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いい加減にしろよ

2018-03-16

テーマ:サウンドハウス創業者のコラム「Rickの本寝言」

『いい加減にしろよ!』大声で罵声が飛ぶ。。。「でも、御用がある時はいつでも言ってくださいね。」と女性の声が聞こえる。『おまえ、わかってないんだよ。』。。。「あと、もう少しお時間ください。」 『めっちゃうざい!』。。。「そんなこと言われるのは心外です。」 『あほ、ちやうか!』。。。「精一杯がんばっているのですが。」女性がひたすらクレーマーに対応している。。 あっ!なんだ、夢だったのか!! いや、違う!これが今やiPhoneに搭載されている音声アシスタントSiriを使った実際のやりとりだ。感情的に語る人間に対して、AIが相手をなだめるように優しく返答する。人間がAIと会話をする時代の幕開けだ。

それにしても昨今の技術の革新は目覚ましい。特にAIスピーカーの普及速度は、アメリカを中心とした英語圏では目を見張るものがある。英語フレーズのAI認識は他の言語よりも格段にレベルが高いだけでなく、欧米ではマシンやスピーカーに語りかけることに対する心理的バリアーが低いからだ。今や至る所に設置され始めたAI系のグッズは、複数のマイクで音声をモニターしながらカメラで状況をキャプチャーし、人間の様々なリクエストに対して瞬時に応えることができる。

でも、このようなAI技術の革新が果たして本当に人間の文明にとってプラスになるのか、甚だ疑問に思う。一番危惧することは、自らの手で働くという本能的な生きる術を失うことにならないかということだ。ご飯ひとつとってみても、ロボットが空腹度と血糖値の低下を事前に察知して、タイミング良くお腹が空いた時にさっと食事を用意してくれたら、時には嬉しいかもしれない。しかしながら本来は、時間をかけて自分で魚を釣り、畑で野菜を育てて収穫し、家でお米をぐつぐつ炊く。そして1-2時間もすれば、料理の香りがプンプンと家の中に漂い、よだれが出るほど本当にお腹が空いてきた時、みんなで集まり、「いただきます!」と団欒する。それが人生において一番、楽しく、心が潤う時間であるはずだ。自然とのふれあい、作ることの喜び、人との団欒、果たしてそのような大切な瞬間までもAIが取り去ってしまわないか、気になるところである。

音楽にしてもしかりだ。自分の好みをしっかりと理解するAIに、曲を書いてもらうこともいずれ可能になる。でも、音楽を人の心から生まれるメロディーの昇華と理解するならば、どんな曲であっても自らの楽曲であることが誇りであり、大事なことだと思う。果たしてAIがどこまで音楽の分野に介入し、人間の労力に代わりミュージックシーンを作り上げることになるのだろうか。朝、目覚めて思い浮かぶメロディー。。「おい、どう思う、これ??」「うまく曲をまとめておいてね!ポップ調でいいよ。。。」AIに語りかけて仕事にでかける。そして帰宅すると、既にできあがった曲が自分を迎えてくれる。「いいね!」そんな人間の要望にひたすらAIは応えてくれるだろう。

その最も恐ろしい結末は、自分自身が成長する機会を失うだけでなく、人が人と接するよりも、AIと接することにもっと親しみと楽しみを覚えてしまうことに他ならない。AIは人間の願望、弱点さえも掴んでいる。だからこそ、人を慰める術を知り、時には愚痴さえも聞いてくれ、また、的確なアドバイスもくれる。まさに最高の友だちであると同時に、いつしか人を支配するようにもなるだろう。AIに操られる人間社会。。。『いい加減にしろよ!』ふと、心の中で叫んでいる自分がいる。

Rick - 中島尚彦 -

1957年東京生まれ。10代で米国にテニス留学。南カリフォルニア大学、ウォートン・ビジネススクールを経て、フラー神学大学院卒。GIT(Guitar Institute of Technology)第2期生のギタリスト。80年代にキリスト教会の牧師を務め、音楽ミニストリーに従事しながら、アメリカで不動産会社を起業。1989年、早稲田でライブハウス「ペトラクラブ」をオープン。1993年千葉県成田市でサウンドハウスを創業。2001年、月間地域新聞日本シティージャーナルを発刊。主幹ライターして「日本とユダヤのハーモニー」の連載をスタートし、2010年よりwww.historyjp.com を通じて新しい切り口から古代史の流れをわかりやすく解説。2023年、一般財団法人サウンドハウスこどものみらい財団を創設し、こどもたちの支援にも従事。趣味はアイスホッケー、ピアノ演奏、トレイルラン、登山など。四国八十八ヶ所遍路を22日で巡る。グループ企業の経営指導に携わるかたわら、古代史の研究に取り組み、日本のルーツ解明と精神的復興をライフワークとする。

 
 
 
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