BOSSの名盤『LIVE/1975-1985』
永久保存盤ライブアルバム、アメリカンロック編Part3はいよいよあのBOSS、ブルース・スプリングスティーンの登場です。
ライブアルバムというと「音が今一つ」という懸念材料が付きまといます。「今一つ」というのは①音がこもっていたり、②音の分離が悪かったり、③アンサンブルのバランスが悪く、何をやっているのか、何を演奏しているのかが分からなかったり、④シンバルの音が綺麗に聴こえなかったり、⑤ベースドラムの音がモコモコだったりなど、挙げたらきりがありません。また音響技術的なことだけでなく、演奏するミュージシャンのコンディションややる気にも左右されます。ライブは人間がやるものですから、そこに関わる全てのコンディションが高くなければ良いライブアルバムにはなりません。
私はこれまでにも凄いライブも聞いてきましたし、逆にどうしようもないライブもいくつか経験しました。例えば富士文化センターで聞いたパット・メセニーグループのライブは実際のスタジオ録音盤よりも凄い!なんていうのもありました。
そんな玉石混合のライブですがライブでなければ味わえない感動もあります。演奏的にも素晴らしく、バンドと会場が一体となり、その時にしか存在しない空気を記録するのは、ライブ盤でしかありえない表現手段です。 そんな素晴らしい瞬間をパッケージしたライブ盤を聴きたいと思っているのは、私だけではない筈です。
当時、ブルース・スプリングスティーンはアルバム『ボーン・イン・ザ・USA』をリリース直前。MTVではブルースの当該楽曲が繰り返し流れていました。私にとって新鮮だったのは、やたらクリアーでボーカルと同等の存在感を持つスネアの音でした。 エンジニアはボブ・クリアマウンテン。私はそんな興味から、ボブ・クリアマウンテンのミックスした『ボーン・イン・ザ・USA』を購入しました。 ブルース・スプリングスティーンより、スネアの音に興味を持ったというおかしな動機でした。
■ 推薦アルバム:ブルース・スプリングスティーン&ザ・Eストリート・バンド 『LIVE/1975-85』(1985年)

ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドが満を持してリリースしたライブアルバム。1975年から1985年という10年にも及ぶライブ楽曲の集大成。ブルース・スプリングスティーンのベストアルバム的な要素も強い。ミキシングエンジニアはボブ・クリアマウンテン。10年の時を違和感なく聴かせてしまう技術は特筆もので、クリアマウンテンの空間処理に舌を巻く。私がブルースの音楽に触れたのは1985年4月13日、まだ肌寒さの残る、代々木のオリンピックプール。ブルース・スプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・USA』ツアーだ。 単なるアメリカン・バンド…という上から目線の想いは、一発目の音が出てブルースの歌唱が始まった刹那、雲散した。
このバンドのライブ・パフォーマンスは上手いとか下手とか、音的にどうかなど、議論をするレベルを超えていた。そういう話ではなく、ブルース・スプリングスティーンという1人のミュージシャンのストイックな一途さを直に感じたライブだった。 そんなライブの熱狂や感動が余すところなくパッケージされた大作だ。 多分、こういうところがブルースがアメリカで支持される理由なのだろうという感想を持った。とにかく音楽家の真っ直ぐな想いがブルドーザーのように押し寄せてくるライブ。手抜きなど一切ない、怒涛のライブだ。 双眼鏡でブルースを観たが、ステージ袖で水を被りながら演奏していた姿を今も忘れることができない。
推薦曲:「ボーン・イン・ザ・USA」
ブルース・スプリングスティーンは労働者階級の代弁者として米国では捉えられている。そんなブルースの社会への視点が冴えた楽曲であり、このタイトル曲を含むアルバムは3000万枚以上のセールスを記録。 シンプルなフレーズにのるシンプルなメロディー。シンプルに歌う米国へのメッセージがこの楽曲の強さを支えている。 ブルースはこのアルバム内の楽曲「ダンシング・イン・ザ・ダーク」でグラミー、最優秀男性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞に輝いている。
推薦曲:「River」
ライブトラックでの語りが5分以上に及ぶこの楽曲は日本人にとってはつらいところ。こういったフォーキーな楽曲もブルースの得意分野だ。米国、労働者階級のあまり裕福でない少年たちの想いや切なさを歌わせたら彼の右に出るものはいないかもしれない。ここでもブルースの歌唱に寄り添う叙情性溢れるロイ・ビタンのアコースティック・ピアノが美しい。アウトロ部でアコピにハモンドのソロ、ハーモニカが被ってくるところはライブならではのハイライトだ。
推薦曲:「ボーン・トゥ・ラン 」
ブルース・スプリングスティーンが最初にブレイクした楽曲であり、ライブの最終章で演奏されるおなじみの楽曲。この楽曲のムードはプロフェッサー・ロイ・ビタンのドライブしまくるアコースティック・ピアノに支えられている。間奏でのクレランス・クレモンズのサックスが更にそこへ拍車をかける。長時間歌い続けてもなおブルースの声は衰えることはなかった。 私が観たライブは3時間以上に及び、最終の新幹線の時間はギリギリ。会場の照明がフルになり、ボーン・トゥ・ランは始まる。当該曲を聴きながら会場を後にしたことが今も残念でならない。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:アーティスト:ブルース・スプリングスティーン、プロフェッサー・ロイ・ビタン、ダニー・フェデリッチ、マックス・ウェインバーグ、ニルス・ロフグレン、ゲイリー・タレントなど
- アルバム:『LIVE/1975-85』
- 推薦曲:「ボーン・イン・ザ・USA」「River」「ボーン・トゥ・ラン」
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