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回路の世界を語りたい~特殊配線とアクティブ回路の研究~【ネモト×Cheenaコラボ記事】

2021-03-29

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

Cheena:前回のピックアップ編から続き、今回は回路編です。 既存の特殊配線から2人がカスタムした回路まで、奇抜なものが飛び出しますよ。

〜プロフィール〜

Cheena:大量についたノブやスイッチの見た目が大好きだが、同時に洗練された操作系の楽器も愛している。よく頭のおかしい密度の配線をしている。
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ネモト:アクティブ大好き。ノブやスイッチがたっぷり付いていると安心感を得る。とか言っておきながらジャック直結、ボリュームすらないパンクなサーキットも好んで使う。
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Cheena:やっぱりピックアップを選んでいるとサーキットにもこだわりたくなりますよね。 私が制作する時はサーキットには可能な限り複雑に技術を詰め込むと決めているんですが、やっぱりメーカーの作った高級なプリアンプやEMGの提示する回路系にも魅力がありますね。

ネモト:サーキットも悩むね。スペックシートだけだとわからない事、例えばコントロールの効き方。ピーディックが普通だけどシェルビングもあったりするし、覆い尽くすかのようなエグい効き方をするようなものや原音重視のものもあるから載せてみないとはっきりとはわからない。 EMGやバルトリーニは、試してみるとさすが売れてるなと思うよね。

Cheena:EMG、確かに良い回路なんですけどユーザーの半田付けの腕を信頼していないのがひしひしと伝わってくるのが面白すぎますね。 残念なのはあの統一規格のせいでジャガーなんかの多スイッチ機には積みづらいことです。 改造ぽしゃると専用パーツは高いし、かといってピックアップを買えばポットもワイヤーも付いてくるわけでどうしたらいいのか…

ネモト:ユーザーの腕を信じていないという視点はなかった(笑) 全部かはわからないけど途中でぶった切れば普通のスイッチやポットにも使えるからEMGを普通のサーキットに組み入れることはできるよ。EMGは面白いよね。下半分にプリアンプを組んであるからパッシブでもパワーがある。古参メーカーらしい謎さよ。

Cheena:切れば普通に使えますね。それかジャンパー線でも用意すればいいのかな? EMGの内蔵プリは他のピックアップには見られない特徴ですよね。 中華ベースプリ+EMGとかの組み合わせだとどうなるんだろうか。

ネモト:他社のプリアンプとEMGを組み合わせたメーカーはある。泣く子も黙るフォデラ、というかヴィクター・ウッテンだ。 でも全く浸透してないから他のメーカーを混ぜると中華プリに限らずあんま良い音しないんじゃないかな。 バルトリーニはEMGに対応してるけどやってる人ほとんどいないし…。

Cheena:そりゃあ各メーカー、それぞれのピックアップ用にプリも調整しますよね… とは言っても、EMG After Burnerなんかは他社製ピックアップにもマッチしますよね。 機能がシンプルだからかなぁ。

ネモト:シンプルなEMGは良いなぁ。 私のベースにEMG載せてるやつあるんだけど、プリアンプ増設する前の方が良い音してたんだ…。 なんかシャクだから戻してないけど。

Cheena:時にネモトさん、プリアンプの主要メーカーはバルトリーニ、EMG、セイモアダンカンやESPなど色々ありますけど、ネモトさんが今まで買った中で一番強烈だった効きのプリは何ですか? 私はAmazonで買った安物のベースプリですが...

ネモト:うーん…。 1番印象に残っているのはアリアのジャパンビンテージに乗ってたやつかなぁ。 裸の基板をスポンジで包んだ適当な作りのやつ。多分メーカー純正だと思うけど自信はない。 ダンカンSTK-2との組み合わせだったんだけど、これがまぁエグい。あれほどギャンギャンうるさいハイはなかなかないし、アクティブなのにノイズ乗りまくってかすれ声で叫んでるみたい。あれはすごかった。今まで出会ったことない代物だった。 音もそうだけど物理的な劣化が酷くてEMGに変えちゃった。一瞬で使いやすくなったね。 既製品だとアギュラーOBP-1かな。バルトリーニはコントローラブルな感じがして全力でブーストしても割れも歪みもなるだけ抑えて体裁を保ちたいって印象があるけどアギュラーはそんな意思はなく割れても歪んでも入力された通り躊躇いなく上げる感じ? アギュラーの方がクセの少ないベース本来のポテンシャルを出せると言えるかもね。私はバルトリーニ派だけど。 最近新しいプリアンプ買ってないからデラノやパイクみたいなニューフェイスは知らないのでそこらは考慮してください。

Cheena:ハスキーな音のプリ、なかなか楽しそうですね。エフェクターとして外部に置いておきたいぐらいだ。 Delanoは気になりますよね。ピックアップもサーキットも格好いい。 あと私が買ったYibuyのベースプリ(1000円ぐらい)なんですが、ハムがシングルになったり手元で歪みができるぐらいには強烈なやつでした。 SXのワーウィックコピーベースに積んで使ってます。そろそろ良いプリに変えたいな...

ネモト:ここ数年で一気にメジャーになったね。楕円形のピックアップ気になる。 それとそのプリ面白そう。1000円くらいなら購入しよう。

Cheena:今確認したら1200円でした。安いですね。 ただベース用格安プリアンプの何が困るって、周波数特性や効き方のスペックシートが無いんですよね。 買ってから実際使ってみて、好みや意図に合わなかったら放置するしかないというのが残念。ハイの帯域と癖が強すぎてギターに積んでも違和感がないこともしばしば。 とはいっても、最悪使えればいい、ぐらいに考えてれば問題ないですけどね。 ちゃんとイコライジングはできるので。

ネモト:その辺はガチャみたいなもんだね。動けば悔いはない価格帯だからしゃーない。 引退前はベースにプリアンプじゃなくてブースター組み込んだこともあったな。うろ覚えだけど結構良かったような。

Cheena:ブースターはいいですね。手元でアクティブに音量増できるのは汎用性が高そうですし、回路もシンプルに落とし込めますし。 パッシブで常時音量を落としておきながらスイッチでバイパス、というのも作ったことはあるんですが結局常にバイパスしてます。 トグルスイッチじゃなくてモメンタリスイッチで作ればアクセントがわりになったかな。

ネモト:飛び道具として使うならモメンタリの方が良いと思うけど、スイッチ押しながら演奏も地味に辛いと思う…けど、場所次第かな。キルスイッチを用意しておいて任意のタイミングでオンオフしたら良いアクセントになると思う。1PUの楽器ならボリュームを絞るより速く切れるからステージ上で持ち替えたりする時役立ちそう。ボリュームペダルを用意すればいいんだけどこっちのが安上がりだし。

Cheena:マスターキルスイッチはあってもいいですね。 大幅に回路を改変する必要もないし、配線も楽にできる。 なんならバックプレートにディップトグルというのでもいいかもしれません。

ネモト:それいい、アリだね。それとキルスイッチで思い出した。ニッキー・シックスモデルのTBいくつかあるけど、スイッチのみでコントロール一切無しというパンクな仕様があった。不便すぎたのか一瞬で消えた(笑)

Cheena:本体にコントロール無しの楽器は何回か作ろうとしたことがあるんですよね。 手元は何もなし、足元に専用のエフェクターを置いて、各弦独立型ピックアップを使用して弦ごとにエフェクトを掛けることでギターの高品位な12弦化や音域下げを実現する、という。 弦ごとにオクターバーを掛けるからコードを弾いても反応が遅くなることも無いし、1-3弦はコーラス、4-6弦はオクターブ上ミックスでより12弦に近いサウンドが得られる、と価格を度外視すれば使いやすそうなんですが、6ピン+グランドが必要なのでケーブルの取り回しが面倒ですし、ただただ邪魔なだけじゃないか?と思って作れていませんね。 もっとMIDI的に処理できればいいのかもしれない。

ネモト:一応各弦独立はGR-55でできる。ただレスポンスはよろしくないし微妙だから開発に期待します。

Cheena:前回も話題になったRolandのギターシンセですか…やっぱり集音部が1つだと判定も遅くなりますよね。 それは研究案件だ…

ネモト:話変えるけど折角だから私がかつてやってた妙なカスタムでも紹介しましょ。 その名も「着せ替えプレベ」。 今はプレベを所有していないので画像を用意できないけど、簡単だから大丈夫でしょう…。 まずプレベのキャビティ内に導電塗料を塗る。この時、少しだけキャビティからはみ出すように塗ること。 次にアースラグにブリッジアースを半田付けして、導電塗料に触れる位置でネジ止め。それが終わったらピックガードのコントロール部付近にも導電塗料を丁寧に塗って、ピックアップ、ポット等を普通にワイヤリング。これだけ(ピックアップ以外のコールドは半田付けしなくても大丈夫) こうするとブリッジアースが導電塗料を介してポット等と接続され、半田付けする必要がなくなる。 あとは違うピックガードを用意して、同じように加工すればいい。こうするとドライバーだけで違う電装にピックガードごと換えられる。これを着せ替えと私は呼んでいたので着せ替えプレベ。やろうと思えばスタジオでも楽屋でもピックアップを交換できるので何気に便利。説明の中では導電塗料と書いたけどアルミ箔でも銅箔でも大丈夫。電気通ればいいから。

Cheena:妙なカスタムとは言いますけど、内実は超の付く合理的設計ですね。 導通不良が心配な人はジャンパー線かラグ端子付きのケーブルをピックガード側から伸ばせばいいのかな。 合理的といえば私も変なストラトを作っていて、私のTwitterを見ている人ならご存知と思いますがあの切断トラベルストラト、あれもピックガードごと交換すれば別のピックアップ配列になるんですよ、ブリッジアースの接続がジャンパー線なので。 一応写真も付けておこうかな。

もともと付いてた3S、追加した2ハム、SSHと3種類あるんですけど今は2ハムですね。 ジャックをプレベと同じようにピックガードマウントの天面ジャックにした結果ですけど、初期状態ではノブが2つしか使えないのでピックアップは2つが便利です。

ネモト:私のアイデアを褒めてくれて本当にありがとう。今まで妙とか変としか言われたことがなかったのよ(泣) あの面白ストラトそうなってるのね。私もジャンクストラトで着せ替え仕様にしたことあるな。でもギターよくわからないからピックアップの配置は気にしたことなかった。 勝手なイメージだけどギターは2ハムが最も汎用性高い気がする。

Cheena:そうですねぇ...こう言ったらなんですけど配列とかピックアップの位置は明確に音を変えるつもりが無いなら余り拘る必要も無いと思ってますね。 めちゃくちゃ硬いリアと、低音強めのフロント、その2種あればミックスとトーン操作、外部イコライザーで大体の音質は生成可能なので。 ただ、ジャガーやジャズマスみたいにピックアップ変更をプリセットとして使う人もいればムスタングのフェイズを常用する人もいて、そういう場合はこだわりポイントになると思います。 要は人それぞれです。配列より回路変えた方が波形的な意味では音変わるし... あとは見栄えと磁力、それに演奏性です。ベースなら高さが調整できるフィンガーランプになるし、ギターでも同様。音が出ていなくてもピックアップは磁力がある。サスティンの長さを調整するのに高出力ピックアップがたくさんあるギターを好む人もいるんじゃないかな。

ネモト:頷きながら読んでた。言われてみれば確かに好みの世界。波形編集で思い出したけど、ギブソンのRDアーティストはモーグが作った回路が乗っててなかなか面白い音してたな。今でもちょっと欲しい…

Cheena:RDはコンプレッサーとエキスパンダーが内蔵なんでしたっけ?Gibsonは意外と変な回路作りますよね。 RDに限らず、バリトーンスイッチ(低音のBaritoneバリトンではなく、多様の意味のVarious+音質のToneなのでVaritone、バリトーンですよ)とか、Firebird Xの内蔵エフェクターとか。 Firebird Xは重機で破壊する動画で炎上してましたけど、公式声明によるとあれは致命的な欠陥のある部品により修理ができなくなったものを破壊していたんだとか。 Gibsonが黙口でそこまでやらかすとは思えないし、少々の部品でギターが再起不能になるはずがないのでたいがい回路でしょうね。それかバッテリー周り。

ネモト:Firebirdは動画を見たな…。新社長バカじゃないのと思った。

Cheena:炎上は置いておいて、アナログデジタル問わず変な回路を積んでくるギブソンはいいですよね。意外とフェンダーで飛び道具的な変な回路のギターってないので… せいぜいフェイズスイッチぐらい。実用性と生産効率に全振り、あとの音作りはエフェクターでやってくれ、としてるというのはそうなんですけども。

ネモト:フェンダーだと面白い回路のイメージはない…と思ったけどストラトは大概だと思う。みんな麻痺してるだけで。 ギブソンは確かに多いよね。レスポールトライアンフとか。うろ覚えだけどビクトリーベースは悪くなかったかな…。うろ覚えだけど。 挑戦することが多いから短命かつ微妙なモデルが多いね。 反面アレンビックは凄いなぁ。世界初のアクティブベースを作り、未だにトップブランドとして君臨しているもの。あのフィルターサウンドは極上。

Cheena:ストラトは変態ですね。3シングルorSSHにセレクター1つとTone2つ、マスターVolってなんなんだ。 そしてAlembicと言えば29ノブベース。ボディのでかさゆえにできる芸当でもありますね。

ネモト:あったなぁ。弾いたことはないけど。 なんというかこれは極まったな、と思ったのはアトランシアのオックスフォード。ピックアップ何個あんのよ?ってなる。電装もそうだけど、弦の張力がネックに一切かからないという面白システム。 林さん(社長。元々はアリアにいてPEやSBのデザインした人)のやる気がないのか今はすんごいレアだし超高価になってしまった。

Cheena:Oxford Bassは独立型ピックアップ16個のスタビライザーベースでしたっけ? ああいうのもどういうミックスができて配線はどうなってるのか気になりますね。あわよくば作りたい。 ※スタビライザーギター/ベース...ボディとヘッドがネック以外の部分で接続されたタイプの楽器。Roland G-707などが有名。

ネモト:やっぱリペア/クラフト畑の人はそう思うよね。オリジナリティの固まりみたいなメーカーだから1度工場に行ってみたいなぁ…。案内してくれるかは知らんけども。

Cheena:つい脚注を入れてしまった。便利ですねこれ。
Atlansiaのホームページ(https://www.atlansia.jp/)、アクセスカウンターがあったり左右でページが分けられてたり、スマホ画面には対応していなかったり、ブログ全盛期の個人ブログみたいな見た目で大好きなんですけど、一応今でも更新は入ってるんですよね。 いつか使ってみたいメーカーの一つだ...

ネモト:ネック太くて好き。ペガサス、ジュピター、オックスフォード、ビクトリアは欲しくて探してたこともあった。高いしタマもないしで諦めたけど。16?17年前と比べると倍近い値段になってる…。

Cheena:ペガサスは格好いいですよねぇ。 普通にオーダー入れたら作ってくれるんじゃないかしら?と思って価格表示見てみたらリンク切れになってましたね... というわけでWayback Machineからアーカイブを漁ってきました。 最新のリストは2018年8月27日、それ以降は全てリンク切れになっていました。 ペガサスとオックスフォードは36万から。ヴィクトリアは45万から。ジュピターは無表記。 現在の販売ページだと50万付近が平均的な価格になっているので、やはり値上がりしたんでしょうか... いつかはオーダーしたいなぁ。 そうだ、どこかでオーダー楽器回やりませんか?

ネモト:いいね、やってみよう! パーツも完成品もオーダーしたことあるしそこそこ悩み倒したからね。

Cheena:私が今やってるキットオーダーも紹介したいですね。 さて、今回はこの辺で締めましょうか?誤字修正も大変ですし。

ネモト:はい。お疲れ様でした。 読者諸兄姉、ここまで読んでいただきありがとうございました。

Cheena:ありがとうございました。次回はハードウェアについて語ります。


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元プロでベーシストのネモトとクラフトマンでベーシストのCheenaによる、楽器への深すぎて自由すぎるこだわりトークをお送りします!
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