多くの楽器ユーザーの中でも、特に愛好者が多いのが「ギター」です。正確な数は不明ですが、日本国内では数十万人がギターを演奏しているといわれています。しかし、都市部では集合住宅であるマンションで生活している人も多く、自宅で気兼ねなく演奏するのが難しいのが現状です。
そこで今回は、アコースティックギターユーザー向けに、マンションでギター演奏が可能かどうかを検証してみました!

マンションの規約を確認
マンションでギターを演奏したい場合、まず確認すべきなのは「現在住んでいるマンションでギター演奏が許可されているかどうか」です。
演奏の可否は管理規約を見ればわかりますが、マンションには大きく分けて次の3種類があります。
- 楽器演奏禁止の物件
- 楽器演奏可だが、使用できる楽器や演奏可能な時間が制限されている物件
- 24時間楽器演奏が可能な物件
まずは管理規約を確認し、自分が住んでいる物件がどのタイプに該当するかを調べましょう。
もし管理規約で楽器演奏が禁止されている場合は、どんなに小さな音量であっても演奏することはできません。禁止を無視して演奏すると、近隣住民とのトラブルや大家さんに知られ、最悪の場合、退去を求められるリスクもあります。
それでもどうしても楽器を演奏したい場合は、演奏が許可されている物件への引っ越しを検討するのが良いでしょう。
次に、楽器演奏が可能なものの、防音設備がないマンションでは、クレームを避けながら演奏する方法について考えてみましょう。
アコースティックギターの音量は?
まずは騒音源であるアコースティックギターの音圧レベル(dB)を確認する必要があります。そこで早速、ギターの音圧レベルを計測しました。
今回使用したアコースティックギターは【L.Luthier】のLe Light ST。
騒音計はスマートフォンのアプリで計測しました。精密騒音計もあるものの、今回はざっくりとした数値把握を目的としています。
演奏者の力加減によって音量(dB)は変化しますが軽く弾くと約60dB、強く弾くと最大で73dBに達しました。今回の演奏者が控えめな音量で弾く傾向があるため、他の人が弾くと80dBに達する場合もあります。
なお、ERIK MONGRAIN氏のようにギターを寝かせてタッピング奏法を用いたり、MIYAVI氏のようにスラップ奏法を多用する場合には、さらに高い音圧レベルが考えられます。
具体的なイメージが湧きやすいよう、音圧レベルの参考例をいくつか挙げてみたいと思います。
70dBhはどのぐらいの音量?
70dBはどれほどの音量かというと、以下のような状況を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
- 電話のベル
- 騒がしいオフィス内
- 混雑した街頭
- 掃除機の音
人によって感じ方に差があり、周囲の環境にも影響されますが、一般的に60dB以上の音は「少しうるさい」と感じ、70dBは「かなりうるさい」、80dBを超えると「騒がしすぎて我慢できない」とされます。
楽器を演奏する人にとっては、ギターの音色は心地よいものですが、意図せず聞こえてしまう人にとっては騒音となることもあります。そのため、マンションなどの集合住宅では、窓を開けての演奏は避けた方が無難でしょう。
隣の部屋でどの程度聞こえる?
隣の部屋にどの程度音が伝わるかは、建物の構造(RC造、鉄骨造、木造)に大きく左右されるため、一概に「何dBが隣に伝わる」とは言い切れませんが、いくつか仮説を立てることができます。
仮説:掃除機とギターの音はほぼ同じ音圧レベル
今回の測定では、掃除機の音とギターの音がほぼ同じ音圧レベル(dB)でした。スマートフォンの騒音計で測定したところ、掃除機とギターが近い数値を示しました。
そこで、「隣の部屋で掃除機の音が聞こえるなら、ギターの音も伝わっている可能性が高いのでは?」という仮説が立ちます。
なお、同じ騒音計で測定したところ、咳が65dB、くしゃみが72dBという結果も得られ、これも一つの目安になるかもしれません。
※周波数特性により、同じ音量でも隣の部屋に伝わる音量が異なりますが一旦その点は考えず進めてみます。
簡単に言うと「隣の部屋の掃除機が聞こえる音量だけ、自分のギターの音が伝わっている」ということです!
マンションでギターを弾くには音量下げるしか無い?
マンションの壁の遮音等級というのは建築基準法で定められていますが、なかなか楽器の音量を遮音してくれるような仕様にはなっていません。
工事などの対策無しに演奏したい場合には弱音器・ミュートを使って演奏するか、そもそも音がほとんど出ないような製品を使うことをお勧めします。
弱音器・ミュート
GRAND GUITAR ( グランドギター ) / 弱音器
色々な製品がありますが代表的な弱音器はこちらです。ギターを長年演奏されている方であればパッケージを見ると「ああ、これね」とピンとくるはず。
そのぐらい定番の商品となっております。 価格も安いので、試してみる価値はあるのではないでしょうか?
注意点:ロングトーンの練習には使えない
弱音器は弦を物理的に止めてしまうものなのでサステインを得ることはできません。曲によってはお昼間に演奏するなどの工夫が必要です。
音の小さなギター
YAMAHA ( ヤマハ ) / SLG200S CRB サイレントギター
こちらも定番商品の一つ、アコギ・クラシックギターユーザーの方なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
ボディが存在しないため非常に音が小さくなります。開発者インタビューには「通常のアコースティックギターの10~20%まで音量を下げられます。
」とあります。
引用:ヤマハ | SLG200 Series - サイレントギター™ - 開発者インタビュー
ちなみに防音の工事をするなら
増し張りについて
防音リフォームといってもその中身は様々な方法が存在します。
一番簡単な対策としては「増し張り」が挙げられます。今の壁に石膏ボードを追加で張ることで遮音性能を高める方法です。
工期も短く、価格も安いため(数十万程度)非常に人気の対策になります。

詳しくは 創和防音HP にてご確認ください。
防音室について

画像:創和防音
先ほどの増し張りに比べて高額にはなるものの、遮音性能(音がどの程度小さくなるのか)がはっきりわかる防音室であれば安心して演奏することが可能です!
増し張りの場合は現状の壁にボードを追加する対策のため非常に古い建物やそもそも壁が薄い建物に対しては効果が薄くなってしまいますが、防音室の場合はそういった心配がありません。
最後に
防音室となれば工期は3週間程度200万〜と高額にはなりますが、夜でも安心して演奏できる環境が整います!
10年で見たら1年間に20万円〜楽器を一生弾くことを考えればコストパフォーマンスが抜群です!
他楽器の方も含めてぜひご検討ください!
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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