「現代を代表するヘヴィメタルのミックス/マスタリング・エンジニアと言えば?」
そう質問されたら、私はまずイェンス・ボグレン(JENS BOGREN)の名前を挙げるでしょう。
各楽器のチューニングが低く、かつ音数の多い現代的なヘヴィメタルでは、エンジニアリングが作品のクオリティに大きく関わってきます。イェンスの手掛けた作品は、クリアさと太さが同居したサウンドが印象的。近作としては、The Halo Effectの『Days Of The Lost』やAt The Gatesの『The Nightmare Of Being』を手掛け、過去に作品を手掛けたアーティストにはSepulturaやCarcass、Arch Enemyといったバンドが名を連ねます。海外のバンドはもちろん、Marty FriedmanやDIR EN GREYといった日本で馴染みのあるアーティストの作品でもエンジニアを務めており、「現代を代表するメタル系エンジニア」と呼ぶに相応しい実績を築いている人物です。
そんなイェンス・ボグレン(JENS BOGREN)が中心となって2020年に設立されたブランドが「Bogren Digital」。イェンスが手掛けてきた名盤の中で聴くことのできる最高のサウンドを提供することを使命として掲げ、IRやドラムサンプル、アンプシミュレータ・プラグインなどをラインナップしています。
今回は、Bogren Digitalが開発したシンプル極まりないアンプシミュレーター「AMPKNOB RevC」をテストする幸運に恵まれました!サウンドを交えてレビューしていきたいと思います。
プラグインのビジュアルはこんな感じ。
見ての通り、操作する箇所は主にON/BYPASSとGAINのみ。外部のIRローダーなどを使う人向けにキャビネットOFFのオプションや、ノイズゲートのスレッショルド調整なども備えていますが今回はいじらず。GAINも「ここに合わせな!」と言わんばかりに目印が付けられたポイント(1.0)に合わせて使用していきます!
■ Demo 1
今回のデモはすべて、7弦ギターのレギュラーチューニングから7弦のみ1音下げた「ドロップAチューニング」を使用。「AMPKNOB RevC」以外のプラグインは一切使っていない音源となります。
まずはリフっぽいフレーズを弾かないと始まらないだろうと思ったので、メロデス風味なフレーズにしてみました。7弦開放の「ゴンゴン」というメタリックな質感にモダンメタルな雰囲気を感じます。このサウンドがノブを1ついじるだけで出せるのは驚きですね。
■ Demo 2
続いて、低音を主体としたフレーズだとどうなるのかな?と思って弾いてみたフレーズ。ローC、ローA#そしてローAと6弦ギターのレギュラーチューニングでは出てこない音域のオンパレードですが、きっちり音程感を保ったままヘヴィに歪んでいます。ゲインを控えめにすればローGや8弦ギターにも対応できそうです。恐ろしい子…!
■ Demo 3
続いては6弦ギターの音域でのコードバッキング。ヘヴィメタルの常套句として、左右で同じフレーズを2回重ねてみました。6弦の音域に移ったからといって高域がピーキーになることもなく、そのまま使えるサウンド。多弦やダウンチューニングを使わないギタリストにもおすすめできちゃいますね。
■ Demo 4
最後にリードギターっぽいフレーズを。楽しくなっちゃったので下のハモリを重ねたバージョンも作っちゃいました。
前述のとおり、このプラグインは調整できるのがGAINノブ1つと言ってもいいほどシンプル。つまりリフやバッキングと全く同じ設定で弾いてるんですが、それでこの太いサウンドが出るのは驚き。EQや空間系のプラグインを足してあげれば、さらに耳馴染みがよくリードギターらしいサウンドになると思います。
そんなわけで、簡単に「AMPKNOB RevC」をレビューしてきました。総括としては「1ノブでこのサウンドが出るのは便利過ぎる」。これに尽きます。私自身がそうなんですが、あまりに設定できる項目が多いと途中でやる気を失ってしまうんですよね。できることならプリセットから2、3箇所調整するだけで使える音が出てほしいと思ってしまう。私のように、サウンドメイクはシンプルに留めてすぐに音を出したいというギタリストにとっては比肩するもののない優秀なプラグインだと言えます。
もちろん、本格的なギターサウンドが欲しい人にもおすすめです!ギターのアンプシミュレーターを「AMPKNOB RevC」にするだけで、簡単に奥行きと迫力のあるサウンドを得ることもできますし、ほかのアンプシミュレーターを使用したトラックと重ねてギターサウンドの厚みを増強するような使い方も良さそうだと感じました。
そんな便利過ぎる1ノブ・アンプシミュレーターですが、「Bogren Digital」からはベース用の「BASSKNOB - STD」というプラグインもリリースされています。その名前からピンとくる人もいるかと思いますが、こちらはAmpegのベースアンプをモデルにしたClean/Dirt 2チャンネルのアンプ・シミュレーター。「AMPKNOB RevC」と同じく1ノブでミックスに馴染む歪みが得られるようデザインされています。ギタリストはもちろんベーシストも「Bogren Digital」に要注目です!