バンドのレコーディングや音楽制作などで活躍するMTR(マルチトラックレコーダー)。PC技術の進化によってDAWソフトを使用した録音が主流になってきていますが、ハードならではの直感的な操作性や手軽さなどのメリットがあるMTRは、昨今でも根強い人気があります。
私が初めて購入したMTRはカセットテープに録音するタイプの4トラックタイプのものでした。限られたトラックの中で、ピンポン録音(※)をしながら工夫をしてミックスし、一つずつ積み重ねて作り上げていく、という「多重録音」の楽しさを感じられるものでした。パンチイン/アウト録音の難しさ、一発録りの緊張感、デモテープ作りなどをMTRでレコーディングを学んだというミュージシャンも多いのではないでしょうか。現在ではMTRをPCに接続してDAWソフトで録音/編集/ミックス/マスタリングまでできてしまうものもあり、リアルタイムでの音楽配信にも対応できるものが増えてきました。今回は、そんな進化を遂げたMTRの最新おすすめ商品をランキング形式でご紹介します。

MTRとは?
MTR(エム・ティー・アール)はMulti Track Recorder(マルチトラックレコーダー)の略で、多重録音が可能な機器です。80~90年代はカセットテープやMDなどの記録媒体が使われていましたが、2000年以降は内蔵ハードディスク、CD-R、SDカードと段々進化。現在ではPCと接続できるタイプが主流となっています。
用途
- スタジオでのバンド練習/録音
- 楽器や歌の練習/レッスン
- 楽曲制作
- ポッドキャスト
- オーディオインターフェイスとして
録音だけでなく、バンド練習や楽器のレッスン、ポッドキャスティングなど、さまざまな用途に使えます。
MTRを使う目的
●PCを使わず簡単に録音したい
録音したい時、アイデアが浮かんだ時にすぐ録音を始められるため、PCやソフトを立ち上げる必要がありません。
●機材を少なくしたい
練習スタジオや自宅以外の場所でのレコーディングで持ち運ぶ際に、機材が少なくて済みます。
●アナログ・ライクな操作感
ミキサーのフェーダーやツマミはアナログの方が良い、という方も多いのではないでしょうか。PCのマウスでは表現しづらい細かいニュアンスを直感的に操作できるのがハード機器のメリットです。
選び方のポイント
●音質
24bit/96kHzなどできるだけ高解像度で録音できるものを選びましょう。24bit対応のものを選べば十分ですが、最近では32bit Float録音に対応したモデルも発売されています。
●入出力数
楽器や接続する機材の数に合わせた入力数を持つものを選びましょう。出力が多いものは、複数のスピーカーに接続してモニター用として使ったりすることも可能です。
●同時録音/再生トラック数
同時に何トラック録音ができるか、というのも重要なポイントです。同時録音可能数が多いほど、バンドでの一発録りやドラムのマルチ録音など、よりレコーディングの幅が広がります。
●機能
オーディオインターフェイス機能、ギターアンプシミュレーター、シンセ音源、シーケンサー、スマホアプリ対応など、機器によってさまざまな機能が用意されています。用途や自分のスタイルに合わせて選ぶようにしましょう。
第1位
カラータッチスクリーンを搭載した8 in / 4 outのマルチトラックレコーダー。ツマミ類は少なめのシンプルなデザインですが、タッチスクリーンで設定や細かい編集ができるためストレスなく音楽制作に打ち込めることでしょう。最初からリズムパターンのテンプレートが入っており、電源を入れてすぐにギター/ベースなどの楽器練習が楽しめます。PCと接続してオーディオインターフェイスとして使えることはもちろんシンセ音源も内蔵し、なんとMIDIファイルの取り込み読みや録音にも対応。カセットMTRを思わせるようなシンプルな操作性と、最新の機能を融合させた、魅力たっぷりのMTRです。
第2位
DAWコントロール機能を搭載した10chマルチトラックレコーダー/デジタルミキサー。アナログミキサーのような外観ですが、しっかりMTRの機能も入っていて、SDカードへの録音、フットスイッチを使ったパンチイン/アウトなどにも対応しています。前面パネルにはツマミがいっぱい付いており、ダイレクトにいじれる、というアナログライクな操作性も魅力の一つですね。もう一つの特徴として、DAWコントロール機能を搭載し、CubaseやPro Tools、Logic、Digital Performerなどのソフトのコントローラーとして使用することが可能です。また、Bluetooth接続にも対応しているため、スマホの音源などを取り込んで再生することもできます。レコーディングはもちろん、DTM用のアナログミキサーの購入を検討されている方にもおすすめです。
第3位
BOSS / MICRO BR BR-80 デジタルレコーダー
手のひらサイズながら本格的な音楽制作が楽しめるMTR。ステレオのコンデンサーマイクを搭載し、同時再生数は8トラック、ギター専用の入力端子も備え、エフェクトのかけ録りも可能です。再生音源のテンポを変えられる機能やメトロノーム機能もあるため、楽器練習に最適です。手軽に持ち運べるので、練習スタジオでの録音や作曲のアイデア作りなどでも活躍することでしょう。コンパクトさを重視する方におすすめです。
第4位
TASCAM / Mixcast 4 ポッドキャストレコーダー
ポッドキャストに特化した多機能レコーディングミキサー。SDカードを記録媒体としてMTR的な使い方もできますが、複数人でのライブ配信や映像機器と組み合わせたイベント収録など配信に必要な機能が満載です。とくに8つのパッドボタンによる「ポン出し」がとても便利で、サンプラーのように効果音を仕込んだり、ボイスチェンジャーなどリアルタイムで自分の声を加工したりと楽しい使い方ができます。さらに14 in / 2 outのUSBオーディオインターフェイスとしても使えるほか、専用のエディターもあり、PCでミックスや編集、レコーディングなど自由自在です。タッチスクリーンやボタン類のカラフルなLEDも気分を盛り上げてくれる重要なポイントですね。
第5位
ZOOM / PodTrak P8 ポッドキャスト対応レコ―ダー
高品位なマイクプリを6基搭載したポッドキャストレコーダー。大きめのカラータッチスクリーンで操作がしやすく、各チャンネルにはON AIRボタン、中央にはジングルや交換音などの「ポン出し」を設定できる9つのサウンドパッドもあり、快適にポッドキャスト制作が行える仕様となっています。また、トラック、フェーダー、ツマミのカラーが色分けされているので見やすく、複数人でのライブ配信で誰がどのチャンネルを使っているかを簡単に把握することが可能です。往年のMTRのような外観ですが、効率良く配信、制作したいという現代のポッドキャスターにおすすめのレコーダーです。
いかがでしたでしょうか?個人的に思い入れのあるMTRは、AKAI「DPS16」という機器です。録音の楽しさから、当時は食事をとるのも忘れてレコーディングに熱中したものでした。レコーディングや楽曲制作は時間がかかる作業のため、機材と長くかかわる分、自身の相棒のように、機材に思い入れも湧いてくるのかもしれません。また、自然とミキサーやエフェクターの知識や、ミックス、マスタリングのテクニックなども身に付き、一緒に成長させてくれる機材、それがMTRです。みなさんが、そんな「お気に入りの一台」に巡り合えることを願っています。