先日、バンドで練習スタジオに行った際、ボーカルの人間がマイクを用意していて『音が出ない!このミキサーどこをどうすればいいの?!』と聞かれて、えーとこのミキサーはこういうのだからここ上げてここ上げてこのスイッチは……なんてやり取りがありました。考えてみるとこの手の話はよくあることで、特にボーカリストは日ごろアンプなどに触らないからか機械に疎い方が多いように感じます。
近年はDTMやネット配信などでミキサータイプのインターフェイスを触る機会も増えて特に若い世代の方々は割と慣れている方も増えてきているようにも思いますが、スタジオのトラブルで一番多いように思います。
音が出なくて適当にいじっていたら『キーーーン!!』と大音量でハウリングを起こして「うるせぇーーー!!」となった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
筆者自身は楽器屋や音楽スタジオでバイトしたりで覚えていきましたが、慣れていても初めて触るミキサーは機能をある程度把握するのに多少時間はかかるものではあります。
という訳で今回は、練習スタジオでのPAやミキサーの使い方にしぼって、できるだけわかりやすく基本的な簡単なところから解説していきたいと思います。
書いている内に長くなってしまったので何度かに分けて連載します。
まぁ一番早いのは店員さんを呼ぶことだったりしますがね!!!
1. 電源は入っているか?
当たり前ですが電源が入っていなければ音は出ません。『そんなんわかっとるわ!なめんなよ!』という声が聞こえてきそうですが、そもそも電源が入っていないことは割とありました。
ほとんどのミキサーはパワーONになっている場合にはLEDやエフェクトのディスプレイなどが点灯します。
例えばヤマハのMG16XUの場合

ここにありますね。
ベリンガーPMP4000の場合

このディスプレイが点灯します。
ここで電源が入っていない場合、電源スイッチはどこ??となることが多いですが、ミキサーの電源スイッチは多くの場合は上側にあります。


電源ケーブル周辺にあることが多いので探してみてください。
ちなみに例に挙げた2機種の大きな違いはわかりますか?
YAMAHA ( ヤマハ ) / MG16XU アナログミキサー 16チャンネル
BEHRINGER ( ベリンガー ) / PMP4000 EUROPOWER パワードミキサー
わかる方は一目瞭然でわかるはずです。
『MG16XUは普通のミキサーだけどPMP4000はパワードミキサーやないか!』と。
このツッコミの意味がわからない人も多くいると思います。
PAの基本としてどこかに”パワーアンプ”が入っていなければ大きな音は出ません。音の信号を大きいスピーカーで鳴らすにはパワーアンプで信号を大きくしないといけないので、
ミキサーが普通のミキサーだった場合、パワーアンプを入れる必要があるわけです。
スタジオに設置してあるPAには大きく分けて3つのパターンがあります。
パターン①
ミキサーからの信号をLとRでパワーアンプに送りレベルを上げてスピーカーに送るパターン

ミキサーの電源は入っていてもパワーアンプの電源が入っていなければ音は出ません。ミキサーは多くのスタジオではラックの一番上に設置されていることが多いので、下にパワーアンプがあるかどうかチェックする必要があります。
パターン②
パワードミキサーを使用しているパターンです。パワードミキサーというのはその名の通りミキサーとパワーアンプが一緒になっているミキサーです。

パターン①よりシンプルですね。この場合、電源はミキサーのみです。
多くのスタジオではこのパターンが多い気がします。野外イベントなどでよく見るポータブルPAなども多くはこの形です。
パターン③
ミキサーは普通のミキサーだがスピーカーがパワードスピーカーのパターン。
パワードスピーカーというのはその名の通りスピーカーにパワーアンプが内蔵されているスピーカーです。

正直このパターンはスタジオではあまり見ない気がします、スピーカーがパワードの場合LRの2台それぞれに電源が必要になります。
PAの基本セットはこの3つのパターンです
③で使用している電源が必要なスピーカーをパワードスピーカーと呼ぶのに対して、①と②で使用しているスピーカーはパッシブスピーカーと呼びます。
天井にスピーカーが吊るされているようなスピーカーの場合、基本的にパッシブスピーカーですので電源の確認の必要はありません。パワードスピーカーの方が重量は重くなるので吊るすことはほとんど無いです。
パターン②がスタジオでは多いのですが、最近は何故かパワードミキサーを製造しているメーカーが減ってきており、ゆくゆくは①か③のセットが増えていくかもしれません。
パターン①のように全て分かれている形はセッティングが多少複雑になりますが、どこかに故障が生じた場合に、その機械だけ交換すればよいというメリットもありますので一長一短といったところですね。
スタジオそれぞれ色々な事情で機材が選定され設置されています。
ということで、マイクの音が出ない時の説明のはずが今回は基本的なPAの説明になってしまいました、PAを知っている方からしたら「こんなの常識でしょ!」と思うかもしれませんが知らない人は知りません。
音楽をやっていく上で知っておいて損はない知識ですので皆さん覚えましょう。次回は基本的なPAの使い方など解説したいと思います。
続く!!