来たる2023年8月、とあるバンドの久しぶりのアルバムがリリースされると発表されました。バンドの名は「Warmen」。元Children of BodomのキーボーディストJanne Wirman(以下ヤンネ)が結成したヘヴィメタルバンドです。
2014年以来の新作となる『Here for None』は新たなラインナップで制作されており、ドラムはMirka Rantanenに代わりSeppo Tarvainenが加入。そしてこれまでゲストボーカルを迎えるスタイルだったWarmenに、初の専任ボーカルとして加わったのがPetri Lindroos(以下ペトリ)です。
ヤンネがWarmenと並行して活動していたChildren of Bodom(チルボド)はフィンランド産メロディック・デスメタルを代表するバンド。
スウェーデンのデスメタルシーンから派生して誕生したメロディック・デスメタルにメロディック・ブラックやパワーメタルからのエッセンスを加え、そこにヤンネの特徴的なキーボード・サウンドが乗ることによってフィニッシュ・メロデス、一部の好事家が「キラキラメロデス」と呼ぶスタイルを確立させた存在です。
■ Children of Bodom / Downfall
フィンランド内外を問わずチルボドの影響を感じさせるバンドはたくさんいます。例えば同郷のKalmahとか。
そんなキラキラメロデス界隈の中でも、総本山のチルボドと同じくらい筆者が入れ込んだのがペトリ在籍時代のNortherでした。特に、表題曲のMVも作られた3rd『Death Unlimited』はめちゃめちゃ聴いてましたね。ボーカルにディストーションが掛かったブルータルなプロダクションと、よりデスラッシーなスタイルに心を掴まれ、「チルボドだけじゃなくてこんなカッコいいバンドも知ってるんだ」と悦に浸ってました。学生時代あるあるですね。
■ Norther / Death Unlimited
その後ペトリはNortherを離れEnsiferumへ加入。メロデスではなく、フォーク・メタル/ヴァイキング・メタルのジャンルで活動することを選びます。
「どっちもそんな変わんなくない?」っていう人が居そうなことも分かります。ただ、当時は結構ショックだったんですよねえ。フォーク・メタルも好きなんですけど、”Northerのペトリ”を求めて聴くとなかなかに心を砕かれました。
かくしてペトリはキラキラメロデスとは袂を分かち、フォーク・メタラーEnsiferumのボーカルとしてキャリアを積んでいきます。
一方その頃チルボドはというと、アルバムリリースや、来日公演を含む世界中でのライブを順調にこなしていましたが、2015年に10年以上在籍したギタリストRoope Latvalaを解雇したあたりから雲行きが怪しくなりはじめます。
2016年には奇しくも元NortherのギタリストDaniel Freyberg(ペトリとはNorther在籍時期が異なる)が加入。2019年には約4年ぶりとなるアルバム『Hexed』をリリースしますが、同年ヤンネを含むメンバー3人が脱退を発表。創設メンバーであるAlexi Laiho(ギター/ボーカル)もChildren of Bodomの名称を使用できなくなり、バンドは完全に空中分解を起こしてしまいました。
2020年、Alexi LaihoはDaniel Freybergを含むメンバーと共に新バンドBodom After Midnightを結成。キーボードはサポートメンバーを迎える形ではあったものの、チルボドの流れを汲む音楽性でEP『Paint The Sky With Blood』をリリースしました。
■ Bodom After Midnight / Paint The Sky With Blood
Bodom After Midnightがキラキラメロデスの新たな名盤を生み出すことを心待ちにしたファンも多かったと思います。
しかし2021年1月、Alexi Laihoが急逝。Bodom After Midnightのフルアルバムや、Children of Bodomの再集結は叶わぬ夢となりました。
主要メンバーであったAlexi Laihoが急逝し、元Children of Bodomのほかメンバーの動向も掴めなくなっていたなか、今年2023年、ペトリのWarmen加入と新曲「Warmen Are Here For None」が発表されました。
■ Warmen / Warmen Are Here For None
もうイントロとド頭のスクリームでメロイックサインを掲げるしかない。
チルボドスタイルのメロディック・デスメタルは後続のバンドを聴くしかないのか……と思っていた矢先の思わぬ邂逅。涙でボドム湖が氾濫しそうです。
もともとはヤンネのソロプロジェクト的な側面も強かったWarmenですが、ペトリの加入を機にパーマネントなデスメタルバンドとして活動して欲しいと願うばかりです。
ここで終わってしまうと本当にただオタク語りをしただけになってしまうので、いくつかキラキラメロデス関連商品を紹介して締めくくりにしたいと思います!
ヤンネの特徴的なキーボードサウンドの核となっている音源モジュール。ROLANDのサイトでヤンネが作成したシグネチャーサウンドも公開されています。
MAD PROFESSOR ( マッドプロフェッサー ) / Mighty Red Distortion
ギター用のエフェクターですが、ヤンネはキーボードに使用。ギターにも負けない歪んだリードサウンドを生み出しています。
同社のLittle Green Wonder(オーバードライブ)はAlexiがブースターとして使用していた時期もあり、MAD PROFESSORブランドのサウンドはキラキラメロデスと相性が良いのかもしれません。
Alexi Laihoのシグネチャーモデルとして初めてネックピックアップを搭載したモデルである「Alexi Ripped」。晩年に開発が進められており、Bodom After Midnightのレコーディングでも同等のスペックのギターが使用されたと言います。