前回のブログでWittner Fine-Tune Pegsをやや苦労しながら取り付けました。この商品が気になっていらっしゃる方の関心事について、レポートしていきたいと思います。その前に簡単にWittner Fine-Tune Pegsのおさらいです。
Wittner Fine-Tune Pegsとは?
ドイツWittner社から発売されているバイオリン用(チェロ用もあり)交換用ペグです。素材はComposite材と表記されているいわばプラスティックの混合物です。金属と木材の中間的な質感で、硬い素材でできています。
WITTNER / ULTRA Finetune Peg VN 4/4-3/4 M
見た目は普通のペグと見分けるのが難しいほどですが、内部にはギヤが内蔵されていてチューニングの微調整がしやすいという優れものです。

上がFine-Tune Peg 下は普通のペグ(古い楽器から取り外したもの)
シャフトの途中のくぼんでいる部分が「可動域」=弦を巻く部分です。
では実際に弦を張っていきましょう。
あえて無銘の弦を張る

今回張った弦は、PLAYTECHのバイオリンにも標準でついてくるものと同等の「無銘のスチール弦」です。何故この弦?かというと、一般的にスチールの弦はペグだけでの調弦が難しく、それならばこのWittner Fine-Tune Pegsの実力を試すのにもってこいだと考えたからでした。
ペグへの弦の巻きつけ
弦を張る際は、Wittner Fine-Tune Pegsにあらかじめあいている穴に弦を通して、普通のペグと同じように巻きつけていきます。この穴に差し込んで巻き初めの弦が折れる箇所が鋭角になってストレスがかからないよう、鈍角に弦が張れるように差し込む方向を確認しましょう。

使用する弦がナイロンやガットの場合、巻きつける回数によってはシャフトにあいている穴のつまみから遠い方を選ぶ必要があります。
それでも可動域からはみ出してしまうような場合は、弦の先端の長さをカットして調整しましょう。

公式サイトより 弦の巻き始めに注意を促しています
弦を巻き付けて音程を上げていく
Wittner Fine-Tune Pegsには「可動域」と呼ばれる、内部のギヤと連結して実際に回る部分があります。

この範囲は決まっていて(画像の白く染まっている部分)、この範囲で弦を張る必要があります。この範囲から弦がはみ出すとチューニングに支障が出ます。
弦を巻きつけていく際、ギヤ式なのでペグを回す量は普通のバイオリンに比べてはるかに多いです。ペグワインダーを用意するとかなり楽です。
WITTNER ( ウィットナー ) / Peg Winder VN

弦を張り終えた様子
チューニングを行う~やはり楽!
弦を巻きつけ終わるといよいよチューニングに入ります。
全体を1音下げた状態から既定のピッチまで上げてチューニングします。
チューニングの様子を時間の計測も兼ねて動画におさめましたので、よろしければこちらからご視聴ください。
写り方を気にしながらの撮影だったのでもたついていますが、既定のピッチに上げるのにざっと約1分。微調整も含めて賞味1分40秒、アジャスターを用いずにスチール弦をチューニングするのにかかる時間としては好結果ではないかと思います。
次の画像は動画からのキャプチャと、各弦の操作でかかった大体の時間です

A線(G3からA4) 約17s

D線(C3からD3) 約7s

G線(F3からG3) 約13s

E線(D4からE5) 約24s
当初の予定は、普通のペグでチューニングした様子と比較のようにしたかったのですが、あまりに所要時間に差があり過ぎて比較自体がもはや意味がないと言えるほど、Fine TunePegsでの調弦は確かに楽です。普通のペグの1/3くらいの感覚です。
普通のペグでチューニングするのに慣れているとつい「ゆるみを止めるためにペグを押し込み」たくなります。しかし、このWittner Fine-Tune Pegsはそれをする必要がなく、しない方が構造的に安心です。
基本的にギターのペグ同様、つまみを回して音程を上げ下げすればチューニングは問題ないでしょう。
もちろん、駒の姿勢の確認、弦の巻きつけ具合の確認、弦自体の伸び、そうしたチェックポイントは通常のペグと同様に必要になります。
弾ける人からのコメント

サウンドハウスの商品動画でも大活躍のTくんに、実際に弾いてもらっての感想を伺いました。
Q.WittnerFine TuningPegs使ってみてどうお感じになりましたか?
◆ 滑らかに回りピタリと止まってくれるのはうれしい!
ペグの柔らかさ(固さ)は丁度良いという表現がぴったりだと思います。
もしこの滑らかさを普通のペグで実現しようと思うと、かなりの精度での加工と調整が必要になる事でしょう。仮に滑らかに動いてピタリと止まる調整が普通のペグでうまくいったとしても、この音程変化の緩やかさは普通のペグでは絶対に実現できません。
まるでアジャスターで調整するような精度でのチューニングが可能です。特にE線は、アジャスターが無くてもかなりの精度で合わせることが可能です。
◆ 安定感もかなりいい 響きも悪くない
このWittner Fine-Tune Pegsは、非可動域(つまりシャフトの外側)をペグボックスの穴に差し込んで止めているだけですが、弦の張力でペグ全体がゆるむと言ったこともなく、音程も安定していると思います。ペグの材質はテールピースなどで実績のあるWittnerのコンポジット材ですし、音響的には全く木材のペグと比べて遜色はないと思います。
Q.アジャスターは必要?
これは個人の判断になると思いますが、ペグでこの精度で調弦ができるのであれば、仮になくても困らないでしょう。併用しても楽かもしれませんね。
Tくんありがとうございました。
まとめ
決して安くはない価格ですが、もしお手持ちの楽器でチューニングにお悩みの方には、ご検討いただく価値が十分にあると思いました。やはりペグに不安があるのと無いのとでは、演奏への集中度合いも随分違うのではないでしょうか。
初心者の方でペグでの調弦がうまくできないからこのWittner Fine-Tune Pegs、というよりは、普通にペグが扱える中上級者の方にこそ試してみていただきたいパーツです。
近年A線にもスチールを用いた弦が一部のメジャーブランドで登場してきています。スチールの音色に大いに興味はあるけれど、A線にアジャスターを使わずに何とかしたい場合などは、このペグを試してみるのも一つの方法かもしれません。
WITTNER ( ウィットナー ) / ULTRA Finetune Peg VN 4/4-3/4 S
注意点もまとめ
取り付けに関しては専門の業者に依頼をする。ご自分でなさる場合は道具などを揃え、準備万端にしたうえで慎重に作業をすることをおすすめします。結果は自己責任となります。
取り付け段階ではペグ穴の加工が必要になるわけですから、ご自身の楽器にそうした手を加えることはしたくない、とお感じになる方は避けた方がいいでしょう。
安い楽器を買ってFine Tune Pegsを取り付けてみる!というのも良いアイデアだと思いませんか?
ここでサウンドハウスのお求めやすい楽器を紹介します。
PLAYTECH ( プレイテック ) / PVN244 バイオリン 4/4
PLAYTECH ( プレイテック ) / PVN344 バイオリン 4/4
バイオリンを買ってストレスなく楽しみたい。そんな願いのひとつが叶うパーツとして、Wittner Fine Tune Pegsお試しになってみてはいかがでしょうか。