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プラグインパワーマイクは、ファンタム電源で使えるのか?

2024-01-31

テーマ:実録 ! サービスマン日記, Tips&お役立ち

時折お客様から、プラグインパワーマイクをファンタム電源へ接続して使用したいというご要望を聞くことがあります。
結論を申し上げると、”使用できません”。
ほとんどの場合で正常に動作しないためです。動作したとしてもその使用方法は推奨できません。理由はこれから説明しますので、興味のある方は参考にしていただければ幸いです。

目次

  1. プラグインパワーとファンタム電源の違い
  2. プラグインパワーマイクの構造
  3. 最後に

1. プラグインパワーとファンタム電源の違い

そもそもプラグインパワーとファンタム電源を混同している方も少なからずおられるようですので、その違いを確認したいと思います。

まずは画像で比較してみますと、

■ プラグインパワー対応のマイクジャック →ステレオミニ3.5mm対応ジャック

■ ファンタム電源対応のマイクジャック →XLRメスジャック

と違いがあることが分かります。

さらに、各マイクメーカーのサポートページに記載のある内容についてご紹介します。

Sony

「プラグインパワー方式」とは、録音機からマイクロホンへ電源を供給する方式のことです。
※「プラグインパワー方式」のマイクロホンを使用するときは録音機にも「プラグインパワー方式」の機能が必要です。
※「プラグインパワー方式」の規格はメーカーによって異なり、互換性がありません。

Shure

・ファンタム電源は、バランスオーディオ信号と同じワイヤー上に、DC12~52Vを乗せます。
・プラグインパワーでは、安価なコンデンサーマイクロホン内部のJFET電源用にDC5Vを供給します。電圧とオーディオを乗せるワイヤーが別けられている場合もあれば、オーディオと同じワイヤー上に電圧を乗せる場合もあります。

SONYの記載からは、必ずプラグインパワーマイクにはプラグインパワー方式の録音機が必要であること、プラグインパワー方式にはメーカーによって規格が異なることが記されています。
Shureの記載からは、電源電圧のVの違いと、プラグインパワー方式では電源電圧とオーディオ信号を分ける場合と、一緒に乗せる場合があると記されています。

ここまでの内容を踏まえて、プラグインパワーとファンタム電源の違いをまとめると以下のようになります。

  ファンタム電源 プラグインパワー
電圧 DC+12-48V DC+2-5V
端子 XLR 3.5mm モノ/ステレオジャック
電源供給媒体 ミキサー、ファンタム電源装置 他 レコーダー、カメラ 他(いずれもプラグインパワー対応)
使用されるマイク プロ用コンデンサーマイク 民生用コンデンサーマイク

2. プラグインパワーマイクの構造

次にプラグインパワーのマイクの構造を確認します。プラグインパワーのマイクはあくまで民生用のコンデンサーマイクでプロの現場で使用される方は少ないです。
プラグインパワーマイクは、ステレオ(モノ)ミニ3.5mmのジャックから、+2V~5V程度の電源電圧で駆動するコンデンサーマイクです。多くの場合、中身が小型ECM(エレクトレットコンデンサマイクロフォン)で構成されています。

実際にプラグインパワーのピンマイクを分解してみますと、

赤と青の配線の先にあるのが、マイクユニット、ECMです。
ECMに関して一例ですが、中身はこのような構成になっています。

(出典:CUI Devices)

また今回分解したプラグインパワーマイクの結線を調べると、

ステレオミニプラグ ECM
TIP HOT(+)
RING N.C.
SLEEVE GND(-)

上記のように結線されていました。

プラグインパワーマイクでは電源電圧をRING端子で供給する場合もありますが、今回分解したマイクの場合はTIPで電源電圧供給とオーディオ信号伝送を行っているタイプのものでした。このようにプラグインパワーマイクには各メーカーの製品によって電源供給の仕方が異なる場合があり、使用できない組み合わせ(レコーダー等のプラグインパワー供給媒体とプラグインパワーマイク)もあるので注意が必要です。

3. 最後に

プラグインパワーとファンタム電源は「電源電圧の大きさ」及び「電源供給方式」「接続端子」が異なるため、たとえ変換アダプタや変換ケーブルを挟んだとしても使用できる可能性が低く、万が一マイクユニット側に電流が大きく流れるようなことがあれば、マイクユニット自体を損傷してしまう可能性もあります。

プラグインパワーマイクは対応するレコーダーやカメラでのみ使用できるということを大前提として理解していただければ幸いです。

技術サポート / 堀江 司

社会人経験を経て、ESPギタークラフトアカデミー卒業後、楽器音響業界へ。音響機器修理エンジニア就いて10年。PA音響機器の修理を中心に数多く携わってきました。年々修理分野の幅を広げ、現場で培ってきた知識・経験・技術を土台に、時代とともに変化する新しい技術や製品へ対応すべく歩み続けています。主にJBL、QSC、BEHRINGER、SUMMITAUDIOを中心とした音響機器の修理に従事。電源機器の修理サポートも行っています。第2種電気工事士資格保有。

 
 
 
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