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蠱惑の楽器たち 27.音楽と電気の歴史3 レコード2

2021-12-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

今回は円盤レコードについてです。エジソンのフォノグラフに刺激されて、10年後の1887年にエミール・ベルリナーのグラモフォンが登場します。エミール・ベルリナーはなかなかの強者で、ベル研究所において、エジソンの特許から逃れるための電話機の改良案を出したり、エジソンとの特許争いに勝利するなど、ベル研究所に貢献すると共に、エジソンキラーでもありました。レコード産業においては、まさに圧勝というところです。

■ 1887年 グラモフォン(Gramophone)エミール・ベルリナー 

現在の円盤レコードの直系となります。理想を求めるエジソンに対して、市場に合わせて妥協点を見つけるのがうまいベルリナーのように見えます。ベル研究所を辞めてベルリナー・グラモフォン社を設立し、その後100年以上続くレコード産業の基盤を作って行きます。

■ 革新的な量産に適した円盤形状

はじめエジソンの特許を回避するために考案された円盤形ですが、レコードの量産に適していて、ベルリナーは原盤から複製する方法を早々に確立させています。さらに印税の仕組みやレーベルまで構想しています。この時点ではレコードが、どれぐらい大きな産業になるかは想像出来なかったと思いますが、その技術基盤と産業としての仕組みまでも初期の段階で固めていたのは驚きます。発明家以上に実業家であったようです。

■ 革新的な針の振動方向

針の振動方向が垂直のエジソンに対して、ベルリナーは水平です。量産にも有利な形状です。この溝のおかけで、その後のステレオ化にも対応できました。

■ 欠点

回転数が一定のため、外側と内側では音質が変わってしまうという問題があります。エジソンの筒型は、常に一定の音質が得られるという優れた点がありました。円盤レコードを引き継いだCDでは、回転数を変化させることで一定の情報量にするという、強引ともいえる力技によって解決しています。

レコードの外側(直径28cm程度)と内側(直径14cm程度)では半径が2倍程度違いますので、その程度の情報量の差があります。

■ 録音方法

初期の録音方法はホーンから直接行う原始的なものでした。1920年代に真空管が実用化されてからはマイクロフォンを使った録音へと移行していきます。

■ SPレコード盤

グラモフォンではSP盤(Standerd Playing 1887年~1950年代)という規格に統一されました。
直径30、25cmの2種。
回転数は78rpm(単位rpmは1分間の回転数となります)
片面4分半の再生。
材料はシェラック混合物で、強度がなく、盤の消耗も激しく割れやすい材料でした。
このSP盤は現在のLPに置き換わる1950年代まで使われていました。

■ レコード産業の成長

ベルリナー・グラモフォン社は、その後、分離をくり返し、レコードレーベルのRCA、EMI、グラモフォン、ポリドールへと引き継がれています。ちなみにグラミー賞の名前は、グラモフォンの愛称から来ています。

また有名なビクターのニッパー犬のポスターには「His Master's Voice」とありますが、HMVにもつながっていきます。この絵は1889年にフランシス・バラウドという画家によって描かれた絵で、ベルリナーが気に入って1900年に商標登録したという流れとなっています。

ニッパーは、フランシスの兄の飼い犬だったのですが、その兄が亡くなって、フランシスがひきとり、ある日、蓄音機から兄の声が聞こえてきて、きょとんとしているニッパーを描いたということのようです。初めに描かれた絵は録音できるエジソンのフォノグラフで、エジソンに売り込みに行ったところ相手にされなかったようです。後にベルリナーへ売り込みに行ったところ、円盤グラモフォンに描き直すなら買うということで成立したようです。再生専用のイメージが強いグラモフォンだったので、「His Master's Voice」に違和感があったのですが、やはりフォノグラフがオリジナルだったというオチでした。

こうして見ると、ベルリナーが築いたレコード産業の基盤の上に現代の音楽産業があると言っても過言ではないほど、その影響は現代にも轟きます。


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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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