バンド活動やサークル内で作曲をしていると、メンバーにデモ音源やアレンジ案を共有する機会は多いですよね。特にドラムパートは楽曲の骨格を形作る重要な要素であり、ドラマーにアレンジを任せたい場合や、細かなフレーズのニュアンスを詰めたい場合には、オーディオデータだけでなくMIDIデータを共有するほうが便利な場面が増えてきます。
しかし、ここでひとつ大きな問題が生じます。それが「ドラムマップの違いによる再生のずれ」です。
ドラムMIDI共有の落とし穴
アレンジがほぼ固まっている段階であれば、2mix音源やパラデータをそのままメンバーに渡せば事足ります。ですが、デモ段階でドラマーに「ちょっとアイデアを追加して欲しい」「このフィルだけ調整して!」というような場合は、MIDIデータを渡してDAW上で直接編集してもらえると非常に効率的です。
ところが、メンバー全員が同じドラム音源を使っているとは限りません。
むしろ、LogicやCubase、Studio One など、それぞれのDAWに付属する純正ドラム音源を使っているケースのほうが普通でしょう。また、サードパーティー音源を使っている場合も、Addictive Drums、Superior Drummer、EZdrummer など種類はさまざまです。
そして音源ごとにドラムマップ(どのMIDIノートにどのパーツの音が割り当てられているか)が異なるため、そのままMIDIを渡すとまったく違うグルーヴになってしまうことがあるのです。
例:AD2で作ったビートをLogicで鳴らすとどうなる?
実際に、Addictive Drums 2(AD2)で打ち込んだシンプルな8ビートを、Logic Pro の純正ドラム音源に差し替えて鳴らしてみるとどうなるでしょう。
■ AD2のドラムマップで作った8ビート
■ AD2のドラムマップのままLogicのドラム音源に読み込ませた場合
結論としては、
- ハイハットがタムに化ける
- フィルが崩壊する
といった問題が起きます。
つまり、フレーズの意味がまったく変わってしまうわけです。
ドラムは楽曲のリズム的な土台ですから、崩れてしまうとデモの意図すら伝わらなくなってしまいます。
そこで出てくるのが「GMドラムマップ」
この問題を解決する最も一般的な手法が、GMドラムマップを使用して打ち込む方法です。
● GMドラムマップとは?
GMドラムマップとは、MIDI音源の標準規格である「General MIDI」(GM)で定められた、ドラム楽器の音色割り当て表のことです。
これにより、異なるメーカーのMIDI音源を使用しても、同じ演奏を同じように再生できるようになります。
● 多くのドラム音源にはGMドラムマップが搭載されている
大抵のドラム音源ソフトには、内部のドラムマップをGMに合わせる設定が用意されています。

※AD2は設定でGMマップに変更可能
実際にGMドラムマップで打ち込んでみる
試しに、AD2のマップをGMに変更したうえで8ビートを打ち込み、それをLogicに読み込ませてみます。
■ GMドラムマップに変更してAD2を打ち込んだ音源
■ 上記の打ち込みデータをLogicに読み込ませた場合
結果はほぼ同じ内容で再現されました。
もちろん音源が違うので完全一致とまではいきませんが、意図したビートを共有するには十分な精度です。
GMドラムマップの強みと弱み
しかし、GMマップにはメリットだけでなくデメリットも存在します。
● GMドラムマップのメリット
- 異なる音源環境でも再現性が高い
- DAW純正音源でも問題なく鳴る
- デモ段階の共有に向いている
● GMドラムマップのデメリット
最大の弱点は、表現の細かさが犠牲になるという点です。
たとえば AD2 の場合、ハイハットの開き具合がCloseとOpen合わせて8段階でコントロールできるのに対し、GMではOpen / Close の2種類なので、表現幅が極めて限定されます。
つまり、本制作段階での細かい打ち込みには不向きというわけです。
実践的な使い分け
以上を踏まえると、GMドラムマップは以下のように使い分けるのが最適です。
● GMドラムマップが向いている場面
- 曲のデモをメンバーに共有する段階
- ドラマーにアレンジを依頼する初期フェーズ
- 異なる音源を使っているメンバー間でMIDIを共有する場合
- DAW純正音源でとりあえず鳴らしたい場合
● GMドラムマップが向いていない場面
- 本番用アレンジを作る時
- 音源の持つニュアンスを最大限生かしたい時
- 細かなベロシティやアーティキュレーションを作り込みたい時
まとめ
GMドラムマップは、異なるドラム音源環境でもフレーズが崩れにくいという大きな利点があります。バンドやサークルで曲を共有する際、デモ段階での打ち込みには非常に相性が良く、ドラマーとのコミュニケーションもスムーズになります。
一方で、ニュアンス表現が制限されるという弱点もあるため、最終的な制作段階では音源側のオリジナルマップに切り替え、細かなアーティキュレーションを詰めていく必要があります。
状況に応じてぜひ使い分けてみてください。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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