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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~涼しい!ブラジル音楽名盤レビュー!日本人ミュージシャンのサンバ、ボサノバⅣ~ その93

2022-09-21

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

ボサノバのJポップの担い手、南佳孝さん 第2巻

夏必聴!のサンバやボサノバ名盤、名曲を作曲家や演奏家などから検証するサンバ、ボサノバ大特集。
前回に続き、日本人のサンバやボサノバを素材に音楽制作をするミュージシャン、南佳孝さんの名曲の数々を取り上げます。

ブラジルと縁の深いシンガーソングライター

南佳孝さんは1950年、東京生まれのシンガーソングライター。小学生の頃より家族の影響でスタンダードナンバーなどを聴いていたという。こういった環境が現在の南さんのベースを作っていると思われる。
1973年に松本隆プロデュースにより「摩天楼のヒロイン」でデビュー。アルバム「摩天楼のヒロイン」のコンセプトは「ダンディズム」だった。現在もこの「ダンディズム」というテーマは継承され、洗練された南流東京サウンドを世に問うている。
その南流サウンドの底流に流れているのがブラジル由来のサンバやボサノバなど、ラテン系サウンド。複雑なテンションコードを含むハーモニーとメロディが一体化したブラジルサウンドは南さんのテーマである「ダンディズム」をより鮮やかなものにしている。

■ 推薦アルバム:南佳孝『ROMANTICO』(2004年)

2004年にリリースした南佳孝の夏を意識したオリジナルアルバム。作詞には 松本隆、小林夏海らを起用。 村上"ポンタ"秀一、佐山雅弘、松原正樹、今剛、土方隆行、高水健司といったファーストコール達が参加している。
楽曲もサルサやボサノバなどラテンを素材にした好曲が多い。

推薦曲:「マリア、マリア」

サルサの味わい深いラテンな曲。サビのメロディが夏を感じさせ、オルケスタ・デル・ソルのメンバーによるコーラスワークが光っている。

推薦曲:「雨の魚」

南佳孝お得意のボサノバの佳曲。くぐもった南さんの声が聴こえた刹那、ボサノバという素材が南佳孝印となって現出する。
マイナーなAメロからメジャーキーに変化するサビへの展開で南印のポップさが炸裂。この曲の一番の聴きどころはサビ終了後のキメ。ボサノバではあまり聞かないキメであるが、奇妙なフレーズ(失礼!)が妙に耳に残る。このメロディは一度聴いたら忘れることができない素敵なメロディで、今も私の耳で鳴り続けています(笑)。

■ 推薦アルバム:南佳孝with Rio Novo『ボッサ・アレグレ』(2006年)

Rio Novoは新川博(keys)吉田和雄(ds)渡辺幹男(Ag)らによるボサノバユニット。ブラジル音楽に精通したミュージシャンによる演奏はそつがなく、こなれた印象を持つ。 吉田和雄さんはブラジル音楽をベースにしたバンド、「スピック&スパン」のドラマーで、この後に紹介するアルバム、「ボクのこころ」でもドラムを叩いている。新川博さんは中原めいこさんの「君たちキウイ、パパイヤ、マンゴーだね」のアレンジを務め、名を馳せたキーボーディストでアレンジャー。 ラテン系音楽を演奏させれば折り紙付きのメンバーによる演奏はブラジル熱帯雨林のムードとカラッとしたラテンムードがミックスし、「日本夏的音楽」の演出を見事に果たしている。

推薦曲:「ガチョウのサンバ」

ジョアン・ジルベルトの重要レパートリー、「オ・パト」。別名、ガチョウのサンバを南さんがトライしている。南流「ガチョウのサンバ」、聴く価値ありです。

推薦曲:「ソバカスのある少女」

ティンパンアレイの名曲。作曲者はギタリストの鈴木茂さん。ティンパン流ボサノバ曲が南佳孝流に仕上がっている。
南さんはこの楽曲が好みらしく、前作「ROMANTICO」でもカバー。角松敏生さんとのデュエットもレコーディングしている。

■ 推薦アルバム:南佳孝『ボクのこころ~MEU CORACAO~』(2008年)

南佳孝、デビュー35周年を記念してリリースされたアルバム。
自身の過去の名曲をブラジルに渡り、新たなアレンジで仕上げた。アレンジャーにはアントニオ・カルロス・ジョビンの息子、パウロ・ジョビン(G)や孫のダニエル・ジョビ ン(Pf)、マリオ・アジネー(G)など、ブラジルの腕利き達が顔を揃える。
「モンロー・ウォーク」「日付変更線」「夜間飛行」「プールサイド」など、ブラジル由来の名曲達にオリジナルとは異なる化粧を施している。全体的には奇をてらわないオーソドックスなアレンジがベースで、原曲をリスペクトした形になっている。

推薦曲:「夜間飛行・日付変更線」

マリオ・アジネーによるアレンジ。マリオはアントニオ・カルロス・ジョビンと親交があるミュージシャンで、ジョビンを題材にしたアルバムを多くリリースしている。ブラスアレンジの才能に長け、この曲でもフルートとフリューゲル・ホーンのアンサンブルが名曲の底辺を支えている。ドラムはブラジル音楽とブラジル人脈に精通した「スピック&スパン」のドラマー、吉田和雄さんが叩いている。

推薦曲:「シェガ・ジ・サウダージ」

アレンジはアントニオ・カルロス・ジョビンの孫であるピアニスト、ダニエル・ジョビンが務める。
ギターのカッティングと同様なバッキングをアコースティック・ピアノで演奏するという珍しいアレンジ。
驚いたのはジョビンの孫であるダニエル・ジョビンの歌唱だ。まるでアントニオ・カルロス・ジョビンが歌っていると錯覚するほど、その声はそっくりでジョビン降臨を思わせる。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:南佳孝、新川博、吉田和雄、マリオ・アジネー、ダニエル・ジョビン
  • アルバム:「ROMANTICO」「ボッサ・アレグレ」「ボクのこころ~MEU CORACAO~」
  • 曲名:「マリア、マリア」「雨の魚」「ガチョウのサンバ」「ソバカスのある少女」「夜間飛行・日付変更線」「シェガ・ジ・サウダージ」

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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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