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EQ(イコライジング)とは

2026-07-17

テーマ:PA

PA、レコーディング、配信、動画制作など、音を扱う現場で必ずと言っていいほど登場するのが「EQ(イコライザー)」です。
「低音を強くすれば迫力が出る」「高音を上げれば音がきれいになる」
一見そう思われがちですが、実際には不要な帯域を整理した方が、より迫力や明瞭感が得られることも少なくありません。
つまり、EQはただ音を派手にするための機能ではなく、不要な音を整理し、必要な音を際立たせることで、楽器や声をより自然で聴きやすくするためのツールです。
例えば、ライブでボーカルが演奏に埋もれて聞こえないときや、配信で声がこもって聞こえるときも、EQを適切に調整することで驚くほど改善することがあります。
一方で、使い方を間違えると、音が不自然になったり、ノイズやハウリングの原因になったりすることもあるため、基本を理解しておくことが大切です。
この記事では、EQの基本的な仕組みから周波数帯域ごとの特徴、HPF(ハイパスフィルター)の役割、ハウリング対策、そして初心者が知っておきたい「ブーストよりカット」という考え方まで、実際のPA現場で役立つポイントを交えながら分かりやすく解説します。

EQ(イコライザー)とは?

EQとは、音声信号の周波数特性を調整する機能、またはそのための機器です。
私たちが普段聞いている音は、20Hz程度の低音から20kHz付近の高音まで、さまざまな周波数が組み合わさってできています。
EQでは、

  • 低音を少し抑える
  • 中音域を強調して声を聞き取りやすくする
  • 高音域を調整して明るさや抜けを加える

など、音色やバランスをある程度自由にコントロールできます。
例えば、

  • ボーカルをもっと前に出したい
  • ギターのこもりを改善したい
  • キックに迫力を出したい
  • ライブでハウリングを抑えたい

このような場面でEQは大きな力を発揮します。

音は「基音」と「倍音」でできている

EQを理解するうえで、少しだけ知っておきたいのが基音と倍音です。例えばピアノで「ド」の音を弾くと、実際には「ド」だけが鳴っているわけではありません。音程を決める基音に加えて、その何倍もの周波数を持つ倍音が同時に鳴っています。倍音のバランスは音色を決める大きな要素です。
だからこそ、EQは単純に「低音を上げる」「高音を上げる」だけではなく、不要な帯域を整理して音同士の住み分けを作ることが重要になります。

EQの役割

EQの役割は大きく分けると3つあります。

① 不要な音を取り除く

空調の低いノイズや振動音、マイクスタンドを触った音など、人間があまり必要としない帯域をカットできます。
特にライブPAでは、不要な低域を整理するだけでも音の明瞭度が大きく向上します。

② 音を聞き取りやすくする

ボーカルが埋もれる場合は中高域を少し持ち上げたり、ギターのこもりを抑えることで、それぞれの楽器がはっきり聞こえるようになります。
また、同じ周波数帯域に複数の楽器が集中すると、お互いが邪魔をして音が濁ります。 例えば、

  • キックとベース
  • ギターとキーボード
  • ボーカルとシンセ

などと被りが多い周波数帯域をEQで整理することで自然で聴きやすいミックスになります。

③音のキャラクターを作る

「温かい音」「明るい音」「抜けの良い音」といった印象もEQで大きく変化します。
ただし、必要以上にブーストやカットすると不自然になったりノイズが目立ったりするため注意が必要です。

周波数帯域ごとの特徴

人間が聞くことのできる音は約20Hz〜20kHzと言われており、それぞれの帯域には特徴があります。

周波数 特徴
20〜40Hz 超低音。体で感じる帯域
60〜250Hz 低音の太さ・迫力
250〜500Hz こもり・濁りが出やすい帯域
500Hz〜2kHz 音の芯・存在感
2〜4kHz 聞き取りやすさ・抜け
4〜6kHz アタック感・輪郭
10〜20kHz 空気感・輝き
EQの仕組み

HPF(ローカット)の設定

EQで最初に行いたいのがHPF(High Pass Filter)です。HPFは設定した周波数より低い音をカットするフィルターで、「ローカット」とも呼ばれます。 例えば

  • ボーカル
  • ギター
  • シンバル
  • キーボード

などは極端な低音を必要としません。不要な低域を整理することで、音の輪郭が明瞭になり、低域のハウリングや不要な振動の影響も抑えやすくなります。 一方で、

  • キック
  • ベース

等低音が重要な楽器は不用意にカットしないよう注意しましょう。

EQとハウリングの関係

ライブや会議、講演会などで「キーン」という大きな音が突然鳴った経験はありませんか?これはハウリング(フィードバック)と呼ばれる現象です。
ハウリングは、スピーカーから出た音をマイクが再び拾い、その音が何度も増幅されることで発生します。
特定の周波数だけがループして増幅されるため、不快な高音や低い唸り音として聞こえます。
EQは音質を整えるだけでなく、ハウリングを抑えるためにも欠かせないツールです。
例えば、・・・

  • ボーカルでは80〜100Hz付近を目安にHPFを設定することが多い
  • 不要な低域を整理する
  • ハウリングしている周波数だけをピンポイントで少しカットする

といった調整を行うことで、ハウリングが起こりにくくなります。ただし、大きくカットしすぎると本来の音質まで損なわれるため、Q(帯域幅)を狭く設定し、まずは1〜3dB程度から少しずつ調整してみましょう。

ハウリング(フィードバック)が起こりやすい帯域
周波数帯域 よくある症状・聴こえ方
125Hz前後 低く「ボーッ」と響く
250Hz前後 こもったような「モコモコ」
630Hz前後 鼻づまりのような「ムン」
1.6kHz前後 耳につく「ピーッ」
2.5k~4kHz 鋭い「キーン」
6k~8kHz 非常に高く「キィーーン」

会場やマイク、スピーカーによって異なりますが、PAではまずこのあたりの帯域を重点的に確認します。
ハウリングはEQだけでは防げません。
EQによる調整だけでなく、機材の配置やマイクの使い方も重要です。

  • マイクをスピーカーへ向けない
  • スピーカーをマイクより前方に設置する
  • マイクを口元に近づけて話す
  • 必要以上にマイクゲインを上げない

こうした基本を守るだけでも、ハウリングは大幅に起こりにくくなります。
また、オートフィードバックサプレッサー(AFS)を搭載したモデルもあり、検出したハウリング周波数を自動で抑制できるため、ライブや設備音響で大きな効果を発揮します。

〇 ワンポイントアドバイス
ハウリングが発生すると、ついマスター音量を下げる対応をしてしまいがちです。しかし、それでは会場全体の音量まで下がってしまいます。
まずはどの周波数がハウリングしているのかを特定し、その帯域だけを最小限カットすることを意識しましょう。
耳でハウリングの周波数を判断できるようになると、EQの使い方だけでなく、PAオペレーターとしてのスキルも大きく向上します。

EQは「足す」より「引く」

初心者が最もやってしまいがちなのが、「聞こえないから全部ブーストする」という調整です。しかし、実際の現場では「ブーストよりカット」が基本になります。例えば、ボーカルが聞こえない場合、ボーカルを6dB上げるよりも、ギターやキーボードの2〜4kHzを少し下げる方が自然に聞こえることが多くあります。ブーストを繰り返すと、ノイズやハウリングが発生しやすくなり、音が硬く聴こえにくくなります。
迷ったらまず不要な帯域を探してカットすることを意識してみましょう。

パラメトリックEQ(PEQ)とグラフィックEQ(GEQ)の違いとフィードバックサプレッサー

EQにはさまざまな種類がありますが、PAやレコーディングで特によく使われるのがパラメトリックEQ(PEQ)とグラフィックEQ(GEQ)です。

・パラメトリックEQ(PEQ)

パラメトリックEQは、調整したい周波数を自由に選び、細かく音を補正できるEQです。一般的には以下の3つを調整できます。

Frequency(周波数):どの帯域を調整するか
Gain(ゲイン):どれだけ増減させるか
Q(帯域幅):どのくらい狭い・広い範囲を調整するか

例えば、ボーカルの「250Hz付近だけが少しこもる」「3kHzだけ少し前に出したい」といった細かな調整に最適です。
多くのデジタルミキサーでは各入力チャンネルに4バンドPEQを搭載している機種があり、PAやレコーディングでは最も使用頻度の高いEQです。

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WARM AUDIO ( ウォームオーディオ ) / EQP-WA パラメトリック・イコライザー

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・グラフィックEQ(GEQ)

グラフィックEQは、あらかじめ決められた周波数ごとに音量を調整するEQです。31バンドタイプであれば、20Hz〜20kHzまでを細かく分割し、それぞれのフェーダーを上下させることで音質を調整します。フェーダーの形がそのまま周波数特性のグラフになることから、「グラフィックEQ」と呼ばれています。
ライブPAでは、

  • 会場全体の音質補正
  • スピーカーの音作り
  • ハウリング対策

など、システム全体の調整に使われることが多く、操作状況が一目で分かるのが大きなメリットです。

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dbx ( ディービーエックス ) / 231s グラフィック・イコライザー

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BEHRINGER ( ベリンガー ) / FBQ3102HD

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項目 PEQ GEQ
周波数 自由に設定できる 固定
Q(帯域幅) 調整できる 基本的に固定
調整の細かさ 非常に細かい 全体調整向き
主な用途 ボーカル・楽器ごとの音作り PAシステム全体・ハウリング対策

簡単に言えば、PEQは「楽器やボーカルを細かく調整するEQ」、GEQは「会場全体やスピーカーを整えるEQ」と考えると分かりやすいでしょう。
また、近年のデジタルミキサーでは、各チャンネルにはPEQ、メイン出力にはGEQやPEQを搭載し、用途に応じて使い分けられるモデルも多くあります。

・デジタルスピーカーマネージメントプロセッサー

デジタルスピーカーマネージメントプロセッサーは、PEQ・GEQ・クロスオーバー・ディレイ・リミッターなどを1台に搭載した音響機器です。ライブPAや設備音響ではスピーカーシステム全体の最適化に使用されます。

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BEHRINGER ( ベリンガー ) / DCX2496

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・フィードバックサプレッサー

フィードバックサプレッサーは、ハウリングが発生した周波数を自動で検出し、その帯域だけをピンポイントで抑制する音響機器です。
内部ではパラメトリックEQ(PEQ)のような狭い帯域のフィルター(ノッチフィルター)を使用し、問題となる周波数だけをカットすることで、音質への影響を最小限に抑えながらハウリングを防ぎます。
特にライブPAや会議、講演会など、マイクの本数が多くハウリングが発生しやすい環境では、大きな効果を発揮します。
ただし、フィードバックサプレッサーはハウリングを完全になくす魔法の機器ではありません。
スピーカーとマイクの位置関係やゲイン設定、適切なEQ調整など、基本的なシステムセッティングを行ったうえで補助的に使用することが重要です。

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dbx ( ディービーエックス ) / AFS2 フィードバック(ハウリング)サプレッサー

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BEHRINGER ( ベリンガー ) / FBQ2496

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・EQ搭載ミキサー

先ほど軽く触れましたが、現在では、アナログミキサーやデジタルミキサーの多くにEQが搭載されています。アナログミキサーでは、Low・Mid・Highの2~4バンドEQを搭載したモデルが一般的で、各帯域の音量を調整することで音作りを行います。中級機以上ではMidの周波数を変更できる「セミパラメトリックEQ」を搭載したモデルもあります。

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CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / AM802FX コンパクト・アナログミキサー

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MACKIE ( マッキー ) / Onyx12 アナログミキサー

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一方、デジタルミキサーでは、各チャンネルにパラメトリックEQ(PEQ)を搭載したモデルが多く、周波数・ゲイン・Q(帯域幅)を細かく設定できます。さらに、メイン出力やミックスバスにもPEQやGEQを備え、スピーカーの音質補正やハウリング対策まで1台で行える機種も増えています。ライブPA、レコーディング、配信など、用途に応じて柔軟な音作りができることから、現在ではデジタルミキサーの大きな魅力の一つとなっています。

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MACKIE ( マッキー ) / DLZ CREATOR 配信向けデジタルミキサー

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よくある失敗例

EQは便利なツールですが、使い方を間違えると音質を悪化させたり、ハウリングやノイズの原因になったりします。ここでは、初心者が特にやってしまいがちな失敗例をご紹介します。

① HPF(ローカット)を使わない

ボーカルやギターなど、超低域を必要としない音源でもHPFを使わずにミックスしてしまうケースがあります。
不要な低域が積み重なると、音がこもりやすくなり、ハウリングの原因にもなります。まずはHPFで不要な低域を整理することを意識しましょう。

② 一度に大きくEQを動かす

「思ったような音にならない」と感じて、±10dB以上の大きな調整をしてしまうのもよくある失敗です。
EQは1〜3dB程度の変化でも音の印象が変わります。
少しずつ調整し、耳で確認しながら進めることが大切です。

③ EQだけで解決しようとする

ハウリングや音の聞こえにくさは、EQだけが原因とは限りません。
マイクとスピーカーの位置関係や、ゲイン設定、マイクとの距離などを見直すだけで改善するケースも多くあります。

④ ソロで音作りをしてしまう

EQは一つの楽器だけでなく、アンサンブル全体のバランスを整えるためのものです。
ソロでは良い音に聞こえても、他の楽器と合わせると埋もれたり、逆に目立ちすぎたりすることがあります。
最終的には全体で聴きながら調整しましょう。

まとめ

EQ(イコライザー)は、音を派手に変えるための機能ではなく、不要な帯域を整理し、楽器や声をより自然で聴きやすくするための重要なツールです。
まずはHPF(ローカット)で不要な低域を整理し、必要に応じて周波数ごとの特徴を理解しながら少しずつ調整していきましょう。
また、迷ったときはEQをフラットに戻して「ブーストよりカット」を意識すると、自然でバランスの良いサウンドに近づけることができます。
さらに、パラメトリックEQ(PEQ)とグラフィックEQ(GEQ)の特徴や用途を理解して使い分けることで、ボーカルや楽器の音作りだけでなく、ハウリング対策や会場全体の音質改善にも役立ちます。
EQは一度で正解を見つけるものではありません。
少しずつ調整し、変化を耳で確認しながら経験を積むことが、理想のサウンドへの近道です。

中田 優斗

高校時代にRIJF2017へ行ったことをきっかけに、音楽の世界に興味を持ちました。 演奏は得意ではありませんが、裏方として支えることにやりがいを感じています。音楽には「支える楽しさ」で関わるタイプです。 気分転換には自然の中を歩くのがいちばん。大自然を感じる時間が何より好きです。

 
 
 
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