NEUMANNからMiniature Clip Mic System(略称MCM)が発売されましたが、名前が示すとおりクリップマイクであり、「NEUMANNのクリップマイク」というだけでもかなり興味深い製品です。
NEUMANN ( ノイマン ) / MCM 114 SET
NEUMANNと言えばラージダイヤフラムコンデンサーマイクのイメージが強く、次いでKMシリーズのようなスモールダイヤフラムのイメージがあります。NEUMANN初のクリップマイクかと調べてみたところ、1966年にKMLというクリップマイクが存在していました。しかし50年以上前の製品ですから、後継機ではなく完全な新製品と考えて良いでしょう。
誰もが気になる噂の新製品「MCM」を使う機会を頂きましたので、製品をレビューさせていただきます。
様々な要求に応える「クリップマイクシステム」

<ウインドスクリーンも付属する>
MCMはその名前が示すとおり「システム」であることが最大の特徴です。KK 14エレクトレットコンデンサーマイクカプセル部を中心に、グースネック、クリップ、出力部分など、全26製品で構成されており、使用するシーンや楽器にあわせて必要な製品を組み合わせて使用します。

<NEUMANN MCM 114 SET BRASS/SAX/UNI>
26製品の中には代表的な組み合わせのセット製品が含まれており、「MCM 114」という型番がセット製品です。いわゆる「クリップマイク」は「MCM 114 SET BRASS/SAX/UNI」というモデル。簡単に説明するとXLR出力のクリップマイクセットです。
「MCM 114 SET BRASS/SAX/UNI」はKK 14カプセルヘッド、AC 31 (1.8 M)3.5mm端子ケーブル、SH 150グースネック、KC 1ケーブルブレース、WS 110ウインドスクリーン、MCM 100アウトプットステージ、MC 6ユニバーサルクランプクリップが専用のセミハードケースに収納されています。

<4種類のクランプを借りることができた>
特筆すべきは楽器への取り付けクランプのラインナップでしょう。先述のMC 6ユニバーサルクランプクリップだけでなく、バイオリンやコントラバス、アコースティック、そしてピアノなど、9種類のクランプが用意されています。(一部は未発売)

各種クランプは多数の可動部を備えることが特徴です。グースネックに依存するとグースネック、ならびに中を通るワイヤーを痛めることになりますが、「MCM」はグースネック+可動クランプという構造によって高い自由度と耐久性を両立しています。

<グースネック取付部は2軸で360度回転する>
グースネックの取付部では、グースネックの取り付け位置を変えられるだけでなく、取付部は45度刻みで360度回転します。45度ごとにロックがかかるため、動いてしまう心配はありません。

<楽器の傾斜に対応できる>
さらにクランプの楽器接地面が首振り機構を有しており、30度程度左右に傾きます。楽器は平行面だけではありませんから、クランプの接地面が可動するというのは取り付けにおいて大きなアドバンテージになり得ます。

<クランプを指で広げて取り付ける>
クランプは平行移動する取付部によって上下から挟む構造なので、クリップタイプよりもしっかりと力がかかります。バネを内蔵しており、指3本で幅を広げて楽器に取り付けを行い、指を離せば楽器をはさみます。
どのクランプもひとつの製品としてしっかりと企画・設計された印象を受けます。クリップマイクは楽器への取り付けにおける安心感と実際の信頼性が非常に重要ですから、クランプ部に注力した設計からは、現場の声を聞くNEUMANNマインドを垣間見ることができます。
高いメンテナンス性が生み出すコストパフォーマンス

<ケーブルだけ分離できる>
近年では低価格のマイクが多数発売され、クリップマイクも入手が容易になりました。しかし安価な製品では、購入後数回の使用で故障というケースも散見されます。修理も不可であれば買い替えとなってしまいます。クリップマイクはPA現場での使用頻度が高いマイクですから、耐久性やメンテナンス性は気になるところでしょう。
「MCM」は部分ごとの購入が可能であるため、故障時も部分交換で復帰できます。特に断線や断裂などが起こりやすいのはケーブル部ですが、ケーブル部だけで購入が可能です。

<ワイヤレスシステムにも最適>
ケーブル部は4種類のラインナップがあるため、ケーブルを変更するだけで様々な現場に対応が可能。結果的に高いコストパフォーマンスを生み出します。スタンダードなAC 31 (1.8 M)3.5mm端子ケーブルの出力はSENNHEISER MKE 2等の3.5mm入力を持つボディパック送信機に接続が可能です。他、LEMO/MICRODOT/mini XLR出力のケーブルがラインナップされています。

<分離させたKK 14マイクカプセル>
このように、各部が交換できることで高いメンテナンス性を確保し、また、様々なシステムへの対応を可能にしています。
余談ですが、チタン製のマイクカプセル部も分離可能で、KK 14という名称です。将来的に指向性や特性の異なるカプセルが発売されることも期待できますね。
芯のあるしっかりとした音質

<汎用性の高いMCM 114 SET BRASS/SAX/UNI>
エレクトレット型であり出力回路スペースがほとんど無いという厳しい条件ながらもNEUMANNの名に恥じないスペックを誇ります。中でも耐音圧は153dB SPLを誇り、安心して超オンマイクでセッティングすることができます。
また、等価雑音レベルは23dB-Aという数値を実現。さすがに大きな筐体を持つラージダイヤフラムマイクには劣りますが、多くのPA現場では十分なノイズ性能といえるのではないでしょうか。
PAでの使用はまだできていないのですが、ライブレコーディング的な現場がありましたのでピアノ、ピアニカ、クラリネット、バスクラリネット等で使ってみました。
音質はいわゆるNEUMANNの音とはやや異なる印象を受けますが、カプセルも回路も既存製品とは全く異なりますから当然とも言えるでしょう。エンジニアがイメージする「THE NEUMANN」の音と、プロのPA現場で多用されるあのクリップマイクのちょうど中間のようなサウンドだと感じました。非常にタイトで輪郭のしっかりとした音です。
耐音圧性能を活かすためかなり近いセッティングでも試してみましたが、問題なく使用することができました。楽器の響きを考慮しつつ、ハンドリングの良いセッティングを行うことができそうです。
特徴的なのは入力される音量によって音の印象があまり変わらないということです。大音量時も小音量時も同じような印象の音で、周波数特性が音量によって変化していない印象を受けました。この特徴は余裕を持ったゲイン設定をしておきたい時に武器になるでしょう。

<MCMの周波数特性>
価格を考えてみても、NEUMANNのマイクとしては安価な部類に入りますから、PAの現場でNEUMANNクオリティのマイクが使えるようになると考えれば、新しい選択肢になれるマイクではないかと思います。
「MCM」を紹介してきましたが、優秀なクランプのおかげもあって、手元にあると色々とアイディアが湧いてきてしまうマイクでもあります。特に筆者が注目しているのはアコースティックギター用のクランプ。レコーディングにおいて、数cmの奏者の動きで音が変わってしまいますから、いつものマイクセッテイングに加えて「MCM」をクローズドで設置すれば保険をかけることができそうです。次の機会にはアコギの録音に使ってみたいと思っています。
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