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弦という沼底・2弦【ネモト×Cheenaコラボ記事】

2021-09-25

テーマ:sound&person

弦という沼底・2弦【ネモト×Cheenaコラボ記事】

Cheena:弦沼の話、第二回なので2弦ということにしてみました。
今回も泥沼トークが始まります。

〜プロフィール〜

Cheena:D’Addarioの張力計算ソフトによくお世話になるが、D’Addario弦をそうそう使わないという問題点を抱えている。つまりひやかし。
→ Cheenaの記事一覧

ネモト:色んなコントラバス弦を試したいが、資金面に難ありでなかなか出来ず。エレキでいうところのダダリオやアーニーボール並の定番弦が2万くらいします。 サウンドハウスさんプレテクバス弦はよ。
→ ネモトの記事一覧

Cheena前回は弦振動の理論に入ろうとして止まったんですね…
簡単に説明しておきましょう。
まず、弦振動は以下の式で算出できます。
F=2L√(S÷ρ)
F[Hz]が振動数、L[m]は弦の長さ、S[N]が張力、ρ[kg/m]が弦の密度です。
ここに「ゲージ」あるいは「太さ」の概念はありません。代わりにρが弦1メートル当たりの重量を示し、ゲージが増える=太くなると重量が増すので、同じ張力でも音程が下がるわけですね。
さらにいうならば、ゲージの概念は要するに外径の見かけの太さです。心線の太さや巻き線の太さは考慮されていないわけですね。ここで、画像の示す

  • 上、巻弦を施したワウンド弦
  • 下、同じ外径だが線一本で構成されるプレーン弦

となると後者の方が密度が高いのが見て取れますね。この芯線や巻弦の密度と、後述する素材のばらつきが弦メーカーによりわずかに張力が変わる理由だと考えられます。
ちなみに張力とペグやテイルピースからの進入角が分かるとナットやサドルに掛かる圧力も計算できるんですが、ここまで来ると本当に危ないのでやめておきます。

ネモト:正直、弦の話で材料物性の話まで突っ込むことになるは思わなかった。そこまではいかないと思っていたw

Cheena:圧倒的に、沼底です。

ネモト:今回はアカデミックになりそうな予感。
どういう風にやる?
弦に適した物性の話?ニッケル、ステンレスに続く第三極とは何かを探す?

Cheena:語り合えるような範囲で何かいいものは…やはり素材の話ですかね。
前回は構造寄りの話が多かったので。

ネモト:そうしましょうか。
前回書き忘れていましたが、弦の材質にはモネルというニッケルと銅の合金もあります。フラット弦に使われるイメージ。

Cheena:巻弦の基本的な素材は

  • ニッケル、鉄、クロム、銅、銀、金

添加材が

  • 錫、リン、その他

場合によりこれを組み合わせて出来ていますね。例えば

  • 鉄+クロム合金→ステンレス
  • 銅+錫→80:20ブロンズ
  • 銅+錫+リン→フォスファーブロンズ
  • ニッケル+銅→モネル

などがあり、その混合比で先程の弦密度や音質が変わってくるというところです。
ちなみに常温時の立方cmあたりの密度は以下の通りです。

ニッケル 8.9g
鉄 7.9g
クロム 7.2g
銅 9.0g
銀 10.5g
金 19.3g
錫 7.3g
合金類に関しては、概算になりますが
ステンレス(鉄85%-クロム15%) 7.8g
ブロンズ(銅80%-錫20%) 8.7g
モネル(ニッケル65%-銅33%-鉄2%) 10.0g

となります。こちらは配合が変わって来れば密度も変わるためそのまま楽器関係に使用できる値ではないですね。

ネモト:合金の世界は本当に面白く深い。
ステンレスでいうとケンスミスのステンレス弦はニッケルも配合されていると表記されており、ほぼ間違いなく「オーステナイト系」であるといえるでしょう。
代表的なSUS304はクロム18%、ニッケル8%、残りは鉄という組成になります。加工性を考えると1番向いているんじゃないのかな…?
エリクサーはそれなりに硬いのでSUS430あたりで作られてるのかな。

規格で組成を定められたステンレスの話をしましたが、弦に使うものは規格化されたものではないものの可能性もあります。
バイクのフレームなんかだとクロモリ(クロム、モリブデンを添加した鉄)が多いですね。クルマは違うけど。
目眩く特殊鋼の世界のうち、刃物鋼ならステンレス鋼でも安来鋼でも工法でもそれなりに語れるけど、弦の材料だと思い浮かぶ鋼はどれも特性的に向かないだろうから今ひとつ語れないという偏った知識を持つ私です…。

改めて考えてみると真鍮や洋白みたいに管楽器に使われる材って弦にはあまり使われないね。

Cheena:ブラス(銅-亜鉛合金、亜鉛20%以上)はアコギ用にありますね。ただのブロンズよりメタリックで煌めく音がします。
ニッケルシルバー(銅-亜鉛-ニッケル合金、銅が50%から70%付近)ですが、エレキ用はかなりレアだけど出てはいます。

むしろバイオリン弦が優勢ですね。

ネモト:バイオリン弦は知らんかった。私もまだまだだなー。
コントラバス弦の場合奏法に合わせて設計された弦もある。具体的に言うとスラップ用の弦。張力が⅔くらいまで軽くなってるから練習不足の身体に優しい。
ピチカートに向いた弦、アルコに向いた弦もあるんだけど、スラップ用と比べるとそこまではっきりした違いはない。發弦と擦弦じゃ立ち上がりやサスティーンが違ってくるからそれに合わせて変えてる感じかな。

Cheena:張力が2/3って結構な数字ですね。素材なのか密度なのか…

ネモト:私にとっても謎。それもあるから買ったらそれはもうじっくりと張る前に観察する予定。

Cheena:計算上は弦密度だけが2/3になれば張力も追随するのかな。となると結構細い弦になるけど、その分音量は出づらいんですよね。どうなってるんだろう…

ネモト:買った時のお楽しみに、ということで。というか見なきゃわかんない…。

Cheena:ですよね…
そういえばコーティング弦の話あんまりしてませんけど、します?

ネモト:やりましょうか。大別すると樹脂コーティングと金属コーティングに別れるね。金属コーティングって要はメッキじゃね?と思わなくもない。
樹脂だとエリクサー、金属だとオプティマが代表かな(個人の感想です)

Cheena:Optima、24金コートの弦ですね。サウンドハウスでは金メッキ弦と明記されています。

ネモト:音は普通だった(強い印象はない)のと結構コートが剥がれやすかったかな。プレベに張ったら結構似合ってたような。大分前に1度使っただけでそれ以降リピートしていないので全体的に曖昧…。

Cheena:ブラックゴールドのプレベ、ホワイトファルコン、レスポールカスタムなんかには合いそうですねえ。
ちょっと試してみようかな。フレットレスなら余計剥がれづらいじゃろ。

ネモト:いいんじゃない?数少ないゴールドカラーだし。

Cheena:全然関係ないけどレスポールカスタムにフォスファーブロンズ弦は合います。
それはそうとして、コーティングの目的は

  • 錆止め
  • 潤滑

が第一で、結果としての長寿命化、フレット減り量の減少があるわけで、副作用として

  • 音質の劣化

がありますよね。
これを一挙に解決できる処理ってあるんでしょうか…

ネモト:弦用の潤滑剤。
→ オイル/クリーナー 一覧

いくつかの商品レビューを見てみたけど、音について言及したものはなかった。比較したレビューを読んでも内容は値段や使い心地ばかり。Aの音が嫌いなのでBにしました、みたいなレビューは見当たらない。
つまりみんな「潤滑剤で音は変わらない」という前提がある。それが事実であるかは別として。
潤滑剤は錆止めと潤滑効果はあるが音が変わらない(とみんな思っているし私も思ってる)から潤滑剤を使うことをコーティングとすれば一挙に解決できる。
だから私が新しいコーティングを開発しろと言われたら長持ちする潤滑剤を開発して売るかな。超簡易コーティングとでも銘打って、コーティング弦より長持ちしないのでこまめに使ってくださいと言えば売れると思うよ。卑怯というか、こういう斜め上の答えを期待していないと思うけど…。

Cheena:まあ確かに間違いない答えではありますけどね。
これも斜め上の回答ですけど、こういった蜜蝋ワックスで錆止めを行うという手法もあります。

ねこだまり工房 ( ネコダマリコウボウ ) / 自家製クリア蜜蝋ワックス

ネモト:ほー。面白いかも。 でも変質というか酸化したワックス落とすの大変なんじゃないかな?どうなんだろう?

Cheena:落とす方は灯油なりライターオイルなり使えばいけますね。
結果、日頃のメンテナンスを怠らなければ大丈夫、という面白みの欠片もない答えになってしまいましたが…

ネモト:油で洗えばいいのか。言われてみれば確かに。
面白みはないけど、コーティングだとどうしても物性変わってしまうから難しいよね…。
黒錆加工でもやればいいのかな?と思ったけど多分音変わるだろうし…。

Cheena:ステンレス弦ですら錆びるし音の煌めきも消えてくし、もはや宿命として受け入れるしかない部分でもあるんですけどね。
でも黒サビ加工とかアルマイトされた弦は見たいかも。

ネモト:黒錆はそんなに難しくない、というかどこのご家庭にもあるものでできるから弦交換する時に古い弦でやってみようかな。上手くいったら新品の弦でやる。

Cheena:試す場合はスチール弦がいいですかね。パーツ作るときもやってみよう。
しかしアルマイトはご家庭でって訳にいかないのが残念ですね…

ネモト:わざわざ言う必要はないと思うけど、脱脂には気をつけましょうね。
アルマイトは確かに難しいね。近所の鉄工所にもないからツテも見つからない。

Cheena:まず前提としてアルミ弦が必要になりますし…無理っぽいな。やはりメッキ程度で止まっておこう。地獄を見る。

ネモト:メッキでも自分でやるなら相当なものだけどな…。とりあえず黒錆加工をやってみようか。

Cheena:タンニンと酸で処理するんでしたね。めちゃくちゃ煮出した紅茶か緑茶を使い、酢を2-3割混ぜて炭素鋼を放り込み1時間放置。
って、ここで一番難しいのが使える弦探すことでは?と思ってしまいますが…

ネモト:とりあえずテキトーにブチ込む。これしかない。私は以前赤錆が発生した弦を見たことがあるんだけど、赤錆が発生するならば結構な確率で成功すると思う。赤錆の上書きをするような形で黒錆加工することも多いからね。
ステンレス弦の方が望み薄だと思うけどやってみないとなんともね。

Cheena:数打ちで試すしかないですね。ご家庭コーティング弦。

ネモト:どうせ廃棄予定のものだし危険もないから気楽に試せていいね。読者様もどうぞ。

Cheena:実験してみてうまくいったらまたここで紹介しましょう。
さてさて、ここまで弦やコーティングの材質や機能について語ってきました。
これ以外に何か沼っぽい場所ありますかね?探せばいくらでも出てくるのはそうなんですが…

ネモト:軽く考えてみたけど思いつかないかな。ここらで締めましょうか?

Cheena:ですね。また凶悪なネタが出て来たら紹介しましょう。
ありがとうございました。

ネモト:ありがとうございました!

 

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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