。
この手の音楽系機材で10年前のものと言えばゴミ同然の扱いをされてしまうものもありますが、おすすめMTRの話をするとなるといまだに無視できない名機です。
なんと言っても25000円を切る価格ながら、8トラック同時録音が可能ということ。もちろんそれだけではありません。オーディオインターフェイスとしてそのままパソコンに録音したり、フィジカルコントローラーとして利用したりできます。
ラフ音源を作る時はMTR単体として、こだわりの音源を作りたい時はパソコンに繋げてという使い分けをしているユーザーが多いようですね。
■ まとめ
現代のMTRの魅力は伝わりましたでしょうか?
MTRからDAWに乗り換えた人なんかはまた欲しくなってしまったのではないでしょうか。
特に生ドラムの録音をするにあたって入力数の多いオーディオインターフェイスの購入を検討している人は、8トラック同時録音ができるMTRも候補に入れてみてください。
きっとドラム録音以外にも便利に感じるはずです。
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