ボカロP。それは、初音ミクをはじめとしたVOCALOIDを使って楽曲を制作し、世に発表する人々。
誰もが納得できる定義のように思えますが、じつはこの常識が近年、少しだけ変化しているのです。というのも、ここ数年でVOCALOID以外にも、CeVIO AI、Synthesizer Vなど、多くの歌声合成ソフトが台頭してきたためです。つまり、「ボカロ」という言葉が、広い意味で「バーチャルシンガー全体」を指すのに使われるようになったわけですね。それにならって、この記事でも「歌声合成ソフト全般」を「ボカロ」として表現しますのでご留意ください。
以前であれば、「ボカロはミクかGUMIか、はたまたflowerか」「無料で使うならUTAU一択!」といった状況であったことを考えると、ボカロPの間口はかなり広がったように思います。
ところで当の筆者はといえば、ボカロPとは名乗っていないものの、ボカロの一種である「VoiSona」を使った楽曲をいくつも投稿しています。その意味で、VoiSonaは私の音楽活動において、なくてはならない物になりつつあります。
そこで今回の記事では、筆者愛用のVoiSonaについて、その特徴や魅力、おすすめのライブラリなどをお伝えしていこうと思います。
「これからボカロPを始めたい」あるいは、「今のボカロ以外も使ってみたい」と考えている方に、ぜひ読んでいただきたい内容となっています。
VoiSonaとは

そもそも「VoiSona」とは、株式会社テクノスピーチが開発したAI 歌唱ソフトウェアです。テクノスピーチは、可不や星界などのバーチャルシンガーを擁する「CeVIO AI」を開発した企業です。VoiSonaも、はじめは「CeVIO Pro」という名前でα版がリリースされておりましたが、この2つは互換性がないのでご注意ください。
VoiSonaの特徴は、以下のとおりです。
01 人間らしい歌声
AI技術を用いていて、人間の歌声を緻密にシミュレートします。ブレス(息継ぎ)やビブラート、しゃくりなどの表現が簡単にできるため、自然で滑らかな歌唱が好みの方には、ベストチョイスになるかもしれません。 その代わりに、VOCALOIDが得意とする、人間には無謀に思えるハイトーンや早口、息継ぎなしの歌唱は難しくなっています。
どちらが良いか・悪いかではなく、自分のしたい表現に合わせてボカロを選ぶことが大切です。もちろん、好きなボカロPさんと同じものを使うというのも、モチベーションに繋がるので良いですね!
02 DAW上でも、スタンドアロンでも動く
同社が先んじて発表していたCeVIO AIは、DAWのプラグインとして使うことができませんでした。ここを改善したのがVoiSona。VST/AUとして、Windows/Macを問わず使用することができます。
もちろん、スタンドアロンでの起動も可能なので、各ボカロPのスタイルに合わせて使えます。実際に筆者は、VST・スタンドアロンを半々くらいで使っています。
03 基本無料、ライブラリはサブスク形式
VoiSonaは、エディターソフトだけでなく、デフォルトライブラリの「知声」まで無料で使えてしまいます。無料だからといって侮ってはいけません。詳しくは後述しますが、知声は他のライブラリと遜色ないクオリティを叩き出しています。
知声以外のライブラリはサブスク形式となっており、複数のシンガーでデュエットしたり、気分に合わせて使い分けたり、はたまた制作期間の間だけ使用できるようにしたりと、かなり柔軟な運用が可能となっています。
注目ライブラリ
ここまでに述べてきた特徴が肌に合うという人は、段々とVoiSonaに興味が湧いてきたことでしょう。
そこで最後に、VoiSonaの個人的再注目ライブラリ3選を紹介します。
01 知声(ちせい)
筆者お気に入りのライブラリです。制作した曲のほとんどに知声を採用していて、この曲もそのうちの1つです。
使用していて感じるのは、知声は大人びた雰囲気の曲から、少し幼いような曲まで歌いこなせてしまうということです。
筆者は、Aメロなどで使われることが多い、少し低めの音程での歌声が好きです。芯があり、感情がのっている感じがします。
音域が高くなっていくと、かすれや裏返りが目立ってきてしまうので、歌詞の前に「※」を入力することで適用できる「ファルセット(裏声)」を使うと良いでしょう。筆者はこの機能を知らなかったので、高音部の上手な表現ができていませんでした……。
ちなみに、知声は英語版のライブラリも登場しているので、チェックしてみてください。
02 機流音(きるね)
ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんをCVとして迎えたライブラリです。ボカロは女性のライブラリが多くなりがちなので、男声が欲しい方におすすめです。鬼龍院さんのファンの方も要チェックですね!
個人的には、サビなどで使われる、地声の張り上げるような高音がとても好みです。このような特徴が、ロックなどの楽曲にもマッチするのではないかと思います。
このデモでは、VoiSonaに搭載されたAIの優秀さがよく分かります。サビの「つらいよ」部分のロングトーンは、一切編集していないにもかかわらず、とても自然な音程の揺らぎがあります。ボカロPを始めたばかりでも完成度の高いボーカルパートを作れるのは、大きなアドバンテージになります。
03 #kzn(キズナ)
最後に紹介するのは、キズナアイの声から生まれたバーチャルシンガー、「#kzn」です。
この曲は#kznを使って制作されているのですが、なんとそのままアニメのエンディングテーマになっているのです!
スリープ中のキズナアイの代わりに、みんなが繋がるためのハブ役として発表された#kzn。その目的を達するのに十分すぎるほどの完成度を見せつけてくれたと思います。
#kznは可愛らしい声が特徴なので、同じように可愛いアイドルソングに合わせたくなるものですが、この楽曲ではあえて激しめの曲にも挑戦し、振り幅の広さを証明しています。王道のポップソングを作るのには欠かせない存在になるかもしれません。
STEINBERG ( スタインバーグ ) / Cubase Artist 12 通常版 VoiSonaコラボ限定パッケージ
サウンドハウスでは、国内シェアトップの人気DAWソフトCubaseに、「#kzn」の1ヶ月サブスクリプションがバンドルされた商品を取り扱っています。DAWを買ってすぐにボカロに触れたいという人には特にオススメのパッケージとなっています。
#Kznで作った楽曲を通して多くの人々が繋がれば、それはとても嬉しいことだと思います。
おわりに
今回の記事では、私が愛用する音声合成ソフト、「VoiSona」を紹介してきました。
VOCALOIDをはじめとする多くのライバルがひしめく戦場の中で、VoiSonaは着実に存在感を増しています。
気になるシンガーが見つかった方も、そうでない方も、まずは一度お試しください。エディターだけでなく、知声のライブラリも無料で使用できてしまいます。
お金がかかるからボカロPを始められない。そんな方はぜひ知声と、そしてVoiSonaと、新たな一歩を踏み出してみましょう。
今回もありがとうございました。
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