ワイヤレス・ワイヤードを問わず、数々のプロフェッショナル向けマイクをリリースする老舗マイクブランドSENNHEISER。近年ではVloggerやYouTuber向けのマイクなど、業務用ではない小規模収録用のマイクも数多くリリースしており、その中にXSW-D Portable Lavalier Setという面白い製品があります。
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) / XSW-D PORTABLE LAVALIER SET
定評あるME 2-iiラベリアマイクとコンパクトなワイヤレスシステムをセットにした製品で、XSW-D Portable Lavalier Setを使用するとハンディカム、ミラーレス、DSLRなど、外部入力端子のある動画収録デバイスのマイク周りを簡単にワイヤレス化することができます。
使う機会を頂きましたので、紹介していきたいと思います。

<XSW-D Portable Lavalier Set>
電波や周波数、ワイヤレスの知識は不要の簡単接続

<クリップ付きの無指向性ME 2-iiマイク>
パッケージを開けるといくつかの機器が出てきます。
まずはメインのME 2-iiマイクロホン。これは定評ある無指向性ラベリアマイク(ピンマイク)で、インタビュー収録の定番マイクです。

<送受信機の大きさがわかるようにマジックと並べてみた>
続いては送受信機。全く同じ見た目なのでどちらが送信機でどちらが受信機なのか間違えそうですが、裏面を見ることで識別できます。TX 35(マイクのマーク)が送信機、RX 35(カメラのマーク)が受信機です。必要に応じてテープやシールを貼るなど、目印を着けておくと良さそうです。

<ホットシューアダプターの底面には三脚穴がある>
続いて送受信機のアダプター。送信機用にはベルトクリップ、受信機用にはホットシューアダプターが用意されています。(コールドシューでも使用可能です)

<充電用USBケーブルと3.5mmTRSケーブル>
最後にケーブル類。受信機とカメラを接続する3.5mm TRSケーブルと充電用のUSB-A - USB-Cケーブル、3.5mm延長ケーブルが付属しています。このUSBケーブルはあくまで充電用であり、USB-C端子のある機器とデジタル接続できるわけではないので、注意が必要です。

<マイクのケーブルはロックできる>
早速接続してみましたが、使用方法はいたって簡単。専門知識は一切不要でした。
ME 2-iiマイクは話者の服など、口になるべく近い部分に取り付け。出力ケーブルをTX 35送信機の入力端子に接続します。端子は抜け防止のネジがありますので、ネジを回して確実に接続します。

<受信機側も同様にロックできるので安心>
続いては受信機の出力端子とカメラの入力端子を付属のTRSケーブルで接続します。こちらも抜け防止のネジがありますので、確実に接続します。
反対側はカメラの外部入力端子へ。カメラだけでなく、3極の3.5mm外部入力端子の機器であれば接続が可能です。なお、接続においてはステレオではなくモノラル音声(左右同一の音声)での入力となります。
送受信機それぞれボタンがひとつだけあり、押すとスイッチがオンになります。オンにすると自動的に接続先を探し、LEDが緑の点滅から点灯に変わると接続完了です。なんとワイヤレスなのに接続設定が全くないのです。筆者も色々なワイヤレス・システムを使ってきましたが、SENNHEISERのXSWシリーズは群を抜いて設定が簡単で、本当にこれで良いのか驚いてしまうほどです。
また、電源をオフにしたい場合はボタンを長押しします。操作はオンと、オフのみ。本当に他の操作がないのです。

<LEDで送受信機の状態を表示する>
調べてみるとワイヤレス接続には2.4GHz帯を使用しており、最大で5セットまで同じ機器が使用できるようです。複数セット同時使用においても接続方法は同じで、送受信機のペアで使える周波数を勝手に探して接続するので、セットアップで迷うことはないでしょう。ワイヤレス・システムの導入においては、電波や周波数に関する知識を習得することが大変でした。XSW-D Portable Lavalier Setであればこれらの知識が不要であるため、これまでワイヤレスを敬遠していた人でも気軽に導入できそうです。
ME 2-iiマイクは安定の高音質

<送信機の取り付け>
実際のインタビュー収録で使用してみました。
マイクをクリップで取り付けて、ケーブルは服の中を通し、送信機はベルトクリップを用いてポケットに取り付けました。

<クリップの向きは変更可能>
ME 2-iiマイクはスピーチ、ボーカルに最適な小型無指向性クリップオン型マイクロホンで、音質は折り紙付き。非常にクリアな音でトークを収録することができました。無指向性という方向性がないマイクユニットが採用されているため、マイクの向きは気にする必要がありません。あごの下など声が出ていく方向と異なる場所でも安定して音を拾うことができます。
一方で、周囲の音も全方向的に拾いますので、うるさい場所で使用する場合は口からの距離に注意が必要です。マイクの設置場所については口から25cm以内が推奨されています。近ければ近いほどクリアになりますので、周囲がうるさい場所で使用する場合は、注意して取り付けましょう。
ワイヤレス化においては少なからず音質に変化があります。特に安価な民生用ワイヤレス・システムでは音質劣化が顕著でした。しかしXSW-D Portable Lavalier Setは2.4GHz帯を使用したデジタルワイヤレスであるため、音質の変化が最小限に留められており、トーク収録で音質の劣化を感じることは無いでしょう。
なお、XSW-D Portable Lavalier SetはWi-Fi等で使用している2.4GHz帯を使用するため、使用にあたっての免許取得や届け出は不要です。購入したその日にそのまま使うことができます。一方、2.4GHz帯は色々な用途で使われている周波数帯でもありますので、特に屋内で使用する場合は、使用前に音声がワイヤレスできちんと伝送されているかチェックしておきたいところです。
参考までに送受信機間の伝送距離は好条件下で約75mとのこと。インタビューやドキュメンタリーの収録においては十分な伝送距離といえるでしょう。
別売りケーブルを使えばスマホやパソコンで使用も可能

<カールコードなので取り回しが良い>
XSW-D Portable Lavalier Setの出力端子は3.5mmTRS端子なので、デジタル一眼レフやハンディカム、ミラーレス一眼レフなど、3.5mmの外部入力端子を持つ動画収録機器であればなんでも使用することができます。以下の写真のように、古くなったハンディカムにも何ら問題なく取り付けることができました。シューマウントが無い製品の場合は付属のアダプターで取り付けができませんが、一方でかっちりと取り付けなくても使えますので、写真のように挟み込んで持つ、両面テープで固定などでも十分使用できます。

<XSW-D MOBILE CABLEは4極TRRS端子>
注意点は、スマホやパソコン等の場合は同じ3.5mmの入力端子ですが、4極のTRRS端子が採用されているため、XSW-D Portable Lavalier Setに付属しているケーブルでは接続できません。スマホやパソコンに接続したい場合は別売りのXSW-D MOBILE CABLEを購入するか、XSW-D MOBILE CABLEが付属するXSW-D Portable Lav Mobile Kitを購入する必要があります。 XSW-D MOBILE CABLEはスマホやパソコン等で使われている4極TRRSへの変換ケーブルです。
XSW-D Portable Lav Mobile Kitの場合は、SENNHEISER製の堅牢なスマホクランプとPIXIマンフロット三脚も付属するので、スマホで撮影する場合は最初からXSW-D Portable Lav Mobile Kitを購入した方が便利でしょう。
XSW-D Portable Lavalier Setを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。インタビューの高音質化にはマイクが重要。カメラのマイクをSENNHEISER MKE 200等の指向性マイクに変更することも有効な一手ですが、ワイヤレス化もまた有効な手段です。これまで敷居が高かったワイヤレスピンマイクを手軽に導入できるソリューションとしては、これ以上ない選択肢と言える製品だと感じました。
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