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ライブを成功させる準備術 アマチュアバンド向けセットリスト作成の基本

2025-09-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音響機材, 音楽全般

ライブハウスでの演奏は、軽音サークルに所属している学生の方や、趣味でバンド活動をしている方にとって特別なイベントです。普段のスタジオ練習とは違い、照明・音響スタッフ、他の出演者、お客さんなど多くの人が関わる場だからこそ、準備の丁寧さが本番の出来に直結します。
その中でも、ライブを円滑に進めるために欠かせないのが 「セットリスト」と「セッティング図」 です。これらは単に自分たちのためだけではなく、PA(音響スタッフ)や照明スタッフがリハーサルや本番で正確に対応するための大切な資料になります。
私自身、10年近く学生向けライブイベントのスタッフをしてきましたが、多くのアマチュアバンドがこの部分を疎かにしています。結果としてリハーサルが押したり、本番でトラブルが起きたりすることも少なくありません。
そこで今回は、ライブ出演経験の浅いアマチュアバンド向けに、セットリストとセッティング図の書き方を具体的に解説していきます。

セットリストの基本構成

ライブハウスでは、事前に用紙を渡され、その中に必要事項を記入する形式が一般的です。事前にメールでフォーマットが送られてくる場合もあれば、当日リハーサル前に手渡されることもあります。

記入すべき主な項目は以下のとおりです。

  1. ① セッティング図
  2. ② 持ち込み機材
  3. ③ メンバー紹介
  4. ④ セットリスト(曲順)
  5. ⑤ PAへの要望

順番に詳しく見ていきましょう。

① セッティング図

使用する機材の配置やメンバーの立ち位置を示す図です。スタッフにとって最も重要な情報のひとつなので、省略せずに必ず記入しましょう。

セッティング図にはメンバーの立ち位置、アンプやドラムセットの配置を書きます。

  • ギターが複数いる場合はアンプの機種も書くと分かりやすい
  • ドラムは可能ならタムの数やシンバルのサイズも記入
  • マイクは丸に矢印をつけた記号で表すのが一般的

きちんと描かれたセッティング図は、リハーサル時間の短縮に直結します。

② 持ち込み機材

バンド側で用意する機材があればここに記載します。代表的な例をパート別に挙げます。

  • Vo … 自前のマイクを使用する場合
  • Gt … アンプやペダルボードを持ち込む場合
  • Ba … アンプやDIを持参する場合
  • Dr … 自前のスネア、ツインペダル、追加シンバルなど
  • その他 … MTRやPCなど同期再生機材

持ち込み機材をきちんと書いておくことで、スタッフが事前に準備でき、セッティング時間を短縮できます。
ライブハウス側の機材をレンタルして使用したい場合は、その旨も書いておきましょう。

③ メンバー紹介

各メンバーのパートと名前を書きます。漢字よりもカタカナ表記が一般的です。本名でもステージネームでも構いません。

④ セットリスト(曲順)

最も重要かつ、多くのアマチュアバンドがつまずくポイントです。書き方の基本は以下のとおりです。

1. 曲名

カバー曲の場合は アーティスト名も必ず記入 してください。PAや照明スタッフがその曲を知っていれば、雰囲気に合わせた調整をしてくれる可能性もあります。
オリジナル曲の場合は「オリジナル」と注記すると親切です。また、入場SEやMCの有無、エンディングもセットリストに書いておくと良いでしょう。

2. テンポ/曲調

PAや照明スタッフは初めて聴く曲を即座に理解して対応しなければなりません。
BPMの記入を求められるライブハウスもあるので、演奏楽曲のテンポは事前に把握しておいた方が良いでしょう。

3. PA・照明のイメージ

多くのバンドがここを空欄にしてしまいますが、非常にもったいないです。個人的に書いておいた方が良い情報をまとめてみました。

  • コーラスの有無
  • ギターソロの担当(2本いる場合は特に)
  • アコギへの持ち替えがあるか
  • 楽曲の雰囲気や色のイメージ
  • 同期音源の有無

過度に細かく書いても対応できないことが多いため、シンプルにまとめるのがベターです。

⑤ バンドからPAへの要望

ライブ全体を通してお願いしたいことがあればここに記載します。

  • Gtの音をアンプからではなくラインで出したい
  • ボーカルのリバーブを強めにしてほしい
  • 同期音源の使用有無
  • 全体的な音像のイメージ(明るめ/重厚など)

これを記入しておくだけで、リハーサルの効率が格段に上がります。

セットリスト・セッティング図の変更について

一度提出した後に変更したい場合は、必ずスタッフに伝えてください。小さな修正なら対応可能ですが、大幅な変更はリハーサルの遅れにつながり、他の出演者にも迷惑がかかります。 また、セットリストに書いていないことを本番で突然やるのはトラブルの原因になります。PAや照明は曲ごとに準備しているため、いきなりの変更には対応できない場合が多いのです。思いつきの行動は避けましょう。

SE(入場曲・効果音)の渡し方について

セットリストに「SE」と記載する場合、その音源の渡し方にも注意が必要です。意外と軽視されがちですが、これを適当にしてしまうと本番でのトラブルにつながりかねません。
基本的には CDで渡すのが最も確実 です。ライブハウスによってはPCに取り込んで再生する場合もありますが、CDであれば確実に対応できる会場が多く、再生機材との相性問題も起こりにくいです。

また、ファイル形式は mp3 が推奨です。wav形式などでも対応できる場合はありますが、容量が大きく管理が面倒になることがあります。汎用性の高いmp3で用意しておくのが安心です。
避けたいのは、スマホや音楽プレイヤーから直接再生する方法 です。これは操作面でトラブルが起こりやすく、音量の急な変化や通知音の混入など、不測の事態につながるリスクがあります。特に学生ライブや対バンイベントのようにリハーサル時間が限られている現場では、スタッフ側も余計な確認作業が増えてしまいます。
したがって、SEを使う予定があるバンドは、必ずCDに焼いて持参するようにしましょう。念のため予備のディスクを用意しておくとさらに安心です。

筆者が学生時代やっていたバンドで使用したSEのCD
ジャケット面に説明書きを書いておくとわかりやすいです。

まとめ

ライブは演奏だけでなく、準備や段取りも含めて「ひとつの作品」です。セットリストやセッティング図を丁寧に作ることで、リハーサルや本番がスムーズに進み、演奏に集中できます。
上手なバンドはセットリストも分かりやすく綺麗です。ぜひ参考にしてみてください!


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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航平

千葉県出身。ギタリスト兼ベーシストとしてロックを中心に様々なジャンルを演奏するマルチプレイヤー。またDTMにも精通しており、ドラムプログラミングやBGM制作、カラオケ音源制作なども手掛ける。
Twitter https://twitter.com/ike_kohei
Instagram https://www.instagram.com/ike_kohei_gt/

 
 
 
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