通常のモニタースピーカーでカバーできない超低域を再生するための追加スピーカーである、サブウーハー。近年は低音の作り込みが特に重視されるようになり、サブウーハーの注目度、必要性が上昇しているように感じられます。
キャリブレーション機能と4インチウーハーながらも優れた音質で話題のNEUMANN KH 80 DSPは筆者も導入しているのですが、KH 80 DSPを含め、NEUMANN KHシリーズで使用できるサブウーハー、KH 750 DSPという製品があります。大型製品でもあるためなかなか見る機会も無いでしょうから、気になっている人も多いはず。KH 750 DSPがどのような製品なのか、同製品のキャリブレーション機能を有効にするために使用するMA 1測定用マイクとあわせてレビューしてみたいと思います。
NEUMANN ( ノイマン ) / Monitor Alignment Kit 1 MA1 + KH750 DSP D G

また、サウンドハウスではNEUMANNのデモブースが完成しましたため、KH 80 DSPだけでなくKH 750 DSPも体験できるようになっています。デモブースの様子もあわせてお伝えします。
汎用性の高い10インチサブウーハー
KH 750 DSPは様々な接続モード、入出力端子を備えることで様々な環境に対応できる10インチのユニットを備えたサブウーハーです。もちろん他社スピーカーとも接続可能ではありますが、基本的にはKHシリーズとの組み合わせでさらなる効果を生み出すよう設計されています。
KH 750 DSPにもKH 80 DSPの優れた低域再生能力を支えているロングスロー・バスドライバーやELFF™ (Extremely Linear Force Factor)などの技術が投入され、密度と伸びのある低域再生を実現。256Wのパワーアンプでドライブされ、16Hz〜800Hz(+/-6dB)、18Hz〜750Hz(+/-3dB)という周波数を持っています。
写真では伝わりにくいのですがしっかりとしたエンクロージャーは重厚であり、サイズはH383 x W330 x D383mm、19.5kgの重量があります。導入時に唯一気にするべきはそのサイズと重量でしょう。写真で見るよりも大型の、自宅というよりはスタジオ環境にマッチするサイズと重さがあります。自宅導入の場合は届いてみたら思いの外大きいということになりかねないので、サイズと置き場所をよく吟味した方が良いでしょう。もちろんこのサイズと重さによって先述の密度感のある低音が生み出されることは言うまでもありません。

<堅牢な木製キャビネットをもつKH 750 DSP>
豊富な入出力も特筆すべき仕様で、アナログステレオ入出力だけでなくBNCのデジタル入出力も備えており、AES3とS/P DIFフォーマットに対応しています。入力される信号や使い方にあわせて4つの動作モードから選択することができるため、サブウーハーが必要なほとんどの環境にすぐに対応することができるでしょう。
また、最大の特徴はモデル名にも示されている通りDSPを搭載していることにあります。DSPの搭載によりDSP非搭載のサブウーハーには無い音質調整機能を実現している他、後述のキャリブレーション機能を使うことができるのです。

<豊富な入出力とモード切り替えで様々なシステムに対応>
自宅での豊かな低音再生を実現するKH 80 DSP + KH 750 DSP + MA 1システム
一般的なサブウーハーとしても優れたパフォーマンスを発揮するKH 750 DSPですが、NEUMANN KHシリーズのモニタースピーカーとの組み合わせではさらに高いパフォーマンスを発揮します。まずはNEUMANN KH 80 DSPとの組み合わせを紹介しましょう。
KH 80 DSPとの組み合わせにおいては、左右のKH 80 DSPとKH 750 DSP、すべてのモデルがDSPとネットワーク入力を備えています。これら3台のスピーカーとPCをイーサネットハブを経由してLAN接続し、MA 1測定用マイク(別売)を使用することでキャリブレーション機能が使えるようになります。

<KH 80 DSPの超低域をKH 750 DSPで補完する>
キャリブレーション機能とは、専用ソフトウェアから出力される信号音をMA 1マイクを経由して測定し、入力された音から自動的に出力音を適切な特性に修正する機能です。KH 80 DSP単体でも使用できますが、KH 80 DSPとKH 750 DSPの組み合わせでも使用することができ、組み合わせの場合はサブウーハーを意識することなくひとつのスピーカーシステムとしてキャリブレーションを行うことができます。
3つのスピーカーをひとつのシステムとして測定、調整を行うため、そのつながりの良さは特筆すべきものがあります。単純にサブウーハーを追加したシステムでは低域だけがブーミーになったり、低域だけが別の音のように聞こえたりすることがありますが、KH 80 DSP + KH 750 DSPの場合はサブウーハーの存在を感じさせず、KH 80 DSPの低域再生能力が向上したように聞こえてきます。
とはいうものの、KH 80 DSP自体が4インチウーハーのモデルですので、スタジオなど部屋のサイズが大きい場所ではややパワー不足を感じるかもしれません。このような場合は、KH 750 DSPと他のNEUMANNモニタースピーカーを組み合わせることで、DSP非搭載のNEUMANNモニタースピーカーでもキャリブレーション機能を使うことができるようになります。
スタジオでラージモニターのようなワイドなサウンドを実現するNEUMANNモニタースピーカー + KH 750 DSP + MA 1システム
KH 750 DSPは、KH 120 / KH 310 / KH 420の3機種に対応。これらのスピーカーとKH 750 DSPのOUTPUTをアナログ接続することで、KH 120 / KH 310 / KH 420でもMA 1を使用したキャリブレーション機能が有効になります。この場合はPCとKH 750 DSPをLANで接続し、PCの専用ソフトウェア経由でKH 750 DSPをコントロール、信号音の出力や計測を行います。

<KH 310とKH 750 DSPの組み合わせでキャリブレーションを実現>
以降のキャリブレーションの方法などはKH 80 DSP + KH 750 DSP使用時と変わらず、専用ソフトウェアの指示に従って計測を進めるだけで自動的に結果が表示され、補正が行われます。補正後に手動で調整を行うことも可能ですので、求める音の方向性や制作の種類にあわせて調整を行うと良いでしょう。
サブウーハー導入によるメリットは超低域が再生可能になることよりもむしろ、余裕のある低域再生が実現できることにあります。低域が聞こえるようにスピーカーを鳴らすと、「頑張っている」感じがするものです。サブウーハーを導入した場合は頑張らずとも低音が聞こえるので、大音量よりも小〜中音量でそのメリットを感じることができるでしょう。

<KH 120とKH 750 DSPの組み合わせはプロジェクトスタジオに最適>
KH 750 DSPについて紹介してきました。サブウーハーであるため、もちろん他のスピーカーと組み合わせて使用するものですが、KH 750 DSPを導入するのであればぜひキャリブレーション機能を使用して頂きたいところです。つまりはKH 750 DSPを導入するのであればMA 1をセットで考えて頂く方が、結果的に高い満足度が得られると思います。セットになった製品も用意されており、KH 80 DSP + KH 750 DSP + MA 1のセットが「Monitor Alignment Kit 3」、KH 750 DSP + MA 1のセット(KH 120 / KH 310 / KH 420用)が「Monitor Alignment Kit 1」という名称です。いずれにせよ大型の製品ですから、可能であればサウンドハウスのNEUMANN デモルームで一度確認頂くのが良いと思います。衝撃のNEUMANNサウンドを体感してみてください。

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