バンド解散から新バンドへ
私は現在、3つのバンドに入っている鍵盤弾きです。今年になり、コロナ5類への変更でバンド活動を再開しました。
1つのバンドは70年代西海岸のロックをコピーするロックバンド、もう1つはエリック・クラプトンフォロアーのバンド、3つ目はスタンダード・ジャズを電気系の楽器を使って演奏する電気ジャズバンドです。ダブっているメンバーもありますが、先月、西海岸のロックを演奏していたバンドメンバーのスケジュールが合わなくなり、突然、解散することになりました。ギタリストやボーカリストも替わるなど、迷走を続けた末の解散でした。
レスポールを弾くギタリストから…
20日程してLINEに解散したバンドメンバーから連絡が入りました。解散したバンドに一番最後に加入したジェフ・ベック好きのギタリストkさんからでした。kさんはどちらかと言えばウエストコースト系の音楽よりも英国系の音楽が似合うタイプのギタリスト。音やフレーズも軽めのウエストコースト・ロックとは異なり、ギブソンのゴールドトップ・レスポートでディストーション強めの音楽を好むタイプだと私は認識していました。
そんなkさんから、ジェフ・ベックをやりたいので手伝ってもらえないかという依頼でした。
どの辺りのジェフ・ベックかと聞けば『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイヤード』『ライブ・ワイヤー』の3枚くらいの範囲で考えているとの返事。3枚とも私の好きなアルバムです。私はkさんの提案に乗ることにしました。
この時代のベックを支えていた鍵盤奏者はマックス・ミドルトンとヤン・ハマー。
ヤン・ハマーはマハビシュヌ・オーケストラ時代からの大ファンです。
シンセサイザーを趣味にしている私はギターの様に弾きまくるヤン・ハマーのシンセサイザーが大好きでした。
ヤン・ハマーは「特捜刑事マイアミヴァイス」のサントラ盤を制作したチェコ人の作曲家でありキーボードプレイヤーでグラミーも受賞しています。特にシンセサイザーを用いてのギターライクな演奏で名を馳せました。ハマーはシンセサイザーでギターを弾く?名手なのです。
大学生の頃、ジョン・マフラグリン率いるマハビシュヌ・オーケストラのライブ盤『虚無からの脱出』でのヤン・ハマーの音を聴きまくりました。
当時、私の所有していたのはローランドのモノフォニックシンセサイザーSH-5でハマーが使用していたのはミニモーグ・シンセサイーザー。プロ御用達のシンセサイザーです。当時のミニモーグは63万円と高価で私が手を出せる価格ではありませんでした。ハマーの音は出せる筈もなく、技術的にもマハビシュヌ・オーケストラは私にはハードルが高すぎました。
< ミニモーグ・シンセサイザー >
とりあえず私はkさんからのリクエスト曲である「フリーウェイ・ジャム」が収録されているジェフ・ベックの『ライブ・ワイヤー』をもう1度聴きなおすことにしました。大学生の頃よりは音楽的理解力は高くはなっているものの、私の所有するシンセサイザーでヤン・ハマーの様な音が出せるのかどうか…全く定かではありません。
■ ジェフ・ベック『ライブ・ワイヤー』(1977年)
実際にこのアルバムの音を聴いた感想はヤン・ハマーのシンセサイザーには以外とエフェクター(テープエコー)が深くかかっているということでした。当時はデジタル・ディレイやデジタル・リバーブ等の機材はなく、私の記憶でハマーはローランドのテープエコー・マシン、「RE-201スペースエコー」を使用していた筈です。
●ローランドRE-201 出典:ウィキペディア
●テープエコー内部 出典:ウィキペディア
この機材はエコーマシンの名器であり、多くのプロが使用していました。現在では当時のディレイタイムの長いエコーをライブなどでは使うことは少なくなっていますが当時はこれがデフォルトだったのかもしれません。ジェフ・ベックにもヤン・ハマーと同様なタイムの長いエコーがかけられています。
ハマーはこのタイムの長いエコーをギターソロに近づける1つのテクニックとして捉えていたふしがあります。短いフレーズを弾いた直後に間髪入れず追いかけてくるエコー音がいかにも本物のギターソロを聴いているかのように錯覚するからです。案外、ハマーはこの辺りの音作りも確信的に行っていたのかもしれません。
『ライブ・ワイヤー』以降のジェフ・ベックとヤン・ハマーのライブ動画を見るとディレイタイムもそれほど長くはなく、トーター(肩掛け型シンセサイザイー)での演奏は殆どギターかどうかを聴き分けることさえできなくなっています。
アルバム『ライブ・ワイヤー』ではシンセサイザー・ソロとギターソロを聞き分けることができ、ハマーのシンセの妙味を認識することができましたが、しかしシンセソロがギターと全く同じになってしまったら案外「つまらない」という感覚を持ちました。
ギターそっくりに弾いたシンセサイザー・ソロが面白かったのであって、ギターと同じならCDで聴いてもあまり意味がありません。シンセサイザーの生音にたっぷりのエコーがかかり、ギターとは異なるツヤツヤ、テカテカとしたシンセ音が良かったのに…とおかしな気持ちになりました(笑)。
ということでヤン・ハマーのシンセサイザー音をコピーするにあたり、シンセにかけるエフェクトはディレイタイム長めのディレイをかけることに決まりました。
Roland RE-201 Space Echoのサウンドをかつてないレベルで再現した後継機!
⇒ BOSS ( ボス ) / RE-202 Space Echo
⇒ BOSS ( ボス ) / RE-2 Space Echo
次回はいよいよシンセサイザー実機を使った音作り編です。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ヤン・ハマー、ジェフ・ベック
- アルバム:『ライブ・ワイヤー』
- 曲名:「フリーウェイ・ジャム」
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