今回の鍵盤狂漂流記はコルグのKingKORG NEOの仕様、使用リポートの最終回です。
前回はKingKORG NEOの音源部分であるオシレーターとフィルター部分を中心にリポートしました。
コルグKingKORG NEO 操作パネル俯瞰写真(私物)
■ KingKORG NEOはバーチャルアナログ・シンセ。フィルター設定の後は
KingKORG NEOの豊富な波形、豊富なフィルター機能は前回でご紹介しました。
オシレーターとフィルターだけでも十分「買い」なシンセサイザーであることをご理解いただけたと思います。
シンセサイザーはオシレーターとフィルターで音色のベースを決めた後は、その音色にビブラートなどの変調をかけます。この揺らぎのスピードを担うのがLFO(ロウ・フリケンシー・オシレーター)です。
オシレーターの変調はビブラート効果であり、フィルターの変調はワウ(グロール)効果、アンプの変調はトレモロ効果になります。そのスピード(FREQ)と変調の深さ(INTENSITY)の設定をLFOで行い、音に表情を作ります。
LFOでビブラートなどの音色の変化を設定(写真 左中央部分)
■ 音の立ち上りと減衰をADSR、エンベロープ・ジェネレーターで設定
LFOで音に表情を付けると同時に音の立ち上がりと減衰をEG(ADSR)、エンベロープ・ジェネレイターで設定します。
EG(エンベロープ・ジェネレイター)とLFO
EGはエンベロープ・ジェネレイターの略でADSRはA(アタック)、D(ディケイ)、S(サスティン)、R(リリース)をそれぞれの頭文字を略したものです。例えばギターやパーカッションなどは音の立ち上りが早い楽器なのでアタックタイムは0付近に設定します。弦楽器やホルンなど、ホーン系楽器などは音の出るまでの時間はギターに比べ長いでアタックタイムは遅めになります。一方、ギター音は早く消えてしまうのでリリースタイムは短くするなど、楽器の特性や自分イメージする音の立ち上る時間や音が消えるまでの時間などをEGで設定します。
■ 音の最終仕上げをする充実したエフェクト群
音がほぼ決まった状況で次のプロセスはエフェクトをかけることです。KingKORG NEOはPRE FX、MOD FX、REV/DELAYといった3系統の独立したエフェクトを搭載しています。
PRE FXはアンプシミュレータやディストーション、リングモジュレーターといった上流部でかけるエフェクト。MOD FXはコーラス、フランジャー、フェイザーなどのモジュレーション系、そしてREV/DELAYがリバーブやディレイといった残響系のエフェクトです。
エフェクトもとても整理された形で操作パネルにレイアウトされているため、信号の流れが理解しやすくコルグのユーザーファーストへの思想を垣間見ることができます。
3系統のエフェクトの下流部分には独立したEQ(イコライザー)も搭載。このイコライザーを使うことで音に変化をつけることが可能です。
このタイプのシンセサイザーは音を作った際に、もう少しローがあればとか、ハイをもう少し際立たせたいなどと感じることがあります。そんなときにイコライザーを少し加えるだけで理想の音に近付けることができます。
整理されたレイアウトの3系統独立のエフェクト(写真上部)
■ 充実した使い勝手のいい3系統エフェクト!
まずアンプシュミレータPRE FXはコルグの伝統的なエフェクトで私が所有しているピアノ系鍵盤の名機であるSV‐1の頃から搭載されているエフェクトです。
エレピアンプやギターアンプなどをシミュレートでき、音のニュアンスも大きく変わるため、楽器の出色を意識してこのPRE FXを使うことで頭に描いた楽器に近付けることができます。
次はモジュレーション系エフェクト、MOD FXです。
フェイザーやコーラス、フランジャーといった定番種を備え、音に揺らぎ的変化を加えることができます。
最後は残響系のエフェクトであるリバーブやディレイです。
テープエコー、ディレイなど6種。リバーブはホール、プレート、ルームといったスタンダードなカテゴリーで空間の大小を演出する残響はほぼ網羅しています。
MOD FXは深さ(DEPTH)とスピード、REV/DELAYは深さ(DEPTH)と残響時間(TIME)を決めることができ、バリエーション豊富な残響を演出することができます。
■ 使えるジョイスティックについて
もう1つ特筆すべきはジョイスティックの操作性の高さです。NEOにはホイールではなく、ジョイスティックが付いています。このジョイスティック、購入当初は頼りなく感じましたが実際にベンディングをしてみると、非常に操作がしやすいのです。実際、ホイールタイプのものより使いやすと感じました。なんといっても、ピッチベンドとモジュレーションが同時に操作できるのが魅力的です。
ホイールタイプでギターのチョーキング・ビブラートをシミュレートした場合、ピッチベンド・ホイールでピッチを上げ、モジュレーション・ホイールでビブラートをかける作業が必要で、ホイールを2つ同時に操作する必要があります。それがいとも簡単にできるジョイスティックはとても便利な装置であると思います。
高い操作性のジョイスティック
■ KingKORG NEOのオールラウンドな使用に耐えうるバーチャルシンセ
KingKORG NEOはシンセサイザーに初めて触るビギナーにも分かりやすく、アナログシンセサイザーの知識さえあれば誰もが操作しやすい楽器です。
一方、本格的な音作りにも対応していて、かなりマニアックな音作りをしたいユーザーも満足できる内容になっています。
そういう意味ではビギナーからシンセ経験豊富な方まで、幅広いニーズに耐えうる機材であると私は考えています。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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