「マイクプリアンプって必要なの?」
と思われている方は、一定数いらっしゃるのではないでしょうか?
・・・僕もその一人でした。
マイクプリアンプというのは、マイクの小さな音量をライン信号レベルまで増幅する機材なのですが、メーカーや製品ごとに音質に特徴をもたせたり、ある程度、音質を調整できたりします。
音質の調整と言っても、ついているツマミは簡単なEQとGAINくらいで、それならミキサーでもできるじゃないか・・・という印象。信号の増幅もミキサーやインターフェースがあれば別になくても・・・などといってマイクプリアンプの必要性がいまいちわかっていなかったのですが、そのことを先輩社員の河西さんに相談すると、 “これ貸してやるよっ”と、ARTのTUBE MP STUDIO V3を渡されました。
ART ( エーアールティー ) / TUBE MP STUDIO V3
TUBE MP STUDIO V3は、12AX7A真空管を搭載した真空管プリアンプで、最大の特徴は、V3回路と呼ばれる特別なボイシングを持っていることです。このボイシングとは、さまざまな入力ソースに対して最適なサウンド設定プリセットの事をさし、ソースに合わせてツマミを回すだけで、プロ仕様のサウンドが得られるという素晴らしい機能です。
というわけで僕が唯一持っているダイナミックマイク「SENNHEISER E906」と、これまた唯一持っているマルチトラックレコーダー「TASCAM DP-008EX」を使って、このTUBE MP STUDIO V3の効果を検証することにしました。
接続は超絶シンプルにSENNHEISER E906 → TUBE MP STUDIO V3 → TASCAM DP-008EXという接続で、試しに自分の声を録ってみました。
結論から言うと、思っていた以上に音が変わります!
ベテランの人でないと分からないような差なのではないかと思っていましたが、僕の耳にもはっきりと分かる音の差がありました。
どのボイシング設定にも共通して言えるのは、声の輪郭がはっきりし明瞭なサウンドになる。ということです。表現の仕方は人それぞれですが、僕の印象としては、「音に艶が出る」と同時に「音がエネルギッシュになる」という印象です。力強いサウンドになる、といってもいいかもしれません。
逆にマイクプリを通さない音を聞いてみると、なんだか音がこもって、ぼやけている印象を受けます。
VOCALというボイシング設定では、歌声を録るのに最適な設定になっているようで、ブレスや繊細な表現が浮き出てくるような感触でした。
WARMというボイシング設定では、その名の通り、中-低域がふくよかに出る、温かいサウンドが出力されます。
真空管を搭載している影響もあるのか、バイパス時に比べて若干ノイズが乗る印象はありますが、音質の向上がそれを補って余りあり、また、出力の増幅も十分得ることができます。
フェイズスイッチやその他のボイシング、ゲインの調整などによる音質の変化についてはまだまだ検証中で掴みきれていないため、今後、更に検証していきます。
TUBE MP STUDIO V3は比較的低価格であるため、エントリーモデルとして捉えられているかと思いますが、それでもこれだけ音質が向上するのであれば、高価格なハイエンドモデルであればその性能は想像に難くありません。
近年はハードウェアではなく、プラグインのソフトウェアが主流になってきていますが、いずれにしてもマイクプリアンプを導入する価値は十分にあるということが今回わかりました。宅録や配信をされるという方は、是非マイクプリアンプを導入してみてください。