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ディズニーリゾートの音楽を理論の面から分析してみた~リビング・イン・カラー~

2023-10-25

テーマ:アーティスト&楽曲

実はサウンドハウスには隠れディズニーオタクがいっぱい居ます。はい、多分居ます。
昔のスタッフブログにもDオタを感じる記事がちらほらと……。

⇒ ディズニーリゾートの音楽を楽しむ ~東京ディズニーランド編~
⇒ ディズニーリゾートの音楽を楽しむ ~東京ディズニーシー編~

でも何も大義名分が無いんじゃオタク語りできないので、今回は無理やり音楽の分析に絡めてお話させていただこうと思います。

リビング・イン・カラー

何を隠そう、この記事を書いている今の東京ディズニーリゾートは40周年"ドリームゴーラウンド"のお祝いの真っ最中!!さらにディズニーも100周年ということで文字通りハピネスイヤーというわけですね!
100周年グッズも買い、40周年グッズも買い……いくら使わせるんだ……。
というわけで、リビング・イン・カラーはそんな東京ディズニーリゾート40周年"ドリームゴーラウンド"のテーマソングにあたります。私は、過去の周年記念曲に比べると穏やかな楽曲という印象を受けました。はてさて、この曲に隠された要素とは?

① オクターブ跳躍による緊張感と緩和

Aメロを使って解説していきましょう。

“Let me see your hands
Do your dance, Rock n Roll

この歌詞において太字にした箇所でから1オクターブ上のレへ跳躍を行っています。図で見ると以下の通りですね。

オクターブ跳躍を行うことにより、歌い手の喉が運動および緊張するため、聞き手側の意識を向けさせるとともに高揚感を与えます。J-POPなどでは『うっせぇわ』や『シャルル』のサビなどが有名ですね。
また2番ではボーカルは跳躍しませんが、後ろで鳴っているシンセサイザーがこのオクターブ跳躍を行います。
一方、サビでは何度もレの音が出てきますがオクターブの跳躍は無く、むしろ誰でも歌いやすいように大きな跳躍スケールは出てきません。もっと言えばサビで出てくる音はなんと5音だけ。経過音として一回だけ出てくるナチュラルのファを除けば実質4音しか使っていないのです!

    1 2 3 4
“Living in color レ シ レ ファ# ファ#    
Lighting up the streets   ファ# ファ#
Memo-       ファ# ファ
-ries for you and me   ファ# ファ#
Let’s keep it together (Ho!)   ファ#  
You know that it’s better   ファ# ラシ
When we’re dancin, (dancin’) dancin, (dancin’)   (レ) (レ)
dancing We’ll be living in color”   ミ レ ミ レ ミ ミ レ
※文章だとこれが限界です……すみません!

さらに分かりやすくするため、1番のA~Bメロとサビで使っている音だけを抜き出してみました。

※薄い青はフォールの際に聞こえる最低音のため、今回は一旦度外視します。

サビにしか登場しない音は経過音として使われるナチュラルのファだけという結果に!!むしろAメロ~Bメロに掛けてかなり幅広く音域を使っているのが印象的です。
いわゆるポップソングのお作法としてはA~Bメロで音域を狭く、サビで開放感を出すために広くするというのが定石。しかしこの楽曲はその逆を進んでいるのです。
たとえば東京ディズニーシー25周年のテーマ曲『タイム・トゥ・シャイン』ではA~Bメロではファ~シb、サビでは高いファ~レbとかなり広い音域を使って曲の盛り上げを行っています。以下の図はその音域を比較した画像です。赤色がサビ、青色がA~Bメロでの最低/最高音を表します。

タイム・トゥ・シャイン

リビング・イン・カラー

なんとそれだけではありません。サビに出てくるシ レ ミ ファ#という音はヨナ抜き音階と呼ばれる、童謡などに多くみられるなじみ深い旋律になっています!
明治~昭和期の音楽教育において、通常よりも少ない音数かつ、明朗快活な音階を使った童謡が多く作曲されました。『夕焼け小焼け』、『赤とんぼ』、『こいのぼり』や『チューリップ』など例を挙げれば枚挙にいとまがありません。つまりこの曲は大人にとっても懐かしいと思わせる工夫がされているわけですね。

今回の楽曲はDメジャーなので、それに合わせてヨナ抜き音階を以下に図示します。
ヨナ抜き音階とは、その音列における4番目と7番目の音を抜くことからその名前が付いています。

そうなんです。過去のパークソングではポップスらしい音域の広さで爽やかさとお祝いのムードを作り上げていましたが、今回は音域を狭めたうえでヨナ抜き音階でサビの旋律を作ることにより、「みんなでうたおう!」を全面に押し出していることが特徴になります。

② 哀愁(なつかしさ)を感じるコード進行

コード進行の面でも周年ソングらしく「なつかしさ」を感じられるスポットを用意してくれているのもニクいポイント。

|D (I)
”Let me see your hands

D (I)
Do your

|A (V)
dance, Rock n

A#dim7 (V#dim) |
Roll

|Bm7 (VIm7)
Go and move your feet

Bm7 (VIm7)
Feel

Bbm7 (VIbm7)
the

|Am7 (Vm7)
beat in your

D (I) |
soul”

 

コード進行だけ見てキーを見抜くことができる皆さま。そう、ご存じDメジャーキーの楽曲ですね。
以下がDメジャースケールにて使用する鍵盤です。

しかしコード進行で使っている音を青丸で表現すると、本来は必要ない音が出てくるのです。

前半のA#dim7はパッシングディミニッシュと呼ばれる手法です。コード同士の繋がりをスムーズにすることが出来る接着剤のようなコードですね。

例を出すとLisaの『紅蓮華』のサビに使われています。


“世界に

|C6(9)
打ちのめされて負け

|D
る意味を知った紅

|D#dim
蓮の華

|Em
よ咲き誇

|C6(9) |
れ!”

 

このようにパッシングディミニッシュを組み込むとコード同士の繋がりがスムーズになるだけでなく、上向きにコードが上昇していくので、かなり盛り上がる展開を期待させることができるのです。

Am7はDメジャーキーにおけるドミナント・マイナーにあたります。コード進行はサブドミナント→ドミナント→トニックのように進むのが定番であり、Am7(ドミナント) → D(トニック)へ向かうドミナント・モーションという動きです。本来であればここはA7 → Dへ戻るのが定番ですが、同主調のマイナー・ダイアトニック・コードを借用してる(クオリティ・チェンジ)と考えるのが良いかと思います。
そしてBm7からの下降を含んでおり、ここにも哀愁を漂わせる要因を作っているのも面白いポイントです。
たとえば東京事変の代表曲『丸の内サディスティック』で使用されている例を紹介します。

|AbM7 (IVM7)
“マーシャルの

|G7 (III7)
匂いで飛ん

|Cm7 (VIm7)
じゃって大

|Bm7 (Vm7) Eb7 (I7) |
変さ”

 

ハピネスをテーマとしたディズニーにしては、メインテーマ曲に哀愁を感じる進行を使うのは意外に思いますよね。
しかも先ほど述べたようにこの曲はコードの繰り返しにより構成されているため、楽曲のサビでも哀愁コードは使われているのです。
この哀愁コード哀愁スケールの組み合わせにより、今ディズニーが好きな人も昔よく遊びに行っていた人もまだ行ったことが無い人もみんなが懐かしさを感じつつも楽しんで歌える曲になっているわけですね。
これを機にぜひ、改めてテーマ曲の良さを感じながら東京ディズニーリゾート40周年をお祝いしましょう!

営業部 / 西田 朋生

少年時代エレクトーンに明け暮れていたにもかかわらず、高校時代は、友達が居なかったためにDTMの道に入り、大学時代は、作曲研究会が無かったためにジャズ研に所属していた異色の音楽歴を持つキーボーディスト。硬いキックと激しいシンセと速いテンポがあれば生きていける男です。さらに社会人になってからミラーレス一眼を買い、写真や動画撮影を趣味ではじめました。多趣味な人と覚えてください。

 
 
 
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