
昨年頃からプラグインのEQは、新しい切り口かつ完成度の高い製品が様々なメーカーから多数リリースされています!いずれも見過ごすことのできない強力なものばかりで、私自身もいまだにどれをメインで使っていこうか決めかねている状況です。それはまさに「EQ戦国時代」とも言えるような群雄割拠の様相を呈しています!
個人的に楽曲ごとにメインで使うプラグインを替えながら実験をしていますが、今、そのメイン候補として非常に有力な製品のひとつ「KIRCHHOFF-EQ」を今回ご紹介したいと思います!
KIRCHHOFF-EQは一言でその特徴を言い表すなら「必要な機能を何もかも盛り込んだ全部入りEQ」です。
軽くピックアップしてみただけでもこれだけの機能があります。
- 32バンド・パラメトリックEQ
- 11種類のスロープフィルター
- 実在のデバイスをモデリングした30種類のビンテージEQタイプフィルター
- フレキシブルなダイナミックEQ機能
- 相対的エンベロープ検出
- 4種類の位相モード
- 世界初の117bitプロセシング
- スペクトラム・グラブ
- スイッチ可能な2xオーバーサンプリング
- バンドごとの指向性EQ
- 極限のCPU最適化
- クリックノイズの低減
- ソロモード
- 位相反転
- 自動ゲイン補正
- ゲインスケール
- サイズ変更可能なインターフェイス、フルスクリーンモード対応
- MacOS RetinaおよびWindows high-DPI対応
- ピアノロール表示:バンドの周波数を音程で設定することができるよう、GUI下部にキーボードを表示可能。
- プリEQ/ポストEQ/クロススペクトル
- マルチバンド選択
- 複数の表示範囲 3デシベル、6デシベル、12デシベル、18デシベル、30デシベル
- 出力レベルメーター
- プリセットおよびユーザー定義のデフォルト値
- アンドゥ/リドゥ、A/B切り替え
- VST2、VST3、Audio Units、AAX Native(64ビット)に対応
- フローティングウィンドウ:EQカーブ上のハンドルの上にアイコンが表示され、Q値、モニタリング、スロープの調整が可能。
すごい数ですが、多機能でありながらも、その機能のひとつひとつがしっかり作り込まれていると感じます。闇雲にたくさん機能を網羅しただけのものではないことを使い始めてすぐに理解しました。
上記機能をすべて解説しきるのは難しいですが、個人的に気に入った機能をピックアップしてご紹介していきます。
計41種のEQカーブ
デジタルEQのカーブは、一般的なShelvingやHi-pass、Band-Passなどはもちろん、より鋭角な山を作るSwordや、指定した軸を中心に綺麗な傾斜を作るFlat Tiltなど、少々特殊なカーブまで用途に合わせて手広く選べるようになっています。



さらに、KIRCHHOFF-EQの目玉とも言える、30種ものビンテージハードウェアEQを再現したカーブを選択することができます。「Brit N」や「Console E」など、その名前からもモデルとなった名機が連想されますが、選択すると見た目もその実機と似たものになり気分がアガります。
個別に特定のハードウェアをエミュレーションしたプラグインは多数ありますが、これを一つのEQに盛り込み、なおかつバンドごとに別々のモデルを選べるというのは極めて画期的!
例えば、余分な帯域はデジタルのEQでシャープにカット、おいしい音域はビンテージEQで温かみを加えたり艶っぽさを際立たせたり、といったことも可能となります。実際のサウンドもそれぞれハードウェアの特徴がしっかり出ていて、楽器や楽曲に合わせて使い分けしやすいです。

設定を細かく追い込めるダイナミックEQ

個人的にはダイナミックEQはよく使うので、EQ選びでも非常に重視する機能の一つです。
ダイナミックEQとは、入力信号の起伏に合わせてリアルタイムにEQをブーストしたりカットしたりできる機能。例えば特定のタイミングで低音が出すぎてしまう箇所があった場合に、出すぎてしまった瞬間だけ低音を抑える、といった動作が可能です。
KIRCHHOFF-EQでは、この設定をかなり詳細まで追い込むことができるようになっています。コンプレッサーなどのパラメーターと同じようにアタックやリリースも設定できるため、音色変化の微妙なタイミングをコントロール可能。また、「Below」と「Above」の2モードがあり、どこからどの程度ブースト/カットするかなども柔軟に対応してくれます。「Detect」や「Relative」で実際にダイナミックEQをかけるのと別の帯域をウォッチするよう設定できるなど、本当に細部までかかり方を制御できます。
そのため、他にもボーカルのキンキンする帯域を抑える「ディエッサー」としての用途などにも最適です。

さらなるクオリティ・アップを実現する各モード
サウンドのクオリティをより高めるための各種モードも充実しています。
場面によってEQにどこまでのクオリティを求めるかも異なるため、このような選択肢が充実しているのは大きな強みです。
■ 4種類の位相モード
位相の特性を4種類の中から選ぶことができます。これによって、スムーズでレイテンシーの少ない動作を優先させるか、負荷をかけてもアナログの実機に位相を近づけるか、など選択することができます。

■ 世界初となる117bit処理
標準の64ビットに対して、より精度を高めた117ビットへ切り替えて使用することも可能。わずかな差ではありますが、クオリティをより追及したい時に有力な選択肢です。
■ 2xオーバーサンプリング
2倍のオーバーサンプリングモードを自由にオン/オフすることが可能。よりノイズの少ないクリアな処理を行えます。

痒い所に手が届く便利機能
さらにミックスの精度を上げていくための便利機能も非常に充実しています!
■ スペクトラム・グラブ
スペクトラム・アナライザー上でピークを見つけたら、そのピークをつかんでドラッグするだけで簡単にカットが可能!スペクトラムを見ながらサクッと調整したい時に便利です!

■ ソロモード
最近では搭載されているEQも多いですが、調整中の帯域を単独で確認することが可能。自分がどの帯域を調整しているか一目瞭然となるため精度アップに貢献します。

■ バンドごとの指向性EQ
ステレオトラックの片側だけ調整したり、M/S処理でMID、SIDEを別々に処理できます。

■ ピアノロール表示
EQの画面の下部にキーボードを表示させることで、帯域の音程を確認できます。例えばボーカルのどの音程で膨らんでしまうか、など把握するのに便利です。

まとめ
特筆すべきポイントが本当に多いEQなので、個人的にももっともっと時間をかけて使い倒していきたいです。純粋にEQとしての効きも良く、狙った通りに正確に、シャープに効いてくれます。そういった基本性能としても信用できるものになっています。通常であれば複数のプラグインで実現するところをこのプラグイン一つでできることが増えるため、よりシンプルな手順で理想のサウンドへ近づけることが可能となります。平常時の動作も軽く、使用するPCスペックによるところはありますが、筆者のMacBook Proでは通常使用であれば全トラックに挿すような使い方でも問題ありませんでした。
実用面も含めてトータルで見ても、間違いなくメインで使えるEQと断言できます!
多機能でもインターフェイスはすっきりしているため迷うことも少ないですし、各種サポート機能が充実しているため初心者の方にもぴったりです。その一方、細部まで追い込みたいプロフェッショナルの方にもその作りこまれたディテールをぜひ体感していただきたいです!
つまり、どなたにもおすすめしたい、極めて懐が深い決定版EQプラグインです!