それにしても暑い。
今年の夏はいかにも夏らしくて大変良い……などと、似合わぬセリフで始めたが、今月も何と製作記事はお預け。
大丈夫!!ちゃんと最後までやるから、どうか作りかけのバッファーはそっと机の片隅に置いておいてください。
2001年の3月夕方、国際フォーラムに向かっていた。
当時ENGLのカスタマーサポートエンジニアをしていた流れで、ある来日ミュージシャンのもとに機材を貸し出していた。
その来日ミュージシャンとはハードロック界の重鎮「Deep Purple」!そのギタリストであるスティーブ・モーズ氏。
ステージでの最終リハーサルの時間に合わせて機材のチェックに急いで向かった。
実際に使うのだろうか?という疑問が有った。
だって国際フォーラムの規模(中規模)で100W出力のスペシャルエディションモデルを2台と、たしかパワーボールだったかインベーダーだったかを2台貸し出し、さらにキャビネットも4発入りを4台持って行ったのだから。
そして、ステージに着いて驚いた。
最大限にアンプのポテンシャルを引き出す、見事なシステムが組まれていた。
Deep Purpleのギターサウンドは言わずもがな、オーバードライブサウンドがメインになるが、スティーブ・モーズ氏の足元に歪む様なエフェクターは一つも無かった。
代わりにあったものはアーニーボールのボリュームペダルが3つとベリンガーの簡易ミキサー、後はエコーマシーン。
もっと驚いたのはメインにしてあるENGLスペシャルエディションの4つあるモードのクリーンを選択していた事だ。
さあ、お待たせしました。
ここからが今回の核心である裏話だ。
歪みはクリーンチャンネルのゲインをフルアップ!
そして入力するギターの音量で歪みを増減するが、ストレートにギターの音をアンプに入れてもクリーンチャンネルだとやはり歪みづらい。
なので、ミキサーを通してアクティブのラインレベルまで音を大きくしてそれをアンプに入れる訳だ。
しかもAUXにエコーマシーンを接続しているので、かなり微妙なかかり具合まで自由自在だ。
その音たるや底鳴りのようなラウドな音で、ゲインがフルアップのためやたらとサスティーンが良い。
しばし聴きほれてしまった……弾いていたのはギターテクニシャンのおっさんだったが……。
途中でスティーブ・モーズ氏が現れたので色々と聞いてみたが、本人はリハーサルでは一切ギターを弾かない。いきなり本番までアンプからの出音もチェックしない。
さすがに大丈夫なのかな?と心配したが、スティーブ曰く
「今までダメだった事ないから……多分大丈夫っしょ?」……おいおい。
ステージサイドのすぐ裏にはさっきのギターテクニシャンが、サブギターを含め5本ほど調整の終わったギターを作業台の上のスタンドに立ててある。
いきなりのトラブルに瞬時に対応できるようにスタンバイしてあった。
ちなみに足元の3つのボリュームペダルはかなり複雑な接続にしてあり、1つはボリューム、もう一つはAUXバランサー、もう一つが不明だった……
考えてみれば、皆が最高と崇めるMarshall Plexyだって本来はクリーンな音の1ボリューム仕様だ。
※ここで「それは違う!Plexy は2ボリューム仕様だ」と思った人はまだまだ勉強が足りない。
アレは音質を変えたプリアンプを差し替えて使えるようにしてあるだけの、1ボリュームアンプを2個内蔵しているアンプと解釈するのが正しい。
インプットのリンク接続はMarshall が想定した使用方法ではないことを明言しておく。
ただ、当時のMarshall のエンジニアは、リンク接続で2つのボリュームを同時使用するやり方は中々良いアイデアだと言っていた。
今回のスティーブ・モーズ氏の使用方法も、同じクリーンなチャンネルに入れた音をフルにして出す自然でラウドでサスティーンの効いた音を狙っていたのだと思う。
どうかな?Deep Purpleのラウドなギターサウンドはクリーンチャンネル・フルアップの歪みというネタであった。
ではまた。
今度こそDIYブログに戻ります。