こんにちは、Cheenaです。 吹奏楽ベース初心者シリーズも後半に入ってまいりました。
今回はアーティキュレーションの操作について、奏法やエフェクター、アクセサリなどの多方面から考察していきます。
初回と同じように譜面を見ながら、どのようなニュアンスが要求されるのか考えていきましょう。
今回参考にするスコアは、Winds Score J-Best '19、ポップスの曲を多数収録したメドレーです。
じつはこのスコアは初回「吹奏楽ベーシストのための、音作りと奏法の研究」にて参考にしたもので、吹奏楽に求められるベースの基本が揃っていたので、使用しています。
エフェクター系は私がいつも基本構成としているセットアップの「コンプ→コンプ→プリアンプ→オーバードライブ→ボリュームペダル」というものを前提に書いていきます。 音量の不揃いさを出来る限り減らし、またサスティンを強化する(後述)ことで多様な楽器を安定して扱えるようにしたセットです。
だいたいの曲においてエレキベースに要求されるアーティキュレーションはスタッカートかテヌート、アクセントなど「音量に関わるもの」「音価に関わるもの」が大半です。
音量に関わるもの
コンプを強めにかけるとアクセントの音量も落とされてしまい、単純に強く弾くだけではアクセントにならない可能性があります。 連続で要求されるならその部分だけコンプを切ってもいいのですが、基本的に単発で入れるものなので単純に強く弾くのではない奏法が必要になります。
ここでお勧めなのはバルトークピッチカートや、プリングなどの音量と同時に硬い音質が得られる奏法です。
バルトークピッチカートはもともとヴァイオリンなどの擦弦楽器を用いて、指板から弦を垂直につまみ上げ、指板に当てることで明瞭なアタックが得られる奏法です。
プリングは、皆さんご存じスラップベースの人差し指側の操作だけをすることで強いアタックを得ることができます。
この二つは基本的に音質はよく似通っていて、また、楽器側のToneを絞ったり、プリアンプのHighを減らすことにより、金属質な音もマイルドにすることができます。
単純に音量を上げるのではないアクセントの付け方になります。
この際考慮すべきは、他の低音隊との兼ねあわせです。
チューバやバリトンサックスが吹奏楽における低音の中核であることは初回で述べた通りですが、エレキベースの動きが管楽器の動きから大きく離れていない場合、管楽器側のアクセントで事足りてしまうことが多々あります。
そのような場合はむしろアーティキュレーションを完全に無視し、安定した演奏を優先した方がよい場合があります。
逆にエレキベースのみ音を出している場合、エレキベースが独自に動き回っている状態、でのアクセントはむしろ強調する必要があります。
フォルテピアノ-クレッシェンド、スビトピアノのような、アタックとは別に音量を変化させる場合、初回やエフェクター回で紹介したようにボリュームペダルを最後に置いて上げ下げする必要があります。
ボリュームペダルはアンプのSend/Returnに接続して使う方法もあるのですが、今は割愛します。
音価に関わるもの・短縮系
単発でスタッカートが必要な時は普通にミュートすれば問題ないでしょうが、ウォーキングベースを弾く際など、連続でスタッカートやポルタートが必要な場合はミュートし続けるのは大変です。
この様な場合、ブリッジミュートをするか、NordstrandやGruv Gearから出ているスポンジミュートを使うことができます。
■ NORDSTRAND PICKUP ( ノードストランドピックアップ ) / NordyMute 4 Maple
■ Gruv Gear ( グルーブギア ) / Fump Bridge-Side Dampener
初期ギブソンベースやフェンダー・ジャガーに搭載されていたミュートの簡易版であり、生音は非常に短く、アンプを通しても独特の音質のある音になります。
基本的に音質を補正しながら使うことになり、またあからさまに短くなってしまうために、空間系エフェクターのセオリーとは反対に初段のコンプ直下にリバーブを置いて音価を調整し、DIやイコライザーで補正してから歪みなどを掛けていくことになります。
また、スポンジミュートは音程をわずかに上げてしまう傾向があり、また挟む位置によって音価や音質も変わってくるために、コーラスで馴染ませる、チューニングをいじる、など経験と工夫が必要になります。
音価に関わるもの・延長系
エレキベースに対して相性の悪い指示はフェルマータや全音符、タイなどの長い音を要求する譜面です。
撥弦楽器の宿命として本来のサスティンを超えた長い音を得ることは難しいのですが、いくつかの手段により無理やり伸ばすことも可能です。
ひとつは、E-Bow、AEONなどの電磁弓を用いて弦の振動を持続させること。
もうひとつは、エフェクターによって音を伸ばすこと。
最後に、楽器本体の改造によりサスティンを延長すること。
■ TC ELECTRONIC ( ティーシーエレクトロニック ) / AEON
■ ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / Bass Big Muff -Distortion/Sustainer-
電磁弓は原理は単純なものの、一般的なアクセサリーではなく、また実際の使用も難しいためにあまり普及していませんが、サスティンを伸ばすという限定的な目的においては選択肢の一つになりえます。
一番簡単な選択肢である、サスティンを伸ばすことのできるエフェクターは数種類あります。
まずはコンプレッサー、大きい音を下げ小さい音を強化して音量のばらつきを抑えることができますが、減衰する原音のサスティンも強化して一定の音量で長くサスティンを出すことが可能になります。
リミッターの場合は先にブースターなどを用いて音量をしっかり上げておき、その状態で音量制限をすることでサスティンを伸ばすことができますが、音量を上げた段階でノイズも強化されてしまいます。
一部演奏者からの根強い人気を誇るElectro-Harmonix社のBig Muffシリーズはディストーション・サスティナーと銘打たれています。
これは歪みの原理によるもので、増幅回路で一度電圧を上げ、それをクリッピング回路に通すことで波形の歪みを得ているわけで、小さな音も一度強化されているのです。
歪み系エフェクターであれば多かれ少なかれ「コンプ感」と呼ばれる音量の圧縮はあるのですが、Big Muffではこれを積極的に取り入れています。
歪みで圧縮を得るには音質を大きく変える必要があるので吹奏楽に適用できることは稀ですが、ロック編曲などでは使う機会があるかもしれません。
楽器本体からのアプローチに関しては楽器改造編で扱おうと思います。
今回はアーティキュレーションに関するものについて書いてみました。
次回からはいよいよ改造編となります。
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