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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その183 ~記憶に残るホーン系楽器・ソロ特集PART2!~

2024-06-26

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

記憶に残るホーンプレイヤーのソロ。前回はマイケル・ブレッカーのソロを中心に取り上げました。
アルトサックスのデビッド・サンボーン、テナーサックスのマイケル・ブレッカーの2人は米国ではトップのホーンプレイヤー。ですがもう1人、忘れてはならないサックスプレイヤーがいます。それはトム・スコットです。トム・スコットは1948年生まれの米国を代表するサックスプレイヤーです。
トムもサンボーンやブレッカーと同様、ジャズというカテゴリーに捕らわれることなく、ロックやポップスのアーティストからも信頼は厚く、圧倒的な存在感を放っていました。
トム・スコットはグラミー賞を3度獲得し、昨年のグラミーのショータイムでもキャロル・キングとのステージで強力なソロを吹いていました。

今回はサックスプレイヤー、トム・スコットに加え、スティングのバンドでソプラノサックスなどを演奏していたブラッドフォード・マルサリスの記憶に残るソロ演奏をご紹介します。まずはマイケル・マクドナルドのソロアルバム、2発目はスティングのファースト・アルバムからのリストアップです。

■ 推薦アルバム:『思慕』マイケル・マクドナルド(1982年)

当時、マイケル・マクドナルドはブルー・アイド・ソウルを歌わせたら彼の右に出る者はいなかったかもしれない。もう1人挙げるとすればホール&オーツのダリル・ホールか。
マイケル・マクドナルドはスティーリー・ダンに加入するもリードボーカリストの座はドナルド・フェイゲン。スティーリー・ダンではコーラスワークに甘んじていた。
しかしドゥービー・ブラザースに移籍し、大ブレイクを果たすことになる。
当時のドゥービーは8ビートのロックンロールやカントリー系ロックに特化した音楽でトム・ジョンストンとパット・シモンズのツインボーカル体制だった。ところがトム・ジョンストンが一時的にバンドを離れることになり、マイケル・マクドナルドが加入。
アルバム『ドゥービー・ストリート』リリースを機にバンドの色合いが変貌。全く異なる音楽がそこにはあった。ロック指向の強いリスナーからは「もうドゥービーは終わった」という声も聞こえてきた。
アルバムにクレジットされた「テイキン・トゥ・ザ・ストリート」はマイケル・マクドナルドのリードボーカル。これまでのドゥービーにはない新機軸となった。
1977年には『運命の掟』をリリースし、次作のアルバム『ミニット・バイ・ミニット』に収められた「ある愚か者の場合」が全米ナンバーワンに。ボーカリストはマイケル。
ドゥービーは全く違うバンドに生まれ変わると共にグラミー賞にも輝き、マイケル・マクドナルドは「アメリカで最もセクシーな男」と言われるまでに至った。

そんなマイケルがグループ解散間際にリリースしたのが、このファースト・ソロアルバム『思慕』だ。「ある愚か者の場合」を共作したケニー・ロギンスやTOTOのメンバーなど、西海岸の腕利き達が名を連ねる名盤となった。

推薦曲:「ザッツ・ホワイ」/ソロプレイヤー:トム・スコット&ロベン・フォード

この楽曲のソロを聴いてブッ跳んだのは私だけではないはず。トム・スコットのサックスとジャズ、フュージョン畑ではトップギタリストのロベン・フォードがユニゾンでソロの間奏部分を演奏している。そのフレーズは書き譜によるものだが、フレーズと展開がとびっきりカッコよく忘れられない。
私は譜面には強くないが、そのフレーズを今でも歌えてしまう程だ。記憶にへばりつい消えることはない。スピード感と躍動感に溢れ、当時のマイケル・マクドナルドの勢いそのままが楽曲に定着されている。

■ 推薦アルバム:『ブルー・タートルの夢』スティング(1985年)

ポリス解散後、ベーシストでありボーカリストのスティングがソロに転じ、1985年にリリースしたスティング名義のファースト・アルバム。
新しく作ったバンドはメンバー全員が新進気鋭のジャズ・ミュージシャン。このバンドが凄かった。キーボードプレイヤーはケニー・カークランド、ドラマーは元ウエザー・リポートのオマー・ハキム、マイルス・デイビスバンド出身で今ではローリングストーンズのベーシストであるダリル・ジョーンズ、サックスプレイヤーはジャズトランペッターの名手、ウイントン・マルサリスの弟、ブラッドフォード・マルサリス。当時としては若手ナンバーワンのサラブレット達だった。
ギタリストはおらず、スティングがストラトキャスターを弾いていた。ギタリストのソロがない代わりにキーボードプレイヤーのケニー・カークランドやサックスのブラッドフォード・マルサリスがソロをとるシーンが多く、その質の高さには目を見張るものがあった。
このバンドのツアーはドキュメンタリーとして記録されている。
米国人のジョークにスティングが理解できず悩むシーンやスティングが妻の出産シーンに涙する感動的シーンも盛り込まれている。
ライブにおける彼らのパフォーマンスは圧倒的でスティングハンドとしては後にも先にもこのバンドを超える演奏は存在しないと私は確信している。楽曲も素晴らしいアルバムだった。

推薦曲:「バーボン・ストリートの月」/ソロプレイヤー:ブラッドフォード・マルサリス

ミュージシャン、スティングの佇まいが楽曲に反映された名バラード。
バーボン・ストリートはニューオリンズのジャズライブハウスが軒を連ねる由緒ある通り。ひと気が掃けた薄暗いバーボン・ストリートに浮かぶ月をモチーフとして自身の心象風景とある映画の内容をダブらせて歌っているように思える。
スティングのくぐもったボーカルとベース、ハイハットのみで展開し、途中からブラッドフォード・マルサリスのソプラノサックスがスティングの声と対をなすかのように絡み合う。その物憂げなトーンは素晴らしいの一言だ。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:トム・スコット、ブラッドフォード・マルサリス、マイケル・マクドナルド、ロベン・フォード、スティングなど
  • アルバム:『思慕』『ブルー・タートルの夢』
  • 推薦曲:「ザッツ・ホワイ」「バーボン・ストリートの月」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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