
未だに多くのレコードファン、DJに愛され続けるSHUREのM44Gカートリッジ。
DJ用途のみならず、リスニング用途にも大好評だったことは多くのレコード好きには周知の事実でございます。
前回、ポール・マッカートニーの最新作「McCARTNEY III」のアナログLPのA面をM44Gと2つの交換針で聴いてみました。アルバムの実験性からか、使用する針によっては魅力的なボーカルを心行くまで味わえたり、一方では身体ごとバイブする様なクラブ的なアガり方を楽しめました。交換針の聴き比べならぬ「効き比べの」楽しさに驚かされた次第です。
さて続きましてB面。
M44Gの「効き比べ」ではどんなサプライズを楽しめるのでしょうか。
と、聴く前に…A面の時はパッケージにあまり触れていませんでしたので、ちょっとだけ触れてみましょう!

ほとんどの楽器をポール自身で担当して制作された、お遊び感覚満載なセルフ・プロデュースアルバム、「McCARTNEY」、「McCARTNEY II」の2作同様LP1枚仕様。ジャケットも2作同様の見開き仕様でした。
ジャケットを開くと、見覚えのあるデザイン。

ソロ1stの「McCARTNEY」同様、レコーディング風景とプライベートな様子の写真を散りばめたデザイン。

歌詞も印刷されたインナースリーブ。

白地に歌詞だけというシンプルなもの。
「McCARTNEY II」のインナースリーブをよりシンプルにした感じですね。

前回もお伝えした通り、ジャケットに覆われたシュリンク上に張られたステッカーには、MADE IN ROCKDOWNと表記されています。レコード盤のインナーグルーヴ(レコード盤内側の無音部)のところにも” MADE IN ROCKDOWN”の文字が。

この時期だからこそ生まれた作品であることを強調しているかの様です。
ちなみに「McCARTNEY III」のアナログ盤は、さまざまなバリエーションが出ています。赤やブルーのカラー・ビニール仕様や、ジャケット裏が違うものなど、プレミアムな存在となっているレアアイテムもネット通販でよく見かけます。
しかし、今回は一番出回っているとおぼしきスタンダードな黒いレコードだけに絞って針の聴き比べを追求してみたいと思います。
そんなこと言って、小遣い少なくてそれしか買えないだけなんじゃないのか?と突っ込みの声が聞こえてきそうですが、とんでもない、その通りです!この声が家の大蔵大臣に届くことを願いながら、針を落としましょう!
さて、A面に続いて今回もこちらの2つの針で楽しんでみたいと思います。

NAGAOKA ( ナガオカ ) / GD 63-44G
歌や、アコースティック楽器、鍵盤楽器がリアルに優しく響く印象です。
前回私はウィングスの「ロンドンタウン」はこの針で聴くことが多いと書きましたが、「パイプス・オブ・ピース」のマイルドなコンテンポラリー・ロックをじっくり味わいたい方にもおすすめです。
100SOUNDS ( ヒャクサウンズ ) / RS-44-100B M44G/M44-7対応 交換針
ロックやソウル、クラブミュージックを、トランシーに聴きたい方におすすめ。
ポールの作品ですと12インチ収録の「Good Sign」、「Deliverance」、「Secret Friend」はこれで聴いてこその多幸感だと私は思います。
1、Deep Deep Feeling
アルバム「McCARTNEY」シリーズのコンセプトを凝縮したような、お遊び感覚満載のキラーチューン。私個人としては、このアルバムのベストトラックです。お遊び第一弾「McCARTNEY」収録の「クリーン・アクロア」を思い起こさせる、ポールのドラムイントロが実に怪しげに始まって、たまりまへん!
前回もお伝えした通り、CDとは曲順を前後しての収録です。同じフレーズを、やや色を変えながらもしつこく繰り返すポップナンバー。
レコードではSIDE-2のオープニングにしたのは大正解だと思います。もうじっくり何回も聴いてしまいました。「McCARTNEY II」時のシングルB面曲「Check My Machine」や「Secret Friend」のように、わかっちゃう人には病みつきの最強トラック。しかし、不思議ながらもオシャレなアレンジになっているところが興味深いです。
NAGAOKA:
イントロのタムの音の響きと、出だしの歌が鳥肌ものです!さすがGD-63-44G!後半のエレキ・ギターのサウンドが、少しデイブ・ギルモア(ピンク・フロイド)な感じです。「ブロード・ストリート」も聴きたくなるくらい、マッカートニー・ソロ心をくすぐります。
100SOUNDS:
イントロのタムが低域な感じで、歌や楽器のサウンドの融合感が、NAGAOKAと比べ少ない分、隙間を感じるサウンドが実にアートな感覚です。そうそう!当時は賛否両論だった傑作アルバム「ケイオス・アンド・クリエイション」の世界。久々にあのサウンドを思い出しました。やはりクールなベストキラーチューンですこの曲。
2、The Kiss Of Venus
いい感じにイッちゃっているアシッドフォーク。ファイアーマンの3RDアルバムの二曲目風の一筆書きフォーク。聴いていて身体に染みます。イキ過ぎないのはファイアーマンとは違うからでしょうか。
NAGAOKA:
アコースティックギターの響きが、さすがNAGAOKAならではのサウンドです!まるで目の前で弾いてくれているような雰囲気に包まれます。
100SOUNDS:
こちらは、歌いだしはギターが抑えられて、歌の響きが目立つものの、ギターだけの部分になるとギターが目立って聴こえます。
3、Seize The Day
一瞬ソウルフルなエレピが鳴るかと思いきや、一転して60年代後半のUKサイケポップな佇まい。ビートルズに影響を受けながらも、ビートルズになれなかったニッチなサイケポップバンドが沢山いました。ここでは逆にビートルズになれなかったニッチなバンドによるサイケ・サウンドを、この機会だから一人でやってやろう的なノリを感じる、マニアックな21世紀版サイケポップ。ビートルズ級な極上アレンジにしないところがミソ。
ビートルズポールでなくソロポールならではの、ネオ・サイケ・グルーヴが炸裂しています。
NAGAOKA:
歌の響きがやはり素晴らしいです!
ドラムのタムが「クリーン・アクロア」を思い起こさせるくらい強調して聴こえました。
100SOUNDS:
エレキ・ギターのディストーションサウンドがシャープに目立ちます。ドラムが少しリンゴを意識したのを感じられます。
4、Deep Down
アルバム中、最もソウルフル・メロウなナンバー。80年代のスティービー・ワンダーやマイケルとのゴージャスなデュエットでヒットナンバーを送ったポールによる一人ぼっちの「セイ・セイ・セイ」。逆に一人ぼっちの寂しげな曲すら楽しんでやっているから、アルバムのサブタイトルが「MADE IN ROCKDOWN」。
やはりパンクな生き様ですポールは。
NAGAOKA:
歌が実に80年代メロウな感じです。またスネアの音は「パイプス・オブ・ピース」の「アベレージ・パーソン」や「ヘイヘイ」なテイスト。特にポールのこの辺りのアルバムが好きな方に楽しめるサウンドかと思います。ポールのドラムが好きだという、マイケルのカバーバンドをやっていた若いドラマーが知り合いにいたのを思い出します。NAGAOKAの針で聴いて納得。懐かしいスネアの音。
100SOUNDS:
ベースやシンセの中低音がオン気味な感じ。その影響もあってボーカルもリズミカルに聞こえてさらにソウルテイストが濃いです。ドラムはより軽い感じで、いい意味で昔の打ち込みの様なサウンドです。むしろこっちは90年代のクラブミュージック的なグルーヴ感が強調されています。
5、Winter Bird / When Winter Comes
アルバムのオープニングが短くリプライズしたあとは…「McCARTNEY II」のラスト同様アコースティックなナンバーでアルバムは終了。こちらはさらにやさしい軽やかな感じです。「McCARTNEY」のオープニングの「Lovely Linda」に近い普段着フォークの小品。
アルバムのラストをロッキンに終わらせようとせず、拍子抜けするような童謡フォーク。全くカッコつけようとしないカッコ良さ。この感性こそマッカートニー作品ならではのクールさですね。これは、どちらの針で聴いても別にいいかと思いきや!....
NAGAOKA:
歌とギターのバランスが凄くよく、温かみのある音です!
歌の表情を細かく表現しています。やはり信頼のナガオカ。特にこういう曲では絶対に期待を裏切りません!
100SOUNDS:
アコースティックギターの音色が低音寄りにバイブ。踊りたくなるような童謡フォークに!こんな曲からもグルーヴを絞り出してしまうのか…100SOUNDSの意地すら感じます!
以上、ポール・マッカートニーの最新アルバムでM44G用の二つの針を聴き比べてみました。
ポップ・ミュージックとしての王道のサウンドを、こころ行くまで堪能できるNAGAOKA。
きっとどんな音楽からも、トランシーな感覚やクラブ的な楽しさを引き出してしまう100SOUNDS。
他のアルバムもこれからこの2つの針の「効き比べ」で、新たな楽しみを発見できるかもしれません。きっとあなたのコレクションからも…
