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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その173 ~ヤマハYC61を使って名盤グレッグ・マティソン・プロジェクトの音をコピーしてみた~

2024-03-23

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

■ YC61の特性

ヤマハのYC61を年末に購入して3か月ほどが経過しました。

YAMAHA ( ヤマハ ) / YC61 ステージキーボード

YAMAHA ( ヤマハ ) / YC61 ステージキーボード

このYC61はハモンドオルガンをサンプリングではなく、ヤハマ独自のモデリング技術であるVCM音源を使用してハモンドオルガの再現を試みた画期的なキーボードです。通常のサンプリング音源では得られないある種の独特な音を再現します。しかも3種類の異なるハモンドオルガンの音色がインストールされています。
レコーディングに使用されているハモンドオルガンはジャンルによって音が違います。この3タイプから音色を選択できるのはとても便利です。

実際のスタジオで音を出してもYC61の音は、バンドアンサンブルに埋もれて聴こえないということはありません。これはノード・エレクトロ4も同様でしたが、YC61にはノードのオルガンとは違う味わいがあります。
ヤマハのキーボードの音は歴代、どちらかといえば「細めの音を出す」という印象が個人的にあったので、このYCは例外といえるのではないでしょうか。ポリシンセCS80やエレクトリックグランドCP80などの例外もありますが…(笑)

■ ミニモーグの音をFM音源で実際に「音」を作ってみた

私は現在、バンドでグレッグ・マティソン・プロジェクトのアルバム『ベイクド・ポテト・スーパーライブ』に入っている「Bump me」という曲を演奏しています。このアルバムでグレッグ・マティソンはハモンドオルガンとミニモーグのみを使用しています。ミニモーグの音はあまりフィルターをかけず、むき出しの音で演奏されています。

■ 『ベイクド・ポテト・スーパー・ライブ』:グレッグ・マティソン・プロジェクト(1982年)

1982年リリース。AORの名盤とされているアルバム。日本のみでリリースされ、米国での発売はない。LAのライブハウス、ベイクド・ポテトでのライブ。
ラリー・カールトンの名曲「ROOM335」のアレンジャー、プロデューサーで知られるグレッグ・マティソンを中心にギターがスティーブ・ルカサー、ドラムはジェフ・ポーカロ、ベースはロバート“ポップス”ポップウェルという名手による演奏が聴ける。
一発録音されたこのアルバム、ギターのスティーブ・ルカサーはソロを差し替えたかったようだが、録音直後にレコード会社にライブテープが送られたために差し替えは叶わなかったという。リラックスした中にもライブ特有の緊張感があり、ミニモーグとハモンドを弾くグレッグ・マティソンの腕前とジェフ・ポーカロの素晴らしいドラミングなど、4人のグルーブした名演を聴くことができる。

■ YC61で試みるグレッグ・マティソンの音の再現!

さてYC61でグレッグ・マティソンによる2種類のキーボードの音をコピーしてみることにします。

数あるシンセサイザーの中でミニモーグに似た音を作るのは最大級に厳しい試みであることは十分承知しています。なぜならミニモーグは1971年リリース以来、多くのミュージシャンが今でも使い続ける名品。それだけニーズがあるのはミニモーグがワン&オンリーであり、音を再現するのが難しくミニモーグでなければ出せない音だからです。サンプリングで再現できるのなら皆さん、サンプリング音源を使いますから……。
なのであまり期待をせず、試しにYC61に入っていたFM音源で作られたミニモーグ風の音を選択します。音に若干のフィルターをかけ、エンベロープジェネレーターで音の立ち上りと減衰等を調整し、マティソンの音に寄せてプログラムをしました。その音にポルタメントをかけました。エフェクトはショートディレイとリバーブを薄めにかけ完成です。

次はハモンドオルガンの音です。
前述の通り、YC61には3つのタイプのハモンドから選択ができます。グレッグ・マティソンのハモンドはザラッとしたロックよりの音なのでYC61の2のタイプを選択します。ドローバーは下4本を引き出すロックオルガンの典型的なサウンドにセットにして薄めのリバーブをかけます。

実際にスタジオで音を出してみました。
YC61でシミュレートしたアナログシンセ音はミニモーグほど太い音ではありませんが(当たり前です!笑)それに近い音がしているのです。ミニモーグの再現という無理な挑戦ではありましたが新FM音源(旧来のDX7、6オペレータに対し、新FM音源は8オペレータ)の音の太さが影響しているのでしょうか?新音源のアナログシンセの再現性には驚いてしまいました。

■ 大きな要素 ピッチベンダー

私がこのYC61を購入した動機の1つがピッチベンダーでした。ピッチベンダーはキーボードの左側に付いたホイールかレバーによって音程を上下させる1つの装置です。私はホイールの方がどちらかといえば好みですが、写真にあるレバーでも十分です。下側のレバーがピッチベンドレバーで左上がモジュレーションレバーです。
レバーを目いっぱい上げた時に何音ピッチが上がるのかもプログラムが可能です。
以前、使用していたノード・エレクトロ4Dのオルガンサウンドも素晴らしかったのですが、残念ながらエレクトロ4Dにはピッチベンダーが付いていませんでした。エレクトロ4Dにもシンセサイザーをサンプリングした太い音が入っていたのですが、リトル・フィートの楽曲をコピーした際にピッチベンダーが無いために演奏にベンディングを反映することができませんでした。
YCにはピッチベンドレバーが付いているのでこの機能にはとても重宝しています。

このリポートで以前、ジェフ・ベックバンドのヤン・ハマーをコピーする際、プロフィットのアナログシンセTAKE5を使ってのリポートをしましたが、現在ではこのYC61を使用してヤン・ハマーのコピーをしています。
アナログシンセの方がより粘りのある音がしますが、スタジオ練習に2台の鍵盤を持っていく必要がないのでYC61の1台で対応することができるため、腰痛人間にとってはありがたい限りです。


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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

YAMAHA / YC61 ステージキーボード

YAMAHA

YC61 ステージキーボード

¥219,790(税込)

ステージキーボード、61鍵

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