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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その226 ~フェンダーローズ・エレクトリックピアノの使い手・海外遍PartⅡ~

2025-02-15

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器, 音楽全般

ローズピアノの代表的プレイヤー!ボブ・ジェームス

前回 は、これまでに頓挫していたフェンダー・ローズエレクトリックピアノ、ローズピアノの使い手特集の2回目でした。
今回取り上げるキーボードプレイヤーはボブ・ジェームスです。
ボブ・ジェームスは1939年、米国のミズーリ州生まれのキーボーディストであり、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーと幅広い能力を有する洗練された音楽家です。

これまでにジョージ・ベンソンやクインシー・ジョーンズ、チェット・ベイカー、グローヴァー・ワシントン・ジュニア、リー・リトナー、ハーヴィー・メイソン、エリック・ゲイルなど、数多くのミュージシャンとの共演歴があります。

グラミー賞には数多くのノミネート歴があり、1980年にはアール・クルーとのデュオアルバム『ワン・オン・ワン』、1986年にはデイヴィッド・サンボーンとのデュオアルバム『ダブル・ヴィジョン』でグラミー賞を受賞しています。

また、ボブ・ジェームスは東日本大震災で被災した大船渡を訪れ、地元のビッグバンドを指導するなど、音楽を通して地元の復興にも貢献をしました。その人間味溢れるパーソナリティを愛するファンも多く存在しています。

■ 推薦アルバム:ボブ・ジェームス『タッチダウン』(1978年)

1978年、ボブ・ジェームスのタッパンジー・レコードからリリースされたボブ・ジェームスのヒットアルバム。クリード・テイラー率いるCTIレーベルから数えると6枚目のアルバムとなる。前作である「ヘッズ」は78年ビルボードのジャズアルバム部門で1位を記録し、押しも押されぬ花形ミュージシャンとなる。このアルバム『タッチダウン』もチャート3位を記録しています。
レコーディングメンバーはギタリストのハイラム・ブロック、ベースのゲイリー・キング、ヒューバート・ロウズ(Fl)、デイヴィッド・サンボーン(Sax)、アール・クルー(G)、エリック・ゲイル(G)、スティーヴ・ガッド(Dr)、ラルフ・マクドナルド(Per)、ロン・カーター(B)など、ファーストコール達が参加している。
一言で言えばとても端正なアルバム。
腕利きミュージシャン達がボブの書いた設計図にのっとり、抑制された演奏でこのアルバムに貢献している。ボブ自身の演奏も奇をてらうことなくやるべきことをやり切っているという印象だ。

推薦曲:「アンジェラ」

テレビ番組『タクシー』のテーマとして書かれた作品。
ローズピアノをバックにサブテーマが展開し、そこにローズピアノによるテーマが流れるとボブ・ジェームスの世界が完成する。このシンプルなメロディを奏でるのはローズピアノしかないことをボブは確信しているかの様だ。ローズピアノはこの手のメロディを歌わせたらその右に出る鍵盤は考えられない。そういう意味でボブ・ジェームスはどんなメロディをどうローズピアノで歌わせればいいのかを分かってるミュージシャンであるとも言える。
ギターソロのオブリガートでもローズピアノの音が効いている。シンセサイザーのそこはかとないオブリガートも全体のアンサンブルも絶妙だ。
学生時代の私はこのアルバムの1曲目「アンジェラ」を目覚めの曲として決めていた。このローズの音を聴くととても爽やかな気持ちになったことを今でも記憶している。

■ 推薦アルバム:チェット・ベイカー『枯葉』(1974年)

1974年、チェット・ベイカーがクリード・テイラーのプロデュースでリリースしたヒットアルバム。
レコーディングメンバーには当時のファーストコールが集結している。チェット・ベーカーの他にボブ・ジェームス、ドラムはスティーブ・ガット、ベースはロン・カーター、サックスはポール・デスモンドといった超強力面子!
クリード・テイラープロデュースということでアコースティックピアノではなく、ローズピアノが選択されたのも理解できる。当時の音の気分がこのローズピアノに合っていたのかもしれない。
ボブ・ジェームスはあくまでサイドマンとしての立場をとってはいるものの、ローズピアノの演奏は1つの驚きでもあった。ボブ・ジェームス流のローズの特徴を生かしたフレーズの数々は実に的を射ている。

推薦曲:「枯葉」

枯葉をフェンダーローズ・エレクトリックピアノで演奏するのは比較的珍しいケースではあるが、ボブ・ジェームスは流石にローズピアノの使い手だけあり、この電気のピアノを上手く鳴らしている。
「枯葉」という超スタンダード曲。ボブはクールでスマートなチェット・ベイカーの新曲面を引き出すかのように煽りまくる。チェットのペットもそれに答えるかのようなブローを展開する…。
ローズピアノとトランペットの相性がとてもいいことをこのトラックを聴いて納得した。そこには抑制されたペット奏者のチェット・ベイカーはいない。そちらの役割を担うのはアルト・サックスのポール・デスモンドかもしれない。とはいえポール・デスモンドもいつもの軽やかさではなく、バップへ寄ったストレートアヘッドさを感じてしまう。ポール・デスモンドのソロを受けてボブ・ジェームスのローズピアノソロが始まる。
滑らかなローズソロの展開を聴くとジャズの明るい未来がこのソロに凝縮されているかのような錯覚にとらわれる。超スタンダードの「枯葉」が新しいタイプの楽曲に変わるのだ。
4ビートジャズではあるものの全体がそちら側に流れないのはボブの弾くローズピアノがそこにあるからなのだろう。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:ボブ・ジェームス、ティル・ブレナー、チェット・ベイカー、デイヴィッド・サンボーン、スティーブ・ガット、ヒューバート・ローズ、ポール・デスモンドなど
  • アルバム:『タッチダウン』『枯葉』
  • 推薦曲:「アンジェラ」「枯葉」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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