はじめに
こんにちは。
最初に断っておくと、筆者はエンジニアでもなければ、アナログ環境でミックスをしたこともありません。よって、アナログミックスの何たるかは知るよしもありません。が、DTMerであれば「このプラグインでアナログ感を足して……」とか「アナログならではの倍音が……」と感慨深く呟いてみたいものなのです!
そんな個人的見解はさておき、今回はアナログミックスの雰囲気が手軽に味わえる、コンソール・プラグインを紹介していこうと思います。
コンソール・プラグインとは
レコーディングスタジオにある、こんな感じの機械を見たことはありますか?これがミキシングコンソールです。
これは、音の入出力や音量・音質調整などを行う装置です。ご覧のようなアナログ環境では、実機のコンソールを使ってミックスをするわけです。
一方で、普通のDTMerはこのような機材を持っておらず、DAW内のミキサーで処理をしています。デジタルのミキサーは、音がクリアで利便性も高い反面、「何か物足りない……」と感じる人もいるようです。
そこで便利なのが、実機のコンソールを再現して作られた「コンソール(あるいはチャンネルストリップ)・プラグイン」。これを使うことで、アナログの歪みやノイズを足し、サウンドに色付けをすることができるんです。
製品紹介
ではでは、コンソール・プラグインの紹介に移りましょう。この記事では、筆者が実際に使用したことのある製品のみを取り上げています。
Waves NLS Non-Linear Summer
アナログコンソールによる「歪み」を与えることを目的として作られたプラグイン。コントロールできるのは主に歪みと音量だけというシンプルさです。これを使うことで、擬似的にサミングを行うことができるというわけです。
Spike、Mike、Nevoという3つのモードは、それぞれSSL 4000G、EMI TG12345 Mk.IV、Neveのヘッドアンプをモデリングしています。
プラグインはBussとChannelに分かれており、Bussでは各Channelのパラメーターを制御することができます。
筆者の好みはSpike、つまりSSLのモデリングです。
サウンドハウスではこちらのバンドルにてお手頃価格で入手できます。
WAVES ( ウェーブス ) / Morgan Page EMP Toolbox ダウンロード納品
Waves Kramer HLS Channel
またまたWavesから、「Helios」というコンソールのEQとプリアンプを再現したプラグインです。
決して器用なEQではありませんが、サウンドの方向性を明確にするうえでは最善の選択肢となり得ます。
筆者はギターやベースに使うことが多いのですが、HLSは低域のカットとブーストが同時に行えません。そのためHLSでは音作りのためのブーストに徹し、後段にデジタルEQを挿すことで不要な帯域の処理を行っています。
サウンドハウスでは本製品を含むプラグインバンドル「HORIZON」を取り扱っています。
WAVES ( ウェーブス ) / Horizon ホライズン 簡易パッケージ納品
Brainworx bx_console Focusrite SC
Plugin Alliance ( プラグイン・アライアンス ) / Brainworx bx_console Focusrite SC ダウンロード納品
真っ赤なオーディオインターフェイスでお馴染みのFocusrite。その伝説的なコンソールをモデリングしたチャンネルストリップ・プラグインです。コンプレッサー、ゲート、ディエッサー/エキサイター、イコライザーが1つのプラグイン内で使用できます。
本製品をはじめとするbx_consoleシリーズには、「TMT」という技術が使われています。これはアナログコンソールの1チャンネルごとにモデリングし、その微細な違いまでソフトウェアに落とし込むことで、なんと72ものチャンネルを切り替えられるという発明なんです!
筆者はこの機能の恩恵を受けるべく、単一のトラックだけでなく、バスにも挿してまとめ役として活用しています。
PreSonus Console Shaper
最後は少し変わり種の紹介です。気鋭のDAW、Studio One付属の「Console Shaper」は、アナログ風味を足すのではなく、ミキサーの挙動をアナログチックに変えてしまう機能です!
Driveつまみは歪みを、Noiseつまみはノイズをコントロールします。
Crosstalkはチャンネル同士の音の混ざり具合を調整します。
DAW内のミックスでは、1つのチャンネルからはそのチャンネルの音しか聞こえません。しかし、アナログのミキサーではそこに他のチャンネルの音まで混ざってしまうんです。オーディオ機器としては致命的な欠陥かもしれませんが、これが結果的に「アナログ感」を感じさせる要素になっていることも確か。
ともかく、上記のようにミキサー自体を別物に交換してしまう機能ですから、ミックスの終盤で味付けのために使おうとすると、音量バランスが破綻しかねません。アレンジやミックスの初めから使うようにしてくださいね。
PRESONUS ( プレソナス ) / Studio One 6 Professional ダウンロード納品
おわりに
今回の記事の中では幾度となく「アナログ感」という言葉を使ってきました。しかし正直なところ、筆者は「アナログっぽいかどうか」に大したこだわりはありませんし、アナログライクな音が絶対的に良い音だとも思いません。デジタルでもアナログでも、自分が好きだと思えば良いのです。
ただし、私たちがこれまで聴いて育ってきた音楽は、アナログ環境で制作されたものがほとんど。聴き慣れたその音が良い音の基準になっているだろうことは想像に難くありません。
ですから「何か物足りない」と思ったそのとき、助けになってくれるのはアナログコンソールのサウンドかもしれないのです。
ということで、今回はミックスコンソールをエミュレートしたプラグインについて紹介しました。ミックスで行き詰まったときには、一度助けを求めてはいかがでしょうか。
今回もありがとうございました。
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